建築家やグラフィックデザイナーらクリエーター向けのオフィス「TRUNK(トランク)」が3月1日に仙台市若林区卸町2の卸町会館内の旧ホテル階にオープンする。客室を改装し、1部屋に最大4人が入居できる。専任スタッフが駐在し、起業の相談や人脈作りなどを支援する。市内にクリエーターの活動拠点が誕生するのは初めて。東北の流通拠点として発展してきた卸町地区が、ベンチャー企業が集まる米国シリコンバレーのように、クリエーターの街に生まれ変われるか注目される。【須藤唯哉】
「トランク」は旧ビジネスホテルの5階部分を改修した。白を基調としたロビーやガラスの扉など全体的にシンプルなデザインで統一され、開放的な空間に生まれ変わった。
名称の「トランク」には「旅行かばん」と「木の幹」という二つの意味を持つことから、▽カバンのようにクリエーターたちが経験や知識などを詰め込む▽卸町を「根」、クリエーターを「果実」に見立て、両者をつなぐ「幹」となる--との思いを込めたという。
38部屋の個室はLANケーブルなど通信施設を整備し、作業ルームとして提供。ロビーなどの共用スペースは交流の場所として利用する。場所の提供にとどまらず、広告代理店やグラフィックデザインの事務所での勤務経験を持つ専任スタッフがサポートする。
利用料は1人で入居した場合は月額3万円。1次募集で22室が埋まった。20代から30代の入居が多いという。
07年9月のホテル撤退後、東北大の教授や建築家ら有識者によるプロジェクトチームを結成し、活用策を検討。クリエーターの「シェア・オフィス」を作ろうとクリエーティブ産業に力を入れる横浜市などの事例を研究してきた。
開設に携わった協同組合仙台卸商センターの武田要二さん(56)は「思う以上にクリエーターが待ち望んでいる施設だ」と語った。入居者の期待も大きく、ウェブクリエーターの佐藤裕さん(31)は「ここにいれば、いろいろな人と会えるので、たくさんの刺激があるはず」と話す。
市もクリエーティブ産業の誘致に力を入れている。「トランク」には09年度からの3年間で計約6000万円の予算を投入する予定だ。09年1月には全国で初めて、卸町地区をクリエイティブ産業立地促進助成金の対象地区に指定。一定の立地が進んだ場合、企業の固定資産税を軽減する。市経済局産業振興課の天野元課長は「クリエーターらが異分野と交わることで新しい産業が生まれることを期待している」と語った。
「トランク」は2次募集中で、問い合わせは(022・237・7232)。ホームページのアドレスはhttp://www.trunk‐cos.com/
毎日新聞 2010年2月27日 地方版