2010年3月8日
「話すときは保護者の労をねぎらう」「一方的に話し逃げ道をふさがない」――。学校に過大な要求をする保護者(モンスターペアレント)が増える中、横浜市教育委員会は保護者への応答方法や失敗例をまとめた「保護者対応の手引き」を発行した。現場で戸惑う教師の参考になれば、と全市立学校に配った。
市教委によると、こうした保護者への対応は、いじめや暴力、学級崩壊と並ぶ課題の一つになっている。市教委は2008年度に校長OBや指導主事で構成する学校課題解決支援チームを発足。学校と協力しながら課題に取り組んできた。今回の手引きは、支援チームが経験したこれまでのトラブルを参考にまとめたという。東京都教委も対応マニュアルを今年1月につくったが、全国的には珍しい。
手引書では、対応の基本姿勢について、保護者を「最も重要なパートナー」と位置づけ、学校の方針のみを話さない▽担当者や管理職のみで事案を抱えない▽感情的な主張を繰り返さない――など注意すべき点をあげた。
困難な要求についても、大声を出し続けたり、長時間居座ったりする場合、注意しても従わなければ警察に通報する▽金銭の支払いなどできないことは「できない」と明確に否定する――などと助言。
実際に過去にあった12の事例をあげ、家族構成、受験の失敗など、子どもや保護者を取り巻く背景についても細かく説明した。また文書による回答は基本的にしない▽児童生徒と情報交換して児童虐待を見逃さない、などのアドバイスも。
団塊の世代の大量退職にともない、市内の学校現場は若い教員が急増。保護者の対応に戸惑い、疲弊する教員も多いという。
市教委は「保護者と学校のゆがんだ関係の中で、子どもが健全に成長する土壌を喪失させているケースもある。手引きが学校と保護者の信頼関係を再構築する助けになってくれたら」としている。(佐藤善一)
■親からの要求の主な事例
児童の財布が学校で紛失。父親から「学校の責任だ。弁済しろ」と抗議を受けた。父親の勢いに動揺した校長は「全額弁済します」と答えてしまったところ、父親から「ブランド物の財布代」、財布購入のための交通費など、高額を請求された。
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学校に行かなくなった中学生の母親が「担任に『学校に来るな』と言われたり、頭をたたかれたり、嫌がらせを受けたらしい」と学校に抗議。謝罪と担任交代を主張し続けた。調べたが、そのような事実は確認できなかった。
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児童が「友人から物を投げられた」「席を少し離された」と相談。学校は子ども同士の関係が良好だったことから、いじめではなく人間関係のトラブルと判断し、会合を開いて子どもたちに話をした。だが母親は、相手児童に転校させろと要求。自分の子どもを登校させなかった。
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児童の母親が「娘はピアニストになるためにレッスンを受けています。指を傷つけたらいけないので休み時間は外に出さないでほしい」と要求。学校が「すべての行動を把握はできない」と説明したが、耳を貸さなかった。児童が休み時間に転んで骨折してしまうと、児童が学校に来なくなり、母親から定期的に抗議が来るようになった。
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