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【社会】

子ども手当、正しく支給される? 外国人の海外の子も対象

2010年3月10日 朝刊

 国会での法案審議が大詰めを迎えた鳩山政権の看板政策「子ども手当」法案は、外国人の親が日本に住んでいれば海外に住む子どもの分も月額2万6000円が支給される仕組みだ。専門家は税金の使途として疑問を投げ掛け、支給窓口となる自治体は仕組みを悪用した不正受給が横行しかねない懸念を抱いている。9日の衆議院厚生労働委員会でも制度のずさんさが問題となった。

 法案は親について「日本国内に住所を有するときに支給する」とだけ規定。このため、日本への留学生や数年だけ滞在する外国人研修生でも、母国にいる子どもの人数分だけ手当を受給できる。

 これは現行の児童手当と同様の仕組み。厚生労働省児童手当管理室によると、1972年に制度ができた児童手当は、当初は日本国籍を有する者に受給者を限定していたが、国籍による差別をなくす国際化の流れの中で82年に撤廃した。

 児童手当には子どもの住所要件の規定がなく、子ども手当もこれを踏襲した形。同室は「法案準備の期間が非常に短かった。自治体や受給者など現場の混乱を避けるため、児童手当と似た制度にした」と説明する。

 しかし、欧米の社会福祉に詳しい立命館大産業社会学部の深沢敦教授は「そもそも無条件に海外に居住する外国人の子どもまで手当を支払うのは国際的に異例」と指摘。民主党が制度の参考にしたフランスでは、外国人の場合、子が国外に住んでいるケースでは支払わず、例外的に欧州連合(EU)加盟国など30カ国の人に限って支給しているという。

 厚労省によると、児童手当の受給児童は2008年度は1290万人で、支給総額は約9980億円。このうち海外居住の外国人の子どもの人数や額は把握していない。

◆「申請書類を信用」

 子ども手当支給の仕組みは現行の児童手当を踏襲。厚生労働省は「児童手当の不正受給はほとんど聞いたことがない」としているが、社会保障の専門家は「児童手当に比べて金額が大きくなるため、狙われる危険性が増大する」と指摘する。

 「悪徳ブローカーが現地で『子どもが5人いることにすれば何もしなくても大金が入ってくる』と動きだしている」。アジアから研修生を受け入れる中部地方のある団体の責任者は、こんなうわさ話を研修生から聞いた。「そんなはずはないと思ったが、制度を調べて驚いた」と憤る。

 外国在住の子どもがいる場合、公的機関が発行した書類や、子どもへの送金記録などが申請時に必要。だが、岐阜市の担当課は「書類が精巧に偽造されていれば見抜けない可能性はある」と漏らす。

 外国人の証明書の発行機関は学校や警察などさまざまで、確認は困難。長野市の担当者は「申請書類が本物かと言われれば判断がつかない」と認める。児童手当の対象児童数が約20万人の名古屋市の担当者は「国籍は必要がないため、把握していない」と話す。

 9日の衆議院厚生労働委員会に自民党の参考人として出席した三重県松阪市の山中光茂市長は、外国に子がいる同市の外国人は110〜120人いることを明らかにした上で、こうした子への支給額が将来的に年間8000万〜1億円規模に膨らむ可能性を説明した。

 委員会終了後、本紙の取材に「地方自治体で、外国に本当に子どもがいるかどうかを確認するのは難しいにもかかわらず、国が政策を進めようとしているのは問題」と訴えた。

 子ども手当 民主党が昨夏の衆院選で掲げた公約で、中学生以下に月額2万6000円を支給する。2010年度は現行の児童手当(年齢などにより5000円か1万円)を含め1人あたり計1万3000円とし、今国会では同年度に限った法案を審議中。政府は11年度から満額を支払う意向を明らかにしている。子ども手当対象者は1735万人と推計され、満額支給の場合、5兆6000億円が必要と見込まれる。

 

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