4月に撤去される歩道橋。「50年間守ってくれてありがとう」と書かれた幕が張られている=愛知県清須市西枇杷島町住吉、磯部写す
愛知県清須市にある日本で最も古いという歩道橋が4月、撤去される。12日、地元住民や近くの西枇杷島小学校の児童らが、「渡り納め」の式をする。同小PTA会長の竹内明彦さん(45)は「これまで子どもたちを守り続けてくれた感謝の気持ちを表したい」と話している。
かつて、歩道橋の下を通る旧国道22号(現・県道名古屋祖父江線)の交通量は、県内でも屈指の激しい場所とされた。1959(昭和34)年に発行された旧西枇杷島町の広報誌は「毎日必ず交通事故が1件くらいはあるという非常に危険なところ」と記している。
同小児童らが巻き込まれる事故も相次ぎ、57(昭和32)年1月には、小学4年の女児が4トントラックにはねられ、重傷を負うという事故も起きた。保護者らから対策を求められた町は信号機や地下道などの新設を検討した。その結果、道路をまたぐ歩道橋を設置することになった。鉄道の陸橋を参考に設計された。
総工費320万円をかけて、59年6月にコンクリート製の歩道橋は完成した。数年前、県道の拡幅工事に伴い撤去が決まると、新聞やテレビで取り上げられるようになった。地元からは名残を惜しみ、記念の式ができないかという声が高まり、実現に至った。12日午後1時45分から同小の体育館で開く式典には歩道橋の完成当時、小学6年だった住民らも参加する。午後3時過ぎから参加者による渡り納めをする。その中の一人で同窓会長の田中春雄さん(62)は「当時の大人たちは先見の明や実行力があったと思う」と話す。
県尾張建設事務所によると、撤去工事は4月10日夜から始まる。代わりの歩道橋は鉄製で、9月ごろに完成する見込み。拡幅工事が終了する2年後には、歩道橋の階段の一部を材料にした記念碑を造る計画もある。(磯部征紀)