2010年3月10日0時2分
欧州連合(EU)加盟国のギリシャの財政赤字問題がEUを揺さぶっている。ギリシャは対GDP比で12.7%とEU加盟基準の3%をはるかに超える財政赤字を抱えている。この影響でギリシャとドイツの国債の金利差が3%前後まで拡大した。ユーロも昨年11月ごろから10%近くも下落している。
ギリシャの財政に関しては様々な問題が取りざたされている。2001年のEU加盟時の財政粉飾とこれに絡んだ米投資銀行への調査。ギリシャ国民の所得税過少申告疑惑などだ。実際、ギリシャの所得税額の対GDP比率は米国などに比べて非常に低いと言われており、脱税が横行しているようだ。
何はともあれこの問題をどう解決するかが大きな問題だ。解決策として、フランスやドイツのようなEU主要国がギリシャに金融支援や支払い保証を行うことや、国際通貨基金(IMF)に救済を依頼することが考えられる。しかし、これらの方策は特定国の税金を使うことや、IMFにEU全体の財政状況を監視されることになり、EU自体の不信認につながる。
そもそも金融政策は欧州中央銀行(ECB)に一元化し、財政政策は国別というEUの構造的な問題がネックになっている。やはりギリシャ自身が財政の透明性を確保し、増税を含む財政赤字削減計画を示して実行することが大事だ。
また、この際EU内でECBないしは各国財務省が中心となり財政赤字救済の枠組みであるセーフティーネットを創設してはどうか。早期に具体的救済策を示すことが他の加盟国への伝染を防ぎEUの不安を取り除くことになると確信する。さもなければEU経済崩壊のリスクさえ危惧(きぐ)される。(QJ)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。