【神奈川】放置自転車増加? 武蔵小杉駅周辺 横須賀線新駅 13日開業で2010年3月6日
JR横須賀線の新駅が13日に開業する武蔵小杉駅周辺では、地域活性化に期待が膨らむ一方で、違法駐輪問題の悪化が危惧(きぐ)されている。全国でも放置自転車が多い川崎市内でも、一帯は特に自転車が密集するポイントの一つ。新駅開業で利用者増が見込まれる地域の自転車対策を追った。 (酒井博章) JR南武線武蔵小杉駅西口近くのスーパーでは、開店前の早朝から買い物客用駐輪場が埋まり始める。駅を利用する通勤客らの自転車だ。近くの量販店の駐輪場も同様で、買い物客が訪れる昼すぎには、あふれた自転車が周辺の歩道や花壇のすき間などをびっしりと埋め尽くしていた。 市の委託で違法駐輪の自転車を邪魔にならないよう並べ直していた男性(62)は「いたちごっこですよ」と嘆息する。 市建設局自転車対策室が昨年、市内五十四駅で行った放置自転車などの実態調査では、武蔵小杉駅周辺は一日千十六台で、市内で五番目に多い。ちなみに市内最多は川崎駅東口周辺。内閣府の二〇〇七年度のまとめでは、「京急川崎駅周辺」として全国二位を記録。東急元住吉駅周辺が全国十位で、違法駐輪は川崎全体の課題にもなっている。 武蔵小杉駅でも周辺には民営を含めて駐輪場が九カ所あり、自転車とバイクを約三千七百台収容できるが、住民が増え続ける地域だけにニーズに追いついていない。 ただ、同駅周辺の放置自転車問題に取り組む市民グループ「自転車と共生するまちづくり委員会」の芳賀誠委員長(74)は「十年ほど前は、救急車も通れないほどだった。大幅に改善されました」と振り返る。 〇一年から、住民らが月に二回、駅周辺を巡回、違法駐輪を注意するなどマナーを守った自転車利用を呼び掛けている。地道な活動の結果、最近は通行を妨げる傍若無人な駐輪は激減したという。 JR東日本横浜支社によると、新駅の利用者は乗り継ぎ客も含め約七万人が見込まれる。このうち新駅の改札から乗り込む利用客を約一万五千人と推測。市ではこの数字をもとに約千五百台分の駐輪場を駅前に設けた。一九九八年の国の調査で、武蔵小杉駅からの乗客の一割が自転車やミニバイク利用者というデータに基づいているという。市まちづくり局小杉駅周辺総合整備推進室では「新駅周辺には商店街はなく、駐輪場を使うのは駅利用者がメーンのため、まかなえると想定している。ただ、やはり始まってみないと分からない」と説明する。 中原区も新駅開業に合わせて、自転車の整備誘導員を臨時に増員して備える。 芳賀さんは「一時的に、止めきれない自転車が集まる場所が出てくるかもしれない」と危ぶむ。その一方で「これまでの活動で、利用者のモラルは確実に上がっている。利用者の良識を信じています」と力を込めた。
|