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| ２０１０年度上半期で普通セメントの生産が中止される秩父太平洋セメントの秩父工場（左側の建物）。右側の山が石灰石を採掘している武甲山＝秩父市大野原 |
秩父市大野原の秩父太平洋セメントの秩父工場が、２０１０年度上半期中に普通セメントの生産を中止する。旧秩父セメント操業以来、８５年にわたって秩父の経済を支えてきた基幹企業の生産体制の見直しは協力会社を含めた従業員の雇用問題、市の税収など、今後の地元経済に及ぼす影響が懸念される。
秩父太平洋セメントの全従業員は１６１人（三輪鉱業所、叶山鉱業所など含む）、うち秩父工場の従業員は９３人。現在、年間に普通セメント６０万トン、特殊セメント１万トン、石灰石製品２０万トンを生産。この中で主力の普通セメントの生産を中止する。当然、仕事量は激減、組織・人員体制の見直しを迫られる。それは運輸や鉄工、電気など、１４の工場協力会社にも波及する。
秩父工場は「本社の厳しい判断が出た。３０日に具体的な諸施策や実行時期が示される。それを見極めないと人員体制は分からない」と説明する。
協力会社の多くは市内や周辺の市町に所在する。ある会社の役員は「これでは（秩父は）衰退するばかり。どのように展開するか、めどが立たない。社員も不安な気持ちで働いている。影響はじわじわくる。地域ぐるみで何とか守れないのか」という。別の会社では「もちろん大変だよ。発表を見守るしかない。新政権の『コンクリートから人へ』が拍車を掛けた。八ツ場ダムの工事中止もね」と話した。
また、秩父工場は関東一円から都市部の建設残土などさまざまな産業廃棄物を年間約４０万トン受け入れ、普通セメント製造工程の中で原料・燃料代替として有効利用している。特に廃畳を処理できるのは秩父工場だけだ。こちらは秩父地域だけではなく、県内外への影響も考えられる。
秩父市の財政に与える影響も大きい。１９９８年から２００９年に同社や従業員が払った固定資産税、法人市民税、市県民税は計約４５億円に上る。年々、減少してきたが、昨年は約３億円で市税に占める割合は約３・４６％だった。また、市では浄水場から出る汚泥（年間２５００トン）や下水道センターから出る汚泥、焼却灰（同計約１２０トン）を秩父工場で処理している。担当者は「今後、どこで処理するか、受け入れ先が遠くなれば輸送コストも心配だ」と話す。同市では、全庁的な対策プロジェクトチームを設置、セメント生産の継続、従業員の雇用など、議会と連携して、同社に働き掛けていくという。
市民の一人は「武甲山の採掘はこれからも続けるが、（秩父工場の）セメントの生産はほとんどなくなる？
秩父銘仙、木材が衰退。今度はセメントかい。時代の流れとはいえ、寂しい話だいね」と武甲山を見上げた。
【メモ】旧秩父セメントは１９２３年創立。２５年、武甲山から採掘した石灰石を原料に操業開始。最盛期の７３年には年間１５０万トンを生産。従業員もピーク時には１０９７人を雇用、秩父経済の核を担ってきた。９４年、小野田セメントと合併して秩父小野田セメントに、９８年には日本セメントとの合併で太平洋セメント。２０００年には分社独立して秩父太平洋セメントとなった。先月２３日、親会社の太平洋セメント（本社・東京都港区）が国内セメント需要の激減に伴い、秩父工場など３工場での生産中止を発表した。
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