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木目の美を引き出す 仙台の木工芸家・小野寺穣さん

木目の美が引き立つ小野寺さんの「栗造拭漆色紙箱」

小野寺穣さん

 八角形をした2段重ねの箱。ふたに格子柄の寄せ木造りを施した。図録を見ると、全体にすっきりして上品な印象だ。2009年の日本伝統工芸展に出品した「黄檗(きはだ)寄木造拭漆八稜箱」。2倍の競争率を突破して初入選を果たした。

 「底板の位置を工夫するなど見えない部分に気を使い、図面の段階から試行錯誤しました。3度目の挑戦で審査員に認められたのがうれしかった。お客さんに買ってもらったので、現物をお見せできないのは残念ですが」と顔をほころばす。

 木材を差し合わせて箱などを制作する指物師への道は偶然の出会いから開けた。宮城野高美術科の第1期生。クラフトコースで木工を学んだが、将来どんな職業につきたいかは定まっていなかった。卒業間際、仙台市内の百貨店で木工芸家渡辺栄さん(河北工芸展顧問)が開いていた個展を見学した。

 たまたま同じ泉区南光台に家があった。「教えてください」と頼み込み、第1号の弟子として通うようになった。
 「道具の手入れが大切」と言われ、初めは刃物とぎを教わった。続いて陶磁器などを入れるきり箱を何種類も試作した。

 漆を塗る工程にも挑戦し、かぶれて体中が腫れ、1カ月ほど仕事ができなかったことも。「つらかったけれど、漆を塗ると、かんなの掛け方や磨き方の課題が見えてくる。懸命に習得しました」

 渡辺さんの妻が茶道を教えている関係もあり、茶会参加者に記念品として渡すお盆作りの仕事などが回ってきた。腕前を試そうと公募展にも挑み、河北工芸展には2001年から9回連続入選。昨年春に独立を果たした。

 住宅街にある自宅の部屋が作業場。「箱や文机、小たんすなどを幅広く受注して制作したい。木目の美しさを引き出したり、乾燥によって狂いが生じないように気を配ったり。勉強することは、まだまだあります」。仙台では数少なくなった貴重な指物師。将来の飛躍を期待したい。(生活文化部・喜田浩一)

<おのでら・ゆたか>1979年仙台市生まれ。宮城野高卒。2008年の東日本伝統工芸展で入選。泉区在住。


2010年02月23日火曜日

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