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クローズアップ2010:事業仕分け第2弾へ 透ける思惑「政権浮揚」

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 政府の行政刷新会議は4月以降、無駄な事業を洗い出す「事業仕分け」第2弾に着手する。09年11月に実施した第1弾では、民主党の枝野幸男元政調会長(現行政刷新担当相)や蓮舫参院議員ら「仕分け人」が、「不要・不急の事業」に次々と「廃止」「縮減」の判定を下した。今回のターゲットは、国から運営費などの予算が流れ込む独立行政法人や政府系の公益法人といった「天下り法人」。「統廃合」も視野に無駄の根絶を目指すが、支持率回復のための「二匹目のドジョウ」にしたいとの鳩山政権の思惑も透けて見える。【谷川貴史、小山由宇、影山哲也】

 ◇標的は天下り法人

 鳩山由紀夫首相は19日夜、東京・赤坂の日本料理店で、枝野、蓮舫両氏ら仕分け第1弾に取り組んだ民主党議員らと約3時間にわたり会食した。

 「仕分け、頑張ってくれ」

 首相は席上、2度「頑張って」を口にした。「政治とカネ」や米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で内閣支持率が低下する中、「唯一の成功体験」とも言える事業仕分けへの首相の期待は大きい。16日には「野党時代の、『国民のためにとことんやるぞ』という歯切れのよい姿が与党になると隠れてしまいがち。事業仕分けで歯切れのよさが見えた」と語り、仕分け第2弾を政権浮揚につなげたい意向だ。

 独法は09年10月現在で98法人。公益法人は07年10月現在で6720(国所管分のみ)。このうち3350法人に9288人の国家公務員OBの理事がいる。自公政権時代の政府発表でも、毎年退職する千数百人のうち500人以上が独法などに天下りしていた。

 第2弾について、枝野氏は「独法、公益法人にお金が流れた先は、国が直接支出する場合と比べて、納税者がコントロールできる度合いが大幅に小さい」と述べ、「中抜き(ピンはね)排除」を掲げる。20日の講演では「複雑怪奇な部分にメスを入れ、この事業は独法でなく国が直接やった方が安上がりだという事例を示す」と狙いを語った。「内部告発」を募ったのは、事例を収集するためだ。

 対象とする事業の選定基準は現在、仕分け担当の議員らと作成中だ。浮上しているのは、天下りを受け入れている▽国から補助金が出ている▽行政上の許認可権を持っている--などの法人の事業。

 「財務省主導」との指摘もあった第1弾だが、今回は「財務省は消極的」との見方が政府内に根強い。財務省OBも天下りしている公益法人などが第2弾の対象で、既得権を脅かす可能性があるためだ。国からの発注に頼っている法人の事業を仕分けすることで、受け入れる余裕をなくして天下り根絶につなげる狙いもある。

 枝野氏は17日の報道各社のインタビューで「協力しないことがあれば、(次官・局長級の格下げなど)国家公務員制度が改革されるので、それはそういう対応をしていく」とけん制する構えも見せた。

 ◇財源捻出は期待薄

 「仕分けの対象になりうる独立行政法人や公益法人などの事業費は総額でも4兆円に満たない。仕分けでできる削減は数百億円がやっとだろう」(内閣府幹部)。仕分け第2弾を前に、政府内では早くもこんな見方が広がっている。枝野氏も16日の記者会見で「仕分け自体で大きな金額(の削減)は想定していない」と「予防線」を張った。仕分けの先頭に立つ枝野氏が予算削減効果を明示しない背景には、仕分け第1弾の財源捻出(ねんしゅつ)が期待外れに終わったことがある。

 民主党は衆院選マニフェスト(政権公約)で、天下りが在籍する独法、特殊法人、公益法人などへの支出(年約12兆円)を見直して、国の政策コスト、調達コストを削減▽独法などの仕事を見直し、天下りのためにある法人・仕事は廃止し、その団体への補助金等を削減--することで、6・1兆円の財源を生み出すとしていた。

 仕分け第1弾では当初、過去最大の95兆円規模に達した10年度概算要求を3兆円程度削ることを目指した。ところが、実際の削減額は1兆円弱。「廃止」とされた事業が10年度予算案に盛り込まれたり、仕分け結果を類似事業に適用する「横串(よこぐし)」作業が進まなかったためで、「無駄排除による財源捻出というマニフェストの基本構造は破綻(はたん)した」(谷垣禎一自民党総裁)との批判を浴びた。

 第2弾では、天下りや「中抜き」が注目を集めそう。だが「中抜き」が問題視されても、対象事業が必要とされれば、予算の大幅削減は難しい。第1弾のように「政治ショー」として成功しても、財源不足の解消はおぼつかない。「結局、天下りする役人が悪いという政治的アピールに終わるのではないか」(経済官庁幹部)と危惧(きぐ)する声もくすぶる。

 11年度の予算編成作業では、社会保障分野だけで約6兆円の財源を新たに作る必要がある。84年度以来の低水準に落ち込んだ税収の持ち直しは見込めない。仕分けによる予算削減の数値目標さえ明示できない中、「無駄排除で財源捻出」との公約をどう具体化させるのかが鳩山政権に問われることになる。

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 ◆今後の予算関連の流れ

 3月末 10年度予算案成立

4、5月 仕分け人選定、仕分け対象を絞り込み

     仕分け第2弾実施

 5月  政府税調専門家委員会が論点整理

 6月  中期財政フレーム(歳入、歳出の骨格)策定

     財政運営戦略(財政健全化の道筋)策定

 7月  参院選

 8月? 概算要求?

12月  税制改正大綱

     政府予算案

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 ■ことば

 ◇事業仕分け

 国会議員や学者、民間人、行政経験者らで構成する「仕分け人」が、政府や自治体による事業の必要性について公開の場で議論し、存廃や縮減などを判定する。シンクタンク「構想日本」が提唱し、02年から地方自治体と共同で実施。09年11月の第1弾では、約450事業を対象にした。「廃止」判定66事業のうち、44事業が実際に廃止された。

毎日新聞 2010年2月22日 東京朝刊

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