「九州には骨っぽい首長がいるんだな」と感心してくれる人が全国にどれほどいるだろう。鹿児島県阿久根市の竹原信一市長と福岡県添田町の山本文男町長が競うようにニュースを発信中
▼刑事被告人となった山本町長については裁判でも書く機会がありそう。きょうは竹原市長について書きたい。「張り紙をはがした職員を懲戒免職」「障害者に差別的言動」「マスコミ取材を拒否」などと報道されてきた
▼一昨日からは「傍聴席に報道陣がいるから議会には出ない」が加わった。その間、差別的言動問題は「阿久根市長旗」を冠した高校駅伝大会への出場を有力校が辞退する事態に発展した
▼竹原市長は昨年、別の問題により不信任決議案を可決され、出直し市長選で再選されている。強気の姿勢の裏には、昨年の経緯を踏まえての自信めいたものもうかがえる
▼首長が持つ権限は絶大だ。強力な指導力による個性的な地域づくりを想定している。権限の使いどころを間違えることは想定されていない。批判を許さずに首長権限を行使し続けることもできる
▼市民の間からは「独裁者」の声も聞かれる。市長は最近出した自著の題をあえて「独裁者」にした。独裁者の定義には「全権力を掌握して支配する人」(国語辞典)もあれば、「無政府状態なる疫病よりも、専制政治なる悪疫のほうを選ぶ一国の長」(ビアス著「新編・悪魔の辞典」岩波文庫)というのもある。
=2010/03/06付 西日本新聞朝刊=