「モーグルW杯第8戦」(7日、福島県猪苗代町)
バンクーバー五輪4位の上村愛子(30)=北野建設=が今季初優勝。W杯通算10勝目を飾った。2位は同五輪銀メダルのジェニファー・ハイル(26)=カナダ、3位は同銅メダルのシャノン・バーク(29)=米国。伊藤みき(22)=中京大=は7位、村田愛里咲(20)=北翔大=は13位、里谷多英(33)=フジテレビ=は転倒した。6日に予定されていた1試合が濃霧のため順延。2試合を行う予定だったこの日も濃霧のため、女子の1試合だけ開催した。
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W杯10勝目は、いきなり決まった。濃霧で中断を挟みながらの予選は上村がトップ。続く男子予選が、やはり濃霧で中断している最中だった。主催者側が女子決勝の開催を困難と判断し、予選=決勝とすることを決定。「女子の優勝は上村愛子」。場内にアナウンスされ、上村は両手を振って歓声に応えた。
「10勝目はうれしいですね」と快挙を喜んだ。バンクーバー五輪銀メダルのハイル、銅メダルのバークを左右に従えて立つ、表彰台の中央。「このメンバーで一番真ん中に自分がいるのが信じられない」と格別の思いを口にした。
五輪はメダルに届かなかった。「気持ちが抜けた状態だった」。「出るか出ないかギリギリまで悩んだ」。複雑な思いで立ったスタートライン。日の丸が見えた。声援が聞こえた。「“転んでもいいや”ってくらいの気持ちで行けた」‐。
開き直りは、持ち前の世界一のスピードを取り戻させた。「スピードに勝手に乗ってしまった。その後、練習でもないいいポジションに(体勢が)入った」。唯一30秒を切る28秒99。タイム点で大量リードを奪って勝ちにつなげた。五輪の滑りを「攻める姿勢が足りなかった」と振り返る。昨年の世界選手権を制した得意の急斜面で、五輪でしたかった滑りを披露できた。
胸中は揺れている。最後の猪苗代でのW杯かを問われて「母にも、“もしかしたら、そうかも”って言ってきた」と明かす。一方で「(去就は)まだ決まっていない。コーチや所属先に相談して決めたい」と言う。
「みなさんが愛子の滑りを見たいと思ってくれればいいなと思う」。最後のW杯かもしれないその滑りを、ファンの目に焼き付けた。