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エコナビ2010:高速割引財源、建設に転用 「国費投入」に批判も

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 国土交通省は4日の政策会議で、普通車の「休日上限1000円」など高速道路料金の割引などに充ててきた財源を高速道路の道路建設に転用できるようにする法改正案について、与党議員に説明した。今国会に近く提出する。建設推進を求める民主党の要望を受け入れたものだが、道路会社の道路建設に国費を投入しないとしてきた従来方針の転換に批判が出るとみられる。高速料金は全体として値上げされるため、利用者の反発も予想される。【位川一郎】

 ◇当面は4車線化工事に

 改正されるのは道路整備事業財政特別措置法。同法は従来、08年に税金3兆円を投入した「利便増進事業」の使途を、「休日上限1000円」など道路会社による料金割引と、スマートインターチェンジ(高速道に簡単な料金所を付けた出入り口)整備の二つに限っていた。

 だが、改正案では(1)渋滞解消のための車線の増設(2)サービスエリア、パーキングエリアの駐車場整備(3)既存の高速道路間を連絡する高速道路の新設、改修(4)スマート以外のインターチェンジ、ジャンクションの整備の4項目をメニューに加えた。

 同省は当面、昨年の国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議=今後廃止)で決まったものの財源がなかった4車線化工事6区間などに適用する見通し。

 高速道路のとぎれた区間をつなぐ工事についても、社会資本整備審議会でチェックした上で、利便増進事業として建設される可能性がある。

 一方、国交省は高速道路のあり方を6月までに抜本的に見直す予定。不採算の高速道路を国直轄事業として建設する「新直轄事業」を廃止するか▽国・地方と道路会社が建設費を出し合う「合併施行」方式をどう見直すか▽道路会社などの組織を改編するか--などがテーマになる見込みだ。

 ◇料金値上げへ 利用者は反発

 民主党は従来、新規建設は抑制し、必要な道路は税金で造ると主張してきた。しかし、小沢一郎幹事長は昨年12月、高速道路会社による高速道路整備を進めるため、「休日上限1000円」の財源である「利便増進事業」の抜本的な見直しや、不採算の高速道を国直轄事業として建設する「新直轄事業」の廃止などを求めた。

 前原誠司国交相が「高速道路会社にお金を渡して会社が整備するというのは(民主党内で従来)まったく議論していない」と述べるなど、国交省は当初、この要望に反発していた。だが、今回の法改正で、結局、党要望を受け入れた形になった。

 馬淵澄夫副国交相は4日の会見で、料金割引財源の建設費への転用が予算措置を伴わないと強調し、「新たな国費の投入ではない」と釈明した。だが、新たな支出がないのは、既に道路会社の借金を肩代わりする形で、国が3兆円を支援しているため。この資金を建設費に回すなら、事実上は国費を投入したのと同じといえる。道路予算の大幅削減を強調しておきながら、予算計上されない建設資金を捻出(ねんしゅつ)する国交省の姿勢に批判が出る可能性がある。

 新直轄事業は、総事業費の4分の3を国、4分の1を地方が負担する。「新直轄を廃止し、道路会社が建設すれば地方負担がなくなる」(道路会社幹部)とみられ、夏の参院選をにらみ、小沢氏が地方の首長らの取り込みを狙ったとの見方も出ている。

 一方、国交省は現行の「休日上限1000円」などの割引を廃止し、車種別に新たな上限料金制度を導入する予定だが、具体的な料金体系の決定が遅れている。このため、6月に始める「無料化の社会実験」と同時に実施できなくなる可能性もある。「法改正で割引財源が減るため、新料金は必ず値上げになり、利用者が反発する。選挙を考えるなら、実施を遅らせた方がいいのではないか」(道路関係者)との指摘がある。

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 ◆高速道路利便増進事業の拡充メニュー

 <既存のメニュー>

・料金の引き下げ

・スマートインターチェンジ(IC)整備

 <今回追加のメニュー>

・既存の高速道路間を連絡する高速道路の新設、改築

・スマート以外のIC、ジャンクションの整備

・車線の増設

・サービスエリア、パーキングエリアの整備

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 ◆高速道路整備をめぐる民主党の10年度予算重点要望

 (昨年12月16日提示)

 (1)10年度において、高速道路会社による高速道路整備を推進するため、利便増進事業を抜本的に見直すとともに、いわゆる新直轄事業を取りやめ、これに見合う額を国が高速道路会社に対し支援する。また所要の法律を手当てする。

 (2)11年度以降の新たな高速道路建設促進の枠組みとして、全国統一の料金設定、国の高速道路建設の高速道路会社への一本化をはかるとともに、地方自らが、必要とする高速道路建設を行うことができるようにするための国の支援策を検討し、来年6月中に政府として成案を得る。

毎日新聞 2010年3月5日 東京朝刊

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