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【芸能・社会】

全国制覇だ!幸四郎弁慶 7・29茨城で47都道府県公演達成

2010年3月9日 紙面から

 歌舞伎俳優の松本幸四郎(67)が、6月30日から始まる巡業公演で、「勧進帳」弁慶の47都道府県上演を達成することが8日、分かった。歌舞伎の演目で一人の俳優が、“全国制覇”するのは初めてだ。

 9代目幸四郎に、また一つ勲章が加わる。「勧進帳」の弁慶は、染五郎時代の16歳の時に、子供歌舞伎教室で初演。以来、半世紀以上演じ続け、公演先はいつの間にか42都道府県に上っていた。

 今回の巡業は、6月30日の東京・江戸川区総合文化センターから。山形、栃木、群馬、福井、茨城を初めて訪れ、7月29日の土浦市民会館で全国制覇を達成する。初演以来の全行程の移動距離は4万4060キロに及び、地球1周(約4万キロ)を上回ることになる。

◆7代目が原点

 歌舞伎を代表する演目「勧進帳」の弁慶役の原点は、祖父7代目幸四郎だ。9代目市川団十郎から教わって、生涯に1600回以上演じ、弁慶役者と言われた。「昔のことですから映画館の舞台にトタン板を敷いて、三丁三枚(長唄、三味線各3人)ぐらいでやったこともあったそうです。全国隅々を回ったことで、人気狂言になったと思うんです」と幸四郎。

 2008年10月15日に、「勧進帳」ゆかりの地である奈良の東大寺で自身の1000回上演を達成した幸四郎は「奇跡のよう」と万感の思いを口にした。今回は1026回目からの旅になる。

 思い出も多い。カーター米大統領が来日した1979年6月、観劇を望まれ、2回公演を終えた国立劇場で急きょ舞台に。1回演じるだけでも心身ともに大変な大役を1日に3回演じたのは、この時だけだ。

 新潟地震の直後には、「少しでも励ましになれば」との思いで現地に飛んだ。沖縄の女子大生から、「7代目の弁慶を東京で見ていた父親が、体調が悪く沖縄から出られなくなってしまったので、ぜひ来てください」との手紙が届いた時には、数年がかりで沖縄公演を実現させ、楽屋で親娘と対面したこともある。

 「劇場で演じるだけが歌舞伎ではない。見たいというお客さまのところへ行ってお見せするのも歌舞伎役者の役目。歌舞伎座が(建て替えのため)3年間なくなりますから巡業は増えると思います。歌舞伎役者にとってここが正念場。いかに感動的な素晴らしい歌舞伎をお見せできるか。今回は、そのスタートになります」

 幸四郎には、1149回演じたミュージカル「ラ・マンチャの男」という当たり役もある。騎士遍歴の旅に出るキホーテは槍を持ち、主君を守護する弁慶の手には金剛杖が握られている。「何か不思議な因縁を感じますね」という幸四郎の芸の旅も、果てしなく続く。

     (本庄雅之)

◆演目は二部構成

 今回の演目は第一部「重の井子別れ」(魁春、錦吾)、「勧進帳」(富樫・梅玉、義経・魁春)、第二部「雨の五郎」(松江)、「仮名手本忠臣蔵 七段目」(幸四郎)、「近江のお兼」(高麗蔵)。

 

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