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きょうの社説 2010年3月9日
◎住宅エコポイント 地域経済のカンフル剤に
省エネにつながる住宅の新築やリフォームをした場合、1戸で最高30万ポイント(1
ポイントは1円相当)がもらえる「住宅版エコポイント」制度がスタートした。北陸では、2009年10〜12月のマイホーム着工戸数が5四半期振りに前年を上回るなど、下げ止まりの傾向が鮮明になってきている。住宅業界は地元企業が多く、すそ野も広い。内需振興の柱となる業界だけに、需要の改善は、地域経済のカンフル剤になりうるだろう。特に住宅バブル期に建設された住宅やマンションは築20〜30年を経て、リフォーム が必要な時期を迎えている。この時代はまだ二重サッシや断熱材を十分に使用していない建物が多いだけに、高齢化に伴うバリアフリーなどの需要と併せて、リフォームの潜在的な需要は相当あるはずだ。 マイホームの新築需要に関しては、大きな伸びは期待できないとの声もあるが、北陸3 県の住宅展示場は、来場者が増えているという。住宅取得時の贈与税非課税枠が現行の500万円から1500万円に拡大された効果は意外に大きいのではないか。 日本の家は夏暑く、冬寒くて当然のように言われてきた。だが、省エネ住宅は、エネル ギー効率が良くて経済的なだけでなく、年間を通して快適な室温を保ち、生活の質を高めてくれる。北陸でも省エネ仕様が標準となるようエコポイント制度や非課税枠の拡大をアピールし、需要を喚起していきたい。 8日の東京株式市場では、住宅・ビルのアルミサッシやドアを主力とする三協・立山ホ ールディングス(高岡市)の株価が1日で7%以上も上昇した。エコポイント需要を見込んで、住宅関連の企業が物色されている。エコポイント制度に上乗せして、自社製品の購入者にさらなる割引のサービスを行う企業も増えている。 昨年導入された家電エコポイント制度やエコカー減税は、買い替え層を刺激し、家電や 自動車業界全体の売り上げに大きく貢献した。個人消費を直接刺激する政策は、景気回復の効果も高いのである。住宅版エコポイント制度にも大いに期待したい。
◎続く自衛隊の不祥事 組織の抜本改革急ぎたい
航空自衛隊発注の事務用品入札で官製談合が指摘されたため、再発防止策を検討する防
衛省の委員会が発足した。自衛隊の発注業務の問題点を調査し、早急に改善策を講じる必要があるが、官製談合の再発防止策だけでなく、不祥事の続発を受け前政権下でまとめられた防衛省の抜本的な組織改革計画が、政権交代でストップしたままである。北沢俊美防衛相以下、防衛省の政務三役は、米軍普天間飛行場移設問題の処理をはじめ 、新しい防衛計画大綱の策定準備などに忙殺されているが、だからといって、組織改革というもう一つの重要課題をいつまでも放置していてよいわけがない。調達の在り方だけでなく、組織の見直しも積極的に進める必要がある。 防衛省は、元事務次官の汚職事件や海上自衛隊のイージス艦衝突事故、情報流出などの 不祥事が相次いだため、同省改革会議の報告書に基づき、内局官僚(背広組)と自衛官(制服組)の協働体制の確立を柱にした抜本的な防衛省改革計画をまとめた。 2009年度には、形骸化していた防衛参事官制度を廃止し、政治任用の防衛相補佐官 を新設するなど一部の改革案が実行された。しかし、背広組と制服組の混成による防衛政策局の機能強化や防衛力整備部門の一元化など、10年度予算で予定された主要な組織改革案は凍結状態にある。 従来より制服組の意見を反映させやすくする前政権の改革案を、シビリアンコントロー ル(文民統制)の面から見直そうというわけで、その趣旨は分かるとしても、見直し作業がまったく手付かずなのは問題である。 艦船事故が続いた海自の改革委員会は08年にまとめた改革指針で、隊員の規律の緩み 、プロ意識の希薄化など隊員の「心の問題」とともに、自衛官の定員割れが続く問題点を指摘している。海外派遣など自衛隊の任務は増大しているが、10年度予算での増員要望は「事業仕分け」で認められなかった。自衛隊組織の体質改善と強化をどう進めるか、鳩山政権の方針を明確にしてもらいたい。
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