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【長野】阿智村全体が博物館 地域資源生かした構想進む2010年2月14日
阿智村が、村内全域を対象にしたエコミュージアム構想「全村博物館構想」を進めている。文化、景観、歴史などさまざまな地域資源を掘り起こして住民自身が守っていく活動で、新年度からは各地の住民グループなどがつながり合う連絡会の発足を目指す。人口減が進む中で、交流や定住人口を増やすきっかけにもと、徐々に盛り上がりを見せている。 「ここら辺は、緻密(ちみつ)な花こう岩帯になっていて、ゆっくりとろ過されたおいしいわき水が出るんですよ」。同村清内路の「一番清水」と呼ばれる場所で、おらほの夢先案内人代表の岡本雄太さんが紹介を始めた。旧清内路村が公募した組織だが、今は住民主体で運営。清内路地域の歴史遺産や景観の見どころなど10のコースにまとめ、トレッキングの案内もする。 一番清水、清内路関所跡、姿見不動滝、黒船桜…。「メジャーじゃなくても、人々の暮らしの中で大切にしてきたものがここにある。単なる地域案内じゃなく、ロマンを持って伝えていきたい」。3年前からスタートした活動は、確かな歩みを続けている。 村内には、このほかにもザゼンソウの保存活用や、中馬街道整備、伝統の踊り保存など地域資源を掘り起こすさまざまなグループが点在する。昨年春からは、こうしたグループが集まる「阿智(あっち)っち熱中人」と名付けた場をつくり、意見交換を続けてきた。新年度には、グループや自治会などが緩やかに連携した連絡会を提案していく。 全村博物館構想の提言が出された2006年ごろは、村の関係者によると「エコミュージアムって何?」とすぐに受け入れられる雰囲気ではなかった。が、徐々に地域資源に誇りを持ち、維持していこうという活動方針に理解が増えてきたという。事務局となる村役場の中里信之学芸員は「例えば京都市のように、村全体を1つのイメージでブランド化できないか探っていきたい」と意欲を見せる。 3年前に清内路地区を除く52集落でアンケートした結果では、5年後に今の場所に住んでいるかという質問にほとんどが「いる」と答えた。ところが、10年後となると「いない」、「わからない」と答えた合計が3割を超える集落が6カ所、5割を超える集落も3カ所に達した。ここ数年、人口減少数も増える傾向にあり、集落維持に関係者の危機感も強い。集落が維持できなければ、文化や歴史など忘れられ、失われていくものも出てくる。 全村博物館と名付けた岡庭一雄村長は「村全体が住むに値する場所と考えて村づくりをしていく。外から来た人がそれを評価し、さらに住民が価値を自覚する時がくる。急激ではなくても徐々にやっていきたい」と息の長い活動に期待をかけている。 (吉田幸雄)
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