児童虐待をした親や保護者について全国児童相談所長会(会長・丸山浩一東京都児童相談センター所長)が調べたところ、全体では2割が無職だったのに対し、ネグレクト(養育放棄)をした親などに限っては3割が無職で、1・5倍に上っていることが分かった。非正規雇用の割合も全体では19%だったのにネグレクトでは26%。親たちの経済格差がネグレクトにつながっている疑いが浮かんだ。【野倉恵】
調査は08年4月の改正児童虐待防止法施行などを受け、同所長会が実施。同月から08年6月にかけ、全国197カ所の児童相談所のうち195カ所が虐待として対応した8108人について集計した。加害者は実母4308人▽実父2102人▽養父309人▽母の内縁の夫や交際相手203人--など。
加害者側の就労状況を見ると、食事を十分与えないなど子の世話をしないネグレクトや、身体的、性的、心理的な虐待を合わせた全体では、正規就労が30・2%▽無職20・4%▽非正規雇用19・2%--の順。しかし、ネグレクトに限れば無職が30・9%▽非正規雇用26・4%▽正規就労19・3%。無職と非正規雇用の合計は6割近くに達し、全体に比べて1・5倍だった。
虐待の背景とみられる家庭状況(複数回答)は、8108人全体では経済的困難33・6%▽親たちの心身状態に問題がある31・1%▽ひとり親家庭26・5%。一方、ネグレクトに限ると、経済的困難54・1%▽ひとり親家庭41・1%▽親たちの心身状態に問題がある33・8%。全体では3分の1だった経済的困難が、ネグレクトでは半数を超えていた。
調査にあたった元児童福祉司の宮島清・日本社会事業大専門職大学院准教授は「虐待要因はさまざまだが、ネグレクトと親の経済的困窮は深く関係している。行政や周囲は親の体験している困難さや社会的に不利な状況に目を向けないと子を救えない」と指摘した。
毎日新聞 2010年3月8日 東京夕刊