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民主党が政権公約に掲げていた「新たな年金制度の創設」に向けた政権内の議論が、ようやく動き出した。
鳩山由紀夫首相が自ら率いる検討会で基本的な考えをまとめるという。
年金改革は積年の国民的課題だ。中途半端な取り組みではいけない。参院選の主要な争点とするほどの覚悟をもって作業を急ぎたい。
民主党はこれまでに月額7万円の「最低保障年金」を創設し、所得比例年金と組み合わせるという方式を提案してきたが、具体的な制度設計はまだ白紙に近い。
最低保障年金については、現在の基礎年金のように一律に支給するのか、それとも所得が比較的高い人々を除外するのか。連立与党内でも、考え方はまちまちだ。
改革によって自分の年金はどうなるのか、そのために必要な負担はどれだけなのか。私たち国民が知りたいのは、具体的な中身である。
参院選に向けて、検討会を年金改革に取り組んでいる姿勢をアピールする場にできればいい、という狙いがあるとすれば論外だ。本気で取り組んで欲しい。
年金制度は長期にわたる国民との約束事だ。政権交代の度に制度が変わるようなことになれば、大きな混乱と不安を生む。
自民党など野党も、今の年金制度では生活保障の役割が担い続けられないのではないか、といった問題意識は共有している。いずれ、与野党の対立を超えて協議ができる場をつくり、多くの国民が納得する解決策を見いだしていく取り組みが必要になるだろう。
当面の争点として参院選で各党が競ってほしいのは、年金制度それ自体の未来図だけにとどまらない。
医療崩壊を防いだり、介護・少子化対策に力を入れたりすることは待ったなしだ。それらの費用がさらに膨らむことを前提に、年金を含む社会保障全体をどう強化したら安全で安心できる社会をつくることができるのか。各党から聞きたいのはそうした全体像だ。
自公政権下の社会保障国民会議は、今後増える医療や介護などの費用をまかなうだけでも、消費税率に換算して5%程度の財源が必要になると試算したことがある。
民主党は、かつて年金改革の財源確保のため、消費税の3%引き上げが必要だとしていた。いまはその点をあいまいにしたまま、子ども手当の創設や後期高齢者医療制度の廃止へ進もうとしている。そろそろ整合性をもった国民への説明が要る。
たとえ年金が充実されても、それだけでは安心にはつながらない。
財源をいかに確保するのか。それを社会保障の様々な分野にどう振り向けるのか。逃げてはならない課題だ。
温室効果ガス削減にどう取り組み、地球温暖化を止めるのか。その基本姿勢が揺らいでいるようでは、心もとない。政府が12日の閣議決定をめざす温暖化対策基本法案づくりである。
鳩山政権は「他の主要国が野心的な目標を掲げる」との前提で、「2020年までに温室ガスを1990年比で25%削減する」との目標を掲げた。その実現に向けて努力する、という意思を体した基本法が必要だ。
京都議定書に続く温暖化防止の新しい枠組みをめぐる国際交渉は難航している。排出大国の米国と中国に目標の引き上げを促すためにも、基本法の制定で日本の意欲を示したい。
ところが、法案の内容をめぐって「環境と経済のどちらを重視するか」という対立の構図がいまだに続いている。
特に、温暖化防止策の大きな柱の一つであるはずの排出量取引制度をめぐり、意見の対立が深刻だ。
あらかじめ企業が排出できる二酸化炭素の上限を定めておき、それを下回った企業は余った分を売ってもうけることができる。逆に、上限を超えた企業は、その超過分を購入しなくてはならない。排出量を減らすほど得をする仕組みである。
企業に削減努力を促す効果が期待されるが、排出の上限の決め方をめぐる対立が激しい。環境省や環境団体は排出総量を規制すべきだとしているのに対し、経済産業省や産業界は生産量あたりの排出量規制を主張している。
しかし、欧州連合(EU)の排出量取引市場や、米国が準備している取引市場は、いずれも総量規制に基づく。将来、この方式が国際標準になった場合、日本が違う方式にして不利な扱いを受けるようでは困る。
また、生産量あたりの排出量が減っても、景気の回復で生産量そのものが増えれば、排出総量は増えてしまう。
こうした条件を考えれば、大きな方向性としては排出総量の規制を原則とするべきではないか。
鉄鋼や電力業界には「企業の経済活動が妨げられる」として、大胆な温暖化対策に消極的な姿勢が目立つ。
日本企業が国際競争で不利にならぬよう、場合によっては例外を設けるといったやり方で配慮すべき部分があるのは事実だ。しかし、欧米と制度や競争条件を整えつつ低炭素化の技術革新で先頭を走ることこそ真の競争力である。その基本を重んじたい。
温暖化が進めば経済への打撃も大きい。目の前にあるのは「環境か経済か」という選択ではない。
環境税や排出量取引、自然エネルギー利用の拡大、原発の稼働率向上や老朽化に伴う新設といった政策を大胆に進める。そんな基本法をめざし、対立を克服する努力を双方に求めたい。