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社会は理解し支援を「子どもに愛情がわかなかった」――。奈良県桜井市で5歳男児が餓死した事件で、母親(26)はこう供述した。わが子を「かわいいと思えない」と感じた経験のある親は少なくない、と虐待防止の専門家は指摘する。親が子に否定的な気持ちを持つことはあると周知し、早めに支援する仕組み作りが必要と訴える。 大阪府内の主婦(35)は4年前に長女を出産した後、2歳上の長男をしかることが多くなった。 夜泣きをする長女の世話で眠れない日が続いた。長男は「一緒に遊ぼう」と甘えてくる。牛乳をこぼしたり、トイレトレーニングに失敗したりすると腹が立った。仕事が忙しい夫に助けを求めることはできず、近所に知り合いもいなかった。 「息子の姿を見るだけでイライラするようになった」。ささいなことをきっかけに長男の頭をたたき、体を押し倒した。「なんでママだけしんどい思いせなあかんの」と叫んでいた。感情を抑えきれない自分が怖くなり、民間の虐待ホットラインに電話をした。 約3年前、母親たちが集う「貝塚子育てネットワークの会」に参加。同じように悩む母親たちに、思いを打ち明けることができた。気持ちが楽になり、子育てに前向きになったという。 同会代表の朝日陽子さん(44)も、親類や友人のいない状況で子育てをしていた頃、「子どもから離れたい」と思ったことがある。「悩みや不安を話し合える場があることは、虐待を防ぐためにも大切。でも、こういう場に一歩踏み出せない人もたくさんいるはず」と話す。
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子どもを疎ましく思った経験を持つ親は少なくない。ベネッセ教育研究開発センター(東京)が2005年に行った調査では、6割の母親が「子どもがわずらわしくてイライラしてしまうことがある」と回答した。 立命館大教授の野田正人さん(司法福祉論)は「『母親にはおなかを痛めたわが子に愛情があって当然』という考え方が根強くあるが、神話に過ぎない」と話す。 子どもへの愛情を育むには、まず親自身が「自分は大切な存在だ」という感情を持てることが前提という。 「子どもを愛せない」という親の多くは、「自分はダメな親だから」と考えがち。周囲もそんな親を非難するので、親は助けを求められないまま、虐待行為へ進む危険性が高まる。 野田さんは「『親が子どもを好きになれないことはある』と社会全体が理解し、適切に支援する体制を整えることが必要」と話す。
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「子どもをかわいいと思えないと悩む背景には、夫婦や親子、友達関係などの問題がある」というのは、子ども情報研究センター(大阪市)所長の田中文子さん。 センターは週4回、面談や電話による子育て相談を行っている。「子どもが離乳食を食べない」という悩みが、「夫の帰りが遅い」「義母から口うるさくいわれる」といった内容に広がることも珍しくない。 田中さんは「母親は、子どもに関する悩みなら話しやすいが、それは抱えている問題の一部にすぎない。家族関係や健康状態、経済状況など様々な側面に目を向け、虐待に至る前に、身近で助け合える関係作りが重要」と指摘する。 (2010年3月7日 読売新聞)
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