北大通りを西に向かい、京王ストアの交差点を右斜めに入っていくと、「ぬくい湯」とかかれた大きな煙突が目に入ってきます。
ぬくい湯は昭和39年に開業し、47年に現在の場所に移りました。以前は新小金井街道沿いの、現在蕎麦屋になっている所にあったそうです。
ご主人の佐藤さんにお話をうかがうと、元々工務店をしており、そのお客様から事情があって頼まれて始めたとのこと。現在も工務店はしているため、銭湯の看板より工務店のほうが目立っています。
ぬくい湯は、その造りやあちらこちらにある備品などから、昭和レトロを感じさせます。そのせいか、テレビなどの撮影で使われることもあるそうです。
テレビ、銭湯、といえば、昭和に人気を博した「時間ですよ」という番組がありました。銭湯を舞台に、町の人間模様を面白おかしく、時には切なく描いた番組でした。
このぬくい湯でも、そのドラマを彷彿させるように、お客さんが番台のおかみさんに相談して話を聴いてもらっていました。何でもない光景でしたが、昭和の香りの中で成長した私には、幼少の頃に戻ったような錯覚を起こし、名状しがたい思いにとらわれました。
ご主人の佐藤さんは、銭湯は大勢の人と知り合えるコミュニケーションの場だと、よく通る張りのある声でいいます。風呂屋だけの付き合いもあるだろうし、風呂屋を通じて地域の中で育まれる付き合いもあるといいます。
特に若い夫婦には、1人で悩んだり本を見て育児するのではなく、こういう場を利用して、コミュニケーションのある生活環境のなかで子育てをしていってほしいと願っています。
さて、肝心のぬくい湯の特徴についてお話します。なんといっても気持ちよいのは、浴槽がすべて天然の青森ヒバでできていることです。ヒバからは特性のヒバ油がでるので、お湯も滑らかな柔らかいお湯になります。
このヒバ油は、抗菌をはじめとして、精神安定や、消臭・防虫に効果があるといわれています。佐藤さんの家にはこのヒバ油を消臭剤入れにいれて、いくつかおいてあるそうです。
実際に、浴槽に浸かってその湯を試しましたが、爽やかなヒバの香りがほのかに漂い、お湯も滑らかで、この冬一番の寒波で凍えていた体はすっかりほぐれました。
先に入っていた老婦人に声をかけると、「今日みたいに寒い日は、とっても気持ちがいいの。」と、おそらくいつも洗う場所で、いつもの場所に石けんやタオルを置いて、ゆっくり体を洗い流していました。その後、熱めのお湯に浸かりしばらくくつろいでから、余分な水分をふき取って脱衣場へ上がります。この一連の動きは、昨今のだらしない風呂のマナーを一蹴するかのような、美しい振る舞いでした。
銭湯は、ゆったりして気持ちいいだけではなく、他の人の入り方を見てお風呂の入り方も学べます。言葉は交わさなくても、人がいることによって、心の会話がどこかで交わされている貴重な場なんですね。
昨年からにわかブームになっている昭和レトロは、こんなところにその魅力があるのかもしれません。
みなさんも、年末からの疲れた体を近くの銭湯で癒して心もあったかにしてみてはいかがですか。