支持者とともにバンザイする宇都宮健児弁護士(中央)=10日午後、東京都港区、越田省吾撮影
宇都宮健児弁護士
2月の投票で当選者が決まらず、史上初の再投票となった日本弁護士連合会(会員約2万8千人)の会長選の投開票が10日、改めて実施された。多重債務問題への取り組みで知られ、08年末の「年越し派遣村」で名誉村長を務めた宇都宮健児氏(63)=東京弁護士会=が当選を決めた。任期は4月からの2年間。
ほかに立候補していたのは、会員が多い東京・大阪の弁護士会の主流派閥が推し、現執行部の路線継承を訴えた元日弁連副会長山本剛嗣(たけじ)氏(66)=同。宇都宮氏は無派閥で立候補したが、全国52の弁護士会のうち46会で得票数が1位となり、当選に必要な条件である「3分の1以上の会(18会以上)での勝利」を確保。前回は2位だった大阪弁護士会で逆転したほか、山本氏が2度とも1位となった東京の三つの弁護士会でも票差を縮め、総得票数で山本氏を上回った。
前回の投票では、総得票数で山本氏が宇都宮氏を上回ったものの、山本氏は「18会以上の勝利」を得られず、再投票となっていた。
選挙戦を通じて宇都宮氏は、司法試験合格者を年間3千人とする政府計画に反対して「1500人程度に減らす」と明言し、弁護士の増加で就職や仕事探しに苦労する地方の会員や若手会員に浸透した。
今回の当選は法務省、最高裁との「協調」を重視してきた執行部の姿勢に批判が集まった形で、今後の改革論議にも影響を与えるのは必至だ。
宇都宮氏は今後、貧困や格差拡大を「最大の人権問題」と位置づけ、日弁連をあげて取り組むとしている。執行部の事務をとりまとめる事務総長には海渡(かいど)雄一氏=第二東京弁護士会=を充てる方針。海渡氏は社民党党首の福島瑞穂・消費者担当相の夫。(延与光貞)