「あまおう」の甘くない闘い
「あまおう」の甘くない闘い 03/09 19:31

福岡県が開発したいちご「博多あまおう」をめぐる話題です。

2002年に登場して以来、「いちごの王様」として不動の人気を誇って来ました。

しかし、景気の悪化や品種の多様化をうけ、ちょっと事情が変わってきたようです。

久留米市三潴町のいちご農家では、いま「博多あまおう」の収穫が最盛期を迎えています。

福岡県の農業試験場が開発した「博多あまおう」、「あかくて」「まるい」「おおきい」「うまい」という特徴からその名が付けられました。

2002年の販売開始以来、「あまおう」は福岡県が誇る全国ブランドに成長しました。

福岡県やJAは今月、福岡市で「あまおう」のPRイベントを行っています。

大々的なキャンペーンを、地元福岡で行うのは発売以来のことです。

3月4日、博多大丸百貨店では、今月14日のホワイトデーに合わせて「あまおう」フェアが開かれています。

福岡市内の30のレストランでは、限定メニューで「あまおう」を使った料理やデザートが提供されています。

いちごは、10年前までは種類も少なく、東の「女峰」西の「とよのか」が2大品種でした。

しかしその後、品種改良が進み、現在、国内で栽培されているいちごは25品種にまで増えました。

数ある品種のなかでも「博多あまおう」はセリで一番人気。

この市場で取り扱ういちごのうち、「あまおう」は量で半分以上、金額で6割を占めています。

しかし変化も起きています。

ここ数年、特に売り上げを伸ばしているのが、佐賀県が開発した「さがほのか」です。

デパートでも「博多あまおう」と人気を二分しています。

あまおうは昨シーズン、1万2,000トンが販売され、福岡県は栃木県に次ぐ全国2位のいちごの生産地です。

しかし、佐賀県が開発した「さがほのか」は、佐賀、熊本、大分など、九州各県で栽培されていて、それらを合計すると品種ごとの販売量では、「さがほのか」が「あまおう」を上回っています。

福岡県は高い品質を保つため、種苗法に基づいて他の県に「あまおう」の栽培を許可していません。

福岡県だけで栽培される「あまおう」の量は毎年一定ですが、佐賀県が他県にも栽培を許可している「さがほのか」は、じわじわと生産量を伸ばし、知名度を上げているのです。

さらに景気の悪化もあまおうにとっては逆風です。

高品質を誇るあまおうは、他の品種より価格が高めで、このところの不況により消費者は、より安いいちごを買う傾向にあります。

生産者の高齢化や後継者不足などから、福岡県内のいちごの栽培面積は、1990年をピークに毎年減少していて、いちごの王様「あまおう」を取り巻く環境は決して楽観できるものではありません。

旬を迎えて甘みを増す「博多あまおう」。

いちご戦国時代の今、王座を守る甘くない闘いが続きます。