本書は18世紀に勃興したロスチャイルド一族の業績と世界制覇の実態を俯瞰している。しかし未来への提言として彼等が作ったシステムを変えることによって彼らの支配から脱却することは可能であるとも述べている。著者のこの気持ちには共感できる。
著者:安部芳裕
出版社:徳間書店
定価:648+税
本書では、金(きん)貨幣をもとにした紙幣(信用創造)の発行から、紙幣を貸し付けることで本来は存在しない利子を産み、さらには紙幣を国家にまで貸し付けることで権力を手中にし、今や国際金融資本組織として世界の政治、経済をコントロールしているロスチャイルド一族が、18世紀に勃興したときから今日200家族による「その業績と世界制覇」を俯瞰している。
また、ロスチャイルドが資金提供し創設したイルミナティ結社(知的有能なひとに世界を支配させすべての戦争を防止させるために世界統一政府をつくることを目的とする)にも触れ、さらにこの一族と同盟者たちが、代々、忠実に履行していると思われる25項目からなる行動計画書(全世界のマンパワーと資源を独占的に支配するための計画及び教義)が記載されている。
世界中の経済に影響を及ぼす基軸通貨「ドル」は、実は、米国債を担保にニューヨーク連邦準備銀行(FRB)が政府に貸し付けた債権です。そして、このFRBは一部を除いてすべてロスチャイルド系投資銀行が株主で、アメリカ政府は1株も保有していない。
つまり私有のFRBは、口座に数字を記入するだけで「無」からお金を創造する。そしてアメリカ国民は、この「無」から創られたお金にたいして利息を支払う巧妙な仕組みだ。
21世紀初頭、ロスチャイルド家が中央銀行の所有権を持っていない国は、全世界でアフガニスタン、イラク、イラン、北朝鮮、スーダン、キューバ、リビアの7ヵ国だけだった。その後、アフガニスタンそしてイラクにはアメリカの侵攻により、現在では残り僅か5ヵ国のみとなっている。
また、2次大戦後の世界の枠組みも彼等が作ったが、閨閥と人脈で固められたロスチャイルド200家族が目指すものは、「新世界秩序」だ。一般的にはグローバリゼーションと言われている。その目的は、一部の国際金融資本家と知的エリートが絶対的な権力で大衆を管理・コントロールする平和な(?)社会をつくること、だそうだ。
つまり中央集権主義の新階級社会設立であり、そのピラミット構造は、上から、1%未満の支配層(国際エリ−ト銀行家、多国籍企業経営者所有者、王侯、貴族)。その下に執行者階級(報酬を得て支配層の利益を擁護、代弁する層)。次が奴隷階級(支配・執行者階級を支えるために教化された大多数を占める働き蜂集団)。そして最下層が不可触民(社会に寄与しない底辺層)。アメリカはすでにこの形に成型されつつある。
著書では、未来への提言として、ロスチャイルドと国際金融資本、その同盟者が世界を支配するといっても、逐一我々に命令を下しているのでなく、彼等は社会・経済システムを自らの都合のいいように制度設計し、それを通して私たちの生活に影響をを与えている。ですからそのシステムを変えることによって彼らの支配から脱却することは可能である、とする。
そして理想とする社会はひとそれぞれでしょうが、普通のひとが普通に働き、過不足無く、普通に生活できる環境が整えられればそれで良い。それには、不正、不当が通る社会、不必要な費用を払わなければならない経済システムを変えていかなければならない。国際金融資本家や腐敗した政治家・官僚に搾取されない社会にしたい。そのためには国際金融資本から独立した自立型経済(内容は本書参照)を目指すこと、を提言している。
(感想)
ひとは予想外なことに直面すると、まず、信じられない、と否定しがちである。しかし、この著書は歴史的事実をはじめ圧倒的多数な事実、事件が満載されている。300頁ほどの単行本1冊を書くために90冊余の参考文献を駆使している。
また、彼らは何世代にもわたって着々と計画を推進するために、あまりこのような内容を公表されたくないようだ。(アメリカのマスコミはすでに彼らの資本傘下にある)。
この手のものを「陰謀論」と片付けるのはたやすい。だが、民主主義のもとでは、本来「最大多数の最大幸福」が政治の目的のはずだが、現実は彼らの「新階級社会」へ移行する顕著な動きがみられる。著者の「家畜として生きることはごめんです」の気持ちには共感できる。