東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 経済 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【経済】

国内線空港需要予測 成長前提甘い見通し

2010年3月10日 朝刊

写真

 空港の開港や滑走路延長などの際、その必要性を事前に検証した需要予測と二〇〇八年度の実際の利用実績を国土交通省が九日、併せて公表した。実績が予測を上回ったのは八空港だけ。実績が予測の二割にも満たない空港もあった。「建設ありきの見通し」との批判を免れることは難しそうだ。 (木村留美)

 国交省によると、最も予測との乖離(かいり)が大きかったのは紋別空港で、実績が予測の約13%にとどまった。石見、奥尻、広島西、松本の各空港が続き、これらの空港は、いずれも実績が予測の二割に満たなかった。

 一方、予測を上回った空港では、熊本空港が予測の一・六七倍でトップ。以下、長崎、庄内、岡山、那覇と、路線数を多く抱える地方空港などが続いた。

 需要予測は、設置管理者の国や地方自治体が民間の調査機関に依頼するなどして開港や滑走路増設などの五〜十年前に行う。

 将来の人口や国内総生産(GDP)などを参考に算出するが、航空会社が路線を就航するかどうかなど不確定な要素を加味するため、見通しを調整する余地もある。十一日に開港する茨城空港の場合、日本航空や全日本空輸の就航を前提に予測を出したが、実際に両社は路線を開設せず、予測を大きく下回る見通しだ。

 また、今回公表された九十八空港のうち約半数は、一九九〇年代半ば以降に開港したり滑走路が増設されたりした空港。バブル期の経済指標をもとに、右肩上がりの経済成長を前提として算出された甘い需要予測が多く用いられており、これが空港建設の乱立を許したともいえる。

 このため国交省は、〇一年度から、将来のGDPの予測などについては原則として最新の見通しを用いることなどを、関係機関に求めている。

 今後も福岡や那覇で、滑走路の増設が検討されている。実態に見合った需要予測を基準に、正しい判断を導くことができるかが問われている。

 

この記事を印刷する