大阪府の橋下徹知事
だめな高校は公立、私立とも退場してもらう――。大阪府の橋下徹知事の高校改革が今春、本格的に始まる。公私間の授業料格差を無くすため、府の私立助成を大幅に拡充。公私で生徒の獲得を競わせる。また、芸術やスポーツなどの分野で成果を上げた公立に助成金を約束するなど、公立同士の競争も後押しする。知事がこだわる「競争原理」は、大阪の教育の質を向上させられるのか。
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「公立と私立が競争できるような条件をつくるため、府のお金を投入します。私立の皆さんには、公立の受験生を奪うんだという意気込みで戦ってもらいたい」。2月1日に大阪市内で開かれた「大阪私学保護者の集い」で、橋下知事が声を張り上げた。
2009年度の府内の高校授業料は公立の年間14万4千円に対し、私立は同平均約55万円。4月から鳩山政権によって公立の授業料が無償化される。橋下知事はこれに併せて、府内在住の私立高校生について、年収350万円未満の世帯を無償化できるよう府独自に助成する。11年度には、府内の私立高校生の半分をカバーするとみられる年収680万円程度の世帯にまで助成を広げる方針だ。
公立と私立の授業料の差が縮まれば、生徒や保護者が家庭の経済事情にかかわらず、自由に学校を選べるようになる。そうなれば、進路の判断基準は純粋に良い学校かどうかだ。各高校が生徒獲得競争を勝ち抜くために魅力ある学校づくりに励めば、教育の質の向上につながる――。橋下知事はそう考えている。
金蘭会高校(大阪市北区)の藤林富郎校長は「30人学級でのきめ細かい指導や、日本文化の素晴らしさを伝える華道や茶道の授業などで個性を打ち出す」と述べ、公立との競争に前向きだ。
助成拡充の一方で、橋下知事は記者会見や議会で「競争を重視する制度の中では、経営的に成り立たない学校は倒れても仕方ない」と、クギを刺す。