「論文盗用の助教」監修アニメに科学館困った
3月9日8時5分配信 読売新聞
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セルカン助教は、作品のポスター(左)に監修者として名を連ねている(2007年10月) |
助教は以前から数多くの経歴・業績の詐称疑惑が取りざたされ、作品中にも、疑いが持たれている「宇宙飛行士候補」との肩書で登場する。ただ、同館は上映日程に穴が空くとして、配給元から修正版が届くまで上映を継続するという。
問題の作品は「宇宙エレベータ 科学者の夢みる未来」。宇宙へ行く少女の物語を描きながら、地上と宇宙をつなぐ宇宙エレベーターの原理を紹介している。
監修者として名を連ねているのが、東大大学院工学系研究科のアニリール・セルカン助教(36)。本編のエンディングで「東京大学助教(建築学)/宇宙飛行士候補」のクレジット入りで本人の映像が挿入され、観客に語りかけている。
同館は昨年5月16日から今年5月9日までの予定で館内プラネタリウムで土日と祝日に上映している。しかし昨年秋頃から、論文や著作における盗用疑惑が浮上。「トルコ人初の宇宙飛行士候補で、米航空宇宙局(NASA)で宇宙エレベーターを研究していた」と自称しながら、NASAが公開している宇宙飛行士候補一覧に名前がないなど、経歴詐称の疑いも取りざたされてきた。
東大が調査した結果、学位請求論文での盗用が認められ、今月2日に博士号取り消しとなった。博士号のはく奪は東大史上初めてで、同大は懲戒処分も検討している。
これを受け、同館は、配給元で大型のプラネタリウム作品を数多く手掛けている「デジタル・アンド・デザイン・ピクチャーズ」(東京都港区)に問い合わせたところ、同社は本編から助教が登場する場面を削除したものを制作中と回答。同社は「今月中には再配給したい」と話している。
ただし同館は「今上映をやめると代わりにかけるものがなく、プログラムに穴が空いて困る。助教が登場する以外は本編の内容に問題はないので、代替作が届くまで上映を続けたい」と話している。
親子連れで鑑賞した同市内の男性会社員(34)は「作品は良かったのに、こういう問題が生じると、とても残念。その(助教が登場する)部分だけを変更して何とか続けてほしいと思う」と話していた。
◆宇宙エレベーター…地球の自転と同じ速さで回る「静止衛星」と地上を丈夫な素材で結び、昇降機を付けて人や物資を宇宙へ運ぶ輸送機関。ロケットより安全で低コストとされ、近年、高い強度を持つ素材の発見などで関心が高まり、研究が進んでいる。
最終更新:3月9日8時5分
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