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エコカー大戦争!

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トヨタの電子制御問題に隠れた事実!
アメリカ人特有のアクセルの踏み方

②古いフリーウエイの土木設計上の欠陥

 フリーウエイの法定速度高速化に伴い、フリーウエイの進入路では、本線の流れにスムーズに乗るための「急加速」が必然となった。近年に整備されたフリーウエイ進入路は直線に近く、助走距離も長い。だが、1950~70年代に基礎工事がなされたフリーウエイ(大都市内部や過疎地で多い)では、進入路の曲率が大きく(大きく回り込んでいる)、助走距離が極めて短いケースが目立つ。そのため本線の流れに乗るには「相当な急加速」が必要となる。しかも、そうした古いフリーウエイ進入路は路面も荒れている場合が多く、日本では想像出来ないような大きな路面の凹凸に、ハンドルを取られ兼ねない状況下で、「相当な急加速」を強いられる。

③市街地の道路幅による特殊走行

 アメリカ東海岸、ニューヨーク、ニュージャージー、ニューハンプシャーなどヨーロッパ的な町並みが続く古い道路は片側2車線が多く、コンクリートによる中央分離帯が長く続き「なかなかUターン出来ないで困る」状況に陥る。
 
 だが、アメリカ大陸を南へ、西へと進むと、それら都市の市街地や郊外では、片側3車線道路が常識化している。中央分離には緑地帯、または両車線から進入可能な右折車線となっており、コンクリートなどの障壁はない。こうした片側3車線、つまり全6車線+中央分離帯の合計20mほどの「道路全体幅」を、信号機のない交差点で、一気に横断するケースがよくある。

米テキサス州ダラス、米国の郊外では典型的な片側3車線の道路。信号機のない側道から、この3車線+中央分離地域+反対側3車線(合計20m程)を一気に渡ることは、アメリカでは日常茶飯事。自動車メーカーは、そうした実情に合わせた、アクセルセッティングをしている。

 また、目の前の(右側通行のため、右進行の)3車線を一気に横断して、反対車線に飛び込むケースもよく見かける。その反対車線への飛び込みも、一気に一番右側車線へ飛び込むケースが多々ある。こうした動きを、「交通の流れがちょっと切れたスキ」に行う。その「飛び出してきて、一気に車線変更するタイミング」が、日本人の一般的な運転常識からは逸脱している。

 側道からのスタート時点で、多くの人は「ほとんどフルスロットル(アクセルペダルを床まで踏む)」ような「急加速」をして、それを「急激な操舵(ハンドルを切ること)」と同時に、こなしている。さらに、自宅や勤務所周辺では、こうした「急加速+急激操舵」を携帯電話をかけながら、片手運転で行っているケースをよく見る。

④アメリカ特有の道路法規で、さらに危険となる交差点での右折

 交差点での右折でも、上記③と同様な傾向がある。右折直後に一番右の車線に行かず、交差点を大回りして一気に3車線の一番左車線に「急加速」する人が多いのだ。ここで、アメリカ特有の大きな問題が生じる。それは、アメリカではNYマンハッタンなど一部地域を除き、各地方自治体の道路交通法上、赤信号でも「自己責任で右折可能」な点だ。

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桃田 健史
(ジャーナリスト)

日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなど米国レースにレーサーとしても参戦。自動車雑誌に多数の連載を持つほか、「Automotive Technology」誌(日経BP社)でBRICs取材、日本テレビでレース中継番組の解説などを務める。1962年生まれ。著書「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」好評発売中

この連載について

「エコカー=日本の独壇場」と思っているとすれば、それは大間違いだ。電気自動車、ハイブリッド車を巡る市場争奪戦はこれからが本番。日本は序盤戦を制したに過ぎない。世界規模の取材でエコカー大戦争の行方を探る。

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