【ニューヨーク=阿部伸哉】トヨタ自動車は8日、突然の急加速の原因として電子制御システムの欠陥を指摘する声があることを受け、米カリフォルニア州で外部機関を交えて公開実験をした。大量リコール(無料の回収・修理)を急ぎ、企業イメージ回復を図る傍ら、米議会やメディアで取りざたされる電子部品欠陥の可能性には徹底的に反論していく姿勢を見せた。
実験は、一部トヨタ車が「アクセルペダルを踏まなくても急加速する」と主張する南イリノイ大学のギルバート教授の主張を否定することが目的。同教授は2月23日の米下院公聴会で証言し、電子回路の特定部分に傷をつけた上で抵抗を加えてショートさせると安全装置が機能せずに急加速すると指摘。米ABCテレビにも出演するなど、「電子欠陥」の疑惑を主張する中心的人物とされる。
トヨタはスタンフォード大学自動車研究センターや外部調査会社にも参加してもらい、インターネット上で中継しながらギルバート教授の実験を再現。アクセル関連の配線の絶縁体をはがして、遠く離れた別の配線と接触させるなど、「自然状態では起こり得ないシナリオ」と結論づけた。
一方、米下院監視・政府改革委員会のタウンズ委員長(民主党)は8日、ロサンゼルス・タイムズ紙の記事を取り上げ、過去に日本の従業員が幹部に出したとされるトヨタ車の安全面での問題を指摘したメモを提出するようトヨタに求めた。トヨタ側は「メモが存在するかどうか分からない」としている。
【トヨタ車の急加速】 トヨタ自動車の大規模なリコール問題で焦点となった。米国の南イリノイ大学の自動車技術を専門とするギルバート教授は米議会公聴会で、電子制御システムの不具合によって急加速が起きる恐れを指摘した。トヨタ側は(1)アクセルペダルと車載コンピューターをつなぐ2本のコードの絶縁カバーを傷つけて内部の金属を露出(2)特殊な電気部品を使って2本を接続(3)傷ついた3本目のコードがこれに接触−という条件が重ならなければ急加速は起きないと反論している。 (ニューヨーク・共同)
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