Baa 優良企業予備軍
【バランス型】
(仕事4.0、生活3.3、対価4.6)
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通常、合格するには3千時間の勉強量は必要といわれる難関資格「公認会計士」。雇用不安から手に職をつけたいと考える学生やビジネスパーソンの間でも人気となり、出願者数は過去10年で倍増した。2000年前後までは1千人以下だった合格者数も、「内部統制監査」「四半期報告書」制度などを進める金融庁の方針によって、2008年には3,024人と過去最高を記録。その最大の就職先が、業界最大手の新日本有限責任監査法人だった。
【Digest】
◇基準が役人の裁量で変わるいい加減さ
◇『なんで会計士が営業しなきゃいけないんだ』
◇仕事がラクなのに、この給与はいい
◇JALのグレー決算「通常では考えられない」
◇「今までは認められたのに、どうして!」
◇年次主義の硬直的な報酬制度
◇「PMDP」査定の実際
◇「最後は年収3千万円」のよい時代
◇確認状が飛び交うシニアの1日
◇「どうでもいいことにこだわる人」に向いてる
◇マネージャになるとゴルフ
◇カツマ時代からの変化
◇基準が役人の裁量で変わるいい加減さ ところが、2006年以降の4年間で制度変更は一切ないにもかかわらず、2009年の合格者数は前年比39%減の2229人に絞られてしまった。出願者数は過去最高の2万1255人となっており、同じ基準・同じ難易度ならば約4割も減る理由を説明できない。
金融庁が、自らの政策や景気動向を見て、年によって合格基準を上下するという、相変わらずの裁量行政であり、資格としては極めていい加減なものだ。
確かに今合格者が増えても、実務経験を積む場は足りない。2008年秋のリーマン・ショック以降の不況で、企業が支払う監査報酬も削減対象となり、監査法人の業績が全体的に悪化。最大手の新日本でも、2009年6月期決算で13億600万円の経常赤字に転落している。抱える会計士も、仕事がなく余っている状態だ。
本来なら採用ゼロにしたいところだが、業界最大手の手前、2009年は226人だけ採った(前年比66%減)。大手4法人の合計でも1087人と、前年の2060人から半減。受け入れ先がないことが分かっているから合格者数も減らしてしまえ、という身勝手な論理がまかりとおる様は、まさに中世西欧のギルドを思わせる。
◇『なんで会計士が営業しなきゃいけないんだ』
「アンアサイン(クライアント業務に入っていない)の場合、Web研修を受けたり、自習したり、翌週の仕事が決まっている人は予習をしたり。雑誌を読んだり、やることがなくなって寝ている人もたまにいましたね」。新日本監査に最近まで勤めていた中堅の元社員によれば、2年ほど前から、そんな光景が目立つようになったという。
場所は、監査部門が置かれている東京・内幸町の日比谷分室。そのスタッフルームは、各自の机が決まっていないフリーアドレス制になっている。会計士は顧客先の会議室で仕事をするのが一般的なので、全員分の机は用意されていないのだ。
だが、自宅勤務の制度もない。よって9時半~17時半の定時は、出勤していなければならない。勤怠管理のため、アンアサインの人は、遅くとも10時までに出社し、「業務報告書」の用紙を貰って、それを17:30に書いて提出することが求められる。なぜ10時までに来るのかというと、この紙には偽造防止のため連番が振られており、朝10時になると用紙が撤収され、貰えなくなるからだ。
「一昨年まで、1月と2月は、スタッフルームに人がいなくなるのが当り前でした。でも2009年は、12月決算の1月と2月、3月決算の4月と5月の繁忙期でもスタッフが余っていることもあった。繁忙期が過ぎたら、座るところがないほど人で溢れていた」(元社員)。6400人というマンモス所帯だが、そのうち2007年夏に吸収合併したみすず監査法人(約1800人)の分と2006年以降の大量採用時代に入社したスタッフが、そのままだぶついている感じだという。
不況で監査報酬を下げられ、赤字転落し、人が余っている。一般企業ならばリストラ・経費削減、さらには余剰人員で営業、といったところだが、これまで「営業」という概念がなく、人が余った経験もほとんどないのが大手監査業界。
「『なんで会計士が営業しなきゃいけないんだ』という意見を平気で言ってるパートナーもいた。やっとIFRS(国際会計基準)などをネタに、ちょっとずつやり始めた程度です」(元社員)
付け焼刃的な細かい経費削減のほうは、急に始まった。2009年秋には、福利厚生の一部だった自動販売機のミネラルウォーターも50円から100円に値上げ。紙コップのウォーターサーバーも、1フロア4つから、2つに削減されたという。
◇仕事がラクなのに、この給与はいい
人余りの原因の1つが、2008年度(2009年3月期)からの監査業務の急増(内部統制制度の開始や四半期決算の導入)に備えて、2006年以降、採用を急増させたことにある。
監査法人は毎年、秋の会計士試験の合格者を12月に採用する。新日本の採用数は、2004年280人、2005年350人、2006年500人、2007年770人、2008年665人、2009年226人で、2006年6月の金融商品取引法成立以降に、激増させたことが分かる。
「2005年以前は、人が足りなくて、月190時間残業を自慢する人もおり、とにかく激務。それで、一般企業に転職する人もいた。でも、2006年入社くらいからは人数も増えて1人あたりの負荷は減り、『仕事がラクなのに、この給与はいい!』ということで、辞めなくなったんです」(元社員)
大量採用のうえに離職率が下がり、金融商品取引法に基づくJ-SOXの導入対応もひと段落。そこに不況が来て監査報酬を減らされ、これまで10人必要だった仕事に8人しかアサインできない。
そこで、次のネタがIFRS(国際会計基準)だ。日本では2015年までに上場企業に義務付けられる見通しなので、また会計士の仕事を増やすことができる。なにやら金融庁のマッチポンプで不要なコストが監査法人に流れている感は否めないが、規制強化の流れの中で、会計士のニーズは手堅そうだ。
◇JALのグレー決算「通常では考えられない」
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新日本のキャリアパスと報酬水準推移。
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実際の仕事内容は、パートナー単位で回っている。監査法人では、パートナー(共同経営者)のことを「社員」と呼び、2009年9月現在、740人。残り5600人余りの正社員は、「使用人」または「職員」だ。社内では「マネージャー」、「スタッフ」などランクで呼ばれている
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S(シニア)の給与 |
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昨年秋に改訂された新給与体系でシンプルになった
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