【第33回】 2010年03月09日
トヨタの電子制御問題に隠れた事実!
アメリカ人特有のアクセルの踏み方
筆者の近年中の実体験のなかで、日米仕様でのアクセルセッティングの大きな差を感じたのはトヨタ「RAV4」だった。軽いアクセル踏み込みで、「相当速い!」と感じる加速だった。後日、トヨタ技術関係者とその件で話をすると「それが、アメリカ人の好みですから」と当然のような顔をした。
◆女性特有のアクセル操作
これは、アメリカ人特有のことではないのだが、日米で「女性ドライバーのアクセルの踏み方が、男性とは違う」という調査事例(開発事例)がある。
それを語ったのは、ホンダのハイブリッド車、現行(=2代目)「インサイト」の開発責任者である関康成氏だ。同氏は長年に渡り、排気ガス規制と燃費関連分野の研究に従事してきた。そのなかで、「女性ドライバー特有のアクセル操作」に留意したという。「(一般論として)女性ドライバーはアクセルを電動スイッチをON/OFFするように踏む」(関氏)。
これは、近年のアクセルが電子制御スイッチ化したことを表現しているのではない。仮に80kmの一定走行をしようとすると、アクセルを踏んで加速し、一旦緩めて、速度が落ちたらまた踏み直す、そうしたイメージだ。関氏は「こうした現実も踏まえて、実用燃費が上がるアクセルのセッティングを(インサイトで)導入できた」と語った。
以上のように、「急加速がMUST」、それがアメリカの交通事情だ。さらに女性特有のくせばかりでなく、そもそもアクセルの操作にはかなり個人差がある。また、日本では実質的にほとんど使用されないが、高速巡航走行が多いアメリカでは、クルーズコントロール(定速自動運転装置)を用いる場合も多い。そうした、「アクセルの使われ方」を含めた「車の使われた方」の違いが、日米の間に多数存在するのだ。
前述の「スミス氏の涙」他、一連のトヨタ・アクセル関連の論議においても、こうした「アメリカ社会での現実」を、米国内自動車関係者は再認識するべきだ。
日本に居住する人たちも、アメリカ社会の現実を念頭に置いて、今後のトヨタ・アクセル関連問題の報道の推移を見守って頂きたい。
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著者プロフィール
- 桃田 健史
(ジャーナリスト)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなど米国レースにレーサーとしても参戦。自動車雑誌に多数の連載を持つほか、「Automotive Technology」誌(日経BP社)でBRICs取材、日本テレビでレース中継番組の解説などを務める。1962年生まれ。著書「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」好評発売中
この連載について
「エコカー=日本の独壇場」と思っているとすれば、それは大間違いだ。電気自動車、ハイブリッド車を巡る市場争奪戦はこれからが本番。日本は序盤戦を制したに過ぎない。世界規模の取材でエコカー大戦争の行方を探る。
ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車の共存でビジネスモデルは混沌!トヨタ、ホンダ、日産、三菱など日本メーカーは世界で勝てるのか?年間飛行機移動時間が最も長い日本人自動車ジャーナリストが世界のエコカー事情を徹底取材。市場・インフラ、技術、政策、各社の戦略を詳細かつヴィヴィッドにレポート!
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