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山の遭難救助隊は救急車ではない、「登山の自由」の危機にも

2010年03月09日07時40分 / 提供:PJオピニオン

山の遭難救助隊は救急車ではない、「登山の自由」の危機にも
かぐらスキー場頂上から1時間ほど登った上ノ芝最上部付近から神楽峰(左)と苗場山(中央)を望む。(撮影:水口良介)
【PJニュース 2010年3月9日】7日午後、新潟県湯沢町のかぐらスキー場付近で遭難した男女3人が無事救助されました。各種報道によると、彼らは「新潟のスキー場にスノーボードに行く」と家族に残しただけでした。そして、「道に迷ってどこかの山小屋にいる。2人とははぐれた」とする110番通報は、同スキー場の西側の尾根を越えた新潟県津南町小松原地区から発信されたそうです。また、あたりは視界がきかなかったそうです。

かぐらスキー場頂上からは山の上は山スキーのメッカです。これはPJがかぐらスキー場の頂上までつなぐ第五リフトが運行開始!いよいよ山スキーシーズンという記事に記したとおりです。遭難した3人はスキー場外の神楽峰を目指したのですが、辺りがまっ白で視界が全くきかなくなる「ホワイトアウト」にあいました。一人が連絡を取るため、先に進みはぐれたそうです。7日夜、一人が農作業小屋で、2人は雪穴で夜を越し、翌朝、同スキー場から約8キロ離れた地点で発見、救助されたそうです。

スキー場頂上から上の芝と呼ばれる大雪原でいったん天候が崩れると、すぐに「ホワイトアウト」の危険にさらされます。地図とコンパスを持ち、読図術を会得していなかったのか、疑問です。

かぐらスキー場内で滑っていて、この農作業小屋に迷い込むことは絶対といっていいほど、ありません。神楽峰に行くには、通常、かぐらスキー場頂上から登り始めます。かぐらスキー場頂上には「登山計画書」の提出ボックスが設置されています。また、この周辺はスキー場外に外れないよう、ネットで仕切られています。通常、このボックスの前を通ってスキー場外の雪山に入山するので、遭難者がこのボックスを見落としていたとも考えられません。各種報道を見ても、このスノーボード客が登山計画書を提出した形跡はありませんでした。

この時期、かぐらスキー場付近の天候は非常に不安定です。からっと晴れていたかと思うと、急に霧が立ちこめ、吹雪となるのはしょっちゅうです。半袖でスキーを滑っていられる気温から一気に凍てつくような氷点下まで下がります。雪山は本当に恐ろしいものなのです。救助する捜索隊も遭難してしまう危険性もあるのです。恐ろしい「ホワイトアウト」、山スキーでは完全装備と登山計画書提出を!という記事を書いたのもこのためです。

無謀な登山者や山スキーヤーに遭難捜索の必要なし、自己責任貫徹をという記事に「道路に飛び出して車に轢かれたら自己責任で救急車なし。寝たばこで火災出しても自己責任で消防車なしですね!この記者は世の中の構造が全く解ってませんね」というコメントがありました。こう考える人もいるでしょう。「自己責任論」だけを取ると、非常にドライなイメージがありますが、雪山の遭難に関して言えば、このコメントは論点がずれています。事前に推測できる危険のレベルが全く違います。

雪山に入山をする登山者は危険の可能性を十分に認識し、それに最大限対処できる知識と経験を兼ね備えていてしかるべきです。その現れの一つが登山計画書の提出なのです。これらができなければ、雪山に登る資格はありません。それでも雪山登山をするのかと言えば、それは自己責任の範囲だと考えます。これは自分の行動に責任を持つという、まさに「自由」という考え方に裏付けされたものだと思います。

幸い、遭難者3人が無事救助されて、PJもほっとしました。この事件でPJの地元・湯沢町は大騒ぎでした。知人や取引先もこれに関わりました。みんな一様に心配し、自らに降りかかる危険を顧みずに、一生懸命救助にあたりました。

昨今、救急車をタクシー代わりに呼ぶ非常識な人が多くいると新聞テレビで見聞きしますが、同様に、携帯電話一本で救急車代わりに捜索隊の出動を要請する登山者も後を絶ちません。捜索隊は救急車ではありません。こんなことが続けば、当然行政は登山を規制する動きに出ます。心ない、モラル無い、常識のない人々によって、そのうち「登山の自由」が奪われてしまうのではないかという危惧を抱いています。【了】

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パブリック・ジャーナリスト 水口 良介

関連ワード:
遭難  スキー  登山  PJ  新潟県  
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