世界
ミニー・ヴォートリン 南京のアメリカ人女神
筒井暁子2003/10/29
日本侵略時、身を挺して中国人を助けた女性
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中国ではアメリカの「慈悲の女神」として知られているミニー・ヴォートリン（1886〜1941)の伝記『American Goddess at the Rape of Nanking』の著者フアリン・フー博士 からメールが届きました。ミニー・ヴォートリン記念奨学基金設立が具体的に動き出したということでした。 ミニー・ヴォートリン記念奨学基金は、中国の金陵女子大学の奨学金を必要をする学生に支給されます。ミニー・ヴォートリン記念奨学基金は第2次世界大戦中に金陵女子大学に避難していた1万人以上の女性と子供達を日本の軍人達から守った無名の偉大なアメリカ人ヒロインの勇気に対するの永遠の敬意を表すために設立されました。また、ミニー・ヴォートリンが生涯に渡って献身した中国の女性の高等教育を援助するためのものです。 日本でもあまり知られていないミニー・ヴォートリンですが、ミニー・ヴォートリンの伝記は、1997年にフアリン・フー博士によって中国語で出版されましたが、2000年、同氏による英訳版が『American Godess at the Rape of Nanking : The Courage of Minnie Vautrin』という題で出版されました。 ミニー・ヴォートリンは1886年、イリノイ州の小さな 村セコアで鍛冶屋の長女として生まれました。高校の教師になったミニーは1912年にthe Foreign Christian Missionary Societyから宣教師として中国の合肥に渡り、最初の2年間は中国語の修得に専心しました。その地で、ミニーは中国の女子教育の必要性を痛感し、生涯を中国の女性の地位向上に献身することを決意し、女子中学校を創立しました。 1919年、中国で女性の高等教育を推し進めたいというミニーの願いがかなって、女性の宣教師達によって創設され始めていた女子大学の一つの金陵女子大学に学長代理として迎えられ、その後に正式な職員になりました。「金陵」とは南京の意ですが、ミニーは、金陵で女性の教育、自立の他に近隣の貧しい人々の生活改善のために尽くしました。 中国に渡って以来、中国の内政の不安定さや内乱/内戦を見て既に心を痛めていたミニーですが、1931年に始まった日本の中国侵略は彼女の心痛を極度の精神状態に追い込むことになりました。 1937年、日本侵略軍によって南京大屠殺(ナンジンダトウシャ)が繰り広げられました。もともと南京に残る決心をしていたミニーは、アメリカからの帰国命令を拒否し、南京国際安全地区委員会の一員として、当委員会により女性と子供達の特別避難所に指定された金陵キャンパスで、非難民の救援活動に尽力しました。 当時、外国人の存在が唯一の日本軍人からの暴虐からの防波堤だったといわれています。ミニーは、大人数の避難民の食事健康管理のための手配をし、自らし尿処理にまで参加し、また、瀕死の中国人軍人の手当のヴォランテイアをしたり、避難民の行方不明になっている肉親男性の捜索や家財 の保存のための援助も行いました。中国人職員が頻繁にやってきて報告する日本軍人のキャンパス侵入の度に現場へ走り、ある時は日本軍人に激しく殴られるというような経験をしても、ミニーは決して怯みませんんでした。 日本侵略の残虐を目撃し、深い悲しみと激しい憤りの中で、中国人避難民を守るために奔走したミニーは、睡眠や食事の時間の不足うえに極度の緊張が続いた結果、心身供に消耗しきってノイローゼになりました。 1940年5月14日、治療と回復を願う友人達の説得により、一時アメリカに帰国するため、ミニーはマギー牧師等と南京を離れました。周囲の人々はすでに自殺傾向のあったミニーを心をこめて見守り世話を続けていたのですが、翌1941年5月14日、他の人たちの負担になりたくない、自分は人生の失敗者だという内容のメモを残して自ら命を絶ちました。 ミニー・ヴォートリンは南京大屠殺が起こっている時、日本の女性達が南京で今起きていることを知ったらどうするだろうかと思い続けたということです。 私の娘の学校は、中国のハルビンや広島に姉妹校があります。 私は日本で生まれ育ったアメリカへの移民として、日本の侵略戦争の過ちが二度と繰り返されないように、その真実を率直に学ぶことに努力し、自分の娘達も含めて広く伝えなければいけないという気持です。「ミニー・ヴォートリンの日本の女性達への問い」を考え続けていきたいと思います。 |
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