【コラム】植林すると住民が死亡する北朝鮮(下)

 さらに1990年代の食糧難後には、山を切り開いて畑を開墾することが生存のための手段となった。多くの山はすでに畑となり、深い山奥にも畑がどんどん開拓されている。山林保護員らは政府から大きな権限を与えられているが、いくら取り締まっても、住民にとっては生きるか死ぬかの死活問題のため、開墾による木材の伐採は深刻化する一方だ。

 かつて、韓国政府が北朝鮮に対して植樹の支援を行うと提案すると、北朝鮮は「木を植えさせてやるから食糧をくれ」と要求してきた。これには韓国側もあぜんとした。韓国側が山林の緑化を双方の交流協力事業の一環として推進する、という趣旨は良い。しかし、これはおそらく税金を浪費するだけに終わり、結果的には北朝鮮住民の反発を招くだろう。現在、北朝鮮各地ではげ山と化した山々は、北朝鮮政府に緑化の能力がないために放置されているのではない。それよりも住民たちが飢え死にしないために木を伐採し、山の中に畑を作っているという要因の方が大きい。

 食糧問題が解決しない状況では、山の中に作られた畑に木を植え、それを当局が監視、監督しようとすれば住民の怒りはさらに大きくなる。そのため北朝鮮の山林緑化を行うには、まず石炭などのエネルギー支援を先に行い、その上で木材の伐採を減らしていくことの方が先決だ。最終的に住民たちの食糧問題が解決すれば、山林の緑化も可能になるだろう。金正日(キム・ジョンイル)政権が態度を変えて改革・開放に乗り出すならば、食糧問題とエネルギー問題は直ちに解決するに違いない。北朝鮮のはげ山緑化事業は、金正日政権が変わらない限り、何の改善策も見出すことはできないだろう。

東北アジア研究所=姜哲煥(カン・チョルファン)研究委員

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る