きょうのコラム「時鐘」 2010年3月10日

 映画「おくりびと」を褒めて私たちを喜ばせてくれたのに、今度はイルカ漁批判映画を持ち上げる。訳の分からない米アカデミー賞である

ルール無視の隠し撮りが、果敢な潜行取材という褒め言葉になる。ものは言いよう。うさんくさい話は、聞き流すしかない。ムキになって言い返しても、疲れるだけである

能登で新種の鯨が捕獲されたことがある。「肉はみそ漬けにするといい」と、地元の人に言われて驚いた。研究者に同行し、新発見に色めき立ったのだが、地元の人はとうに鯨のことを知っていた。大切な宝物として扱い、一片の肉も粗末にしてはいなかった

反捕鯨団体は、鯨がかわいそうだと叫ぶ。相手は、人間が束になってもかなわない最大、最強の生き物である。おそれ、敬う気持ちがわくはずである。声高な「保護」には、自分たちこそが最強の支配者であるという思い上がりがプンプンする

そんな手合いは、風向き次第でふらつくもの。大食漢の鯨が増えすぎると、ほかの魚たちが危なくなる。もし、そうなったなら、今度は真っ先に鯨を殺せ、と叫びかねない。やはり、うさんくさい。