ミャンマーの軍事政権から逃れて来日した少数民族の男性が、日本で難民認定を求めている裁判です。
福岡地裁はきょう、難民だと認めなかった国の処分を取り消す、男性勝訴の判決を言い渡しました。
先週末、福岡空港で支援者に出迎えられた男性。
ミャンマーの軍事政権から逃れてきた、少数民族・カチン族のアウン・ラさんです。
難民認定を求めた裁判の判決を前に、生活している東京から福岡を訪れました。
軍事政権と民主化を求める勢力の対立が続くミャンマー。
2007年の反政府デモでは、日本人ジャーナリストの長井健司さんが、軍の制圧に巻き込まれ死亡しました。
国連などによりますと、軍事政権は、人口のおよそ3割を占める少数民族を弾圧していて、年に数十万人規模の人たちが国外に逃れています。
アウン・ラさんは日本に来て6年。
ミャンマーに残してきた妻や4人の子供とは、まったく連絡が取れていません。
現在、福岡地裁に難民認定を求め、訴えを起こしているミャンマーからの脱出者は、アウン・ラさんを含めて5人。
福岡の弁護団がボランティアで裁判を引き受けているほか、キリスト教の教会を中心に支援の輪が広がっています。
少数民族であるカチン族のアウン・ラさんが暮らしていたミャンマー北部は、金やヒスイが豊富で、こうした天然資源に目をつけた軍事政権から、略奪や迫害を受けてきたといいます。
学生の頃から民主化運動に参加していたアウン・ラさんは、身の危険を感じて2004年にミャンマーを出国。
日本で難民申請をしましたが、退けられました。
短期滞在ビザが切れたため、2006年には、長崎県の大村入国管理センターなどに9か月間収容されました。
去年、日本政府が難民として認めたのは、申請者のわずか2パーセントでした。
難民申請の数は、この5年間増え続けていますが、認定数はほぼ横ばいで、難民認定の壁は高いのが現実です。
一方で、日本政府は先月、タイにあるミャンマー人の難民キャンプに係官を派遣して面談を行い、3年間であわせて90人を受け入れる方針を示しました。
難民に対する姿勢にも変化がみられます。
きょうの判決で福岡地裁は、「人種や政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがある」として、国が難民と認めなかった処分を取り消す、アウン・ラさん勝訴の判決を言い渡しました。
弁護団は国に対し、速やかに難民認定するよう求めています。