長妻昭厚生労働相は10日、75歳以上が対象の後期高齢者医療制度(後期医療)の廃止時期を12年度末とし、13年度から新制度に移行させる方針を固めた。高齢者医療を抜本的に改めることをめざしているため、保険料を徴収する自治体の準備期間が必要と判断。有識者らを交えた検討会を近く立ち上げ、新制度の設計を本格的に検討する。
長妻氏は、就任直後に後期医療の廃止方針を表明。10日に厚労省幹部らと省内で協議し、現行制度を即時廃止して以前の老人保健制度に戻すことは断念。現行制度は新制度が立ち上がるまでは続ける方針を確認した。
新制度移行まで約3年半かかるのは、現行制度で保険料徴収の窓口となっている市区町村が大規模なシステム改修に対応しなければならず、高齢者らに新しい仕組みを徹底して説明する必要があるからだ。今後2年程度で準備を進め、11年度中に後期医療廃止を含む関連法案の国会成立をめざす。
老人保健制度から後期医療への移行では、制度づくりに10年以上かかり、関連法が成立してから実施まで2年近くを要した。
長妻氏は9日の記者会見で新制度移行について、「拙速に物事を進めると患者、保険者、自治体が混乱する」と強調していた。制度設計は外部の有識者や自治体関係者でつくる検討会に委ねるが、年齢による区別をやめ、急激な保険料負担増を抑えることなどを基本方針とする。
民主党はマニフェスト(政権公約)で、サラリーマンによる被用者保険と自営業者らによる国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域保険として一元化することを掲げているが、今後の高齢者医療の見直しをふまえ、再編がどう進むかは未知数だ。
一方、厚労省は新制度移行までの間、低所得者で最大9割保険料を軽減していることなど、現行の負担軽減措置は継続する。このため、来年度概算要求に3千億円程度を盛り込む。また、来年度は2年ごとの保険料改定に当たっており、保険料上昇を抑えるため公費を投入する検討も始めている。
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〈後期高齢者医療制度〉 75歳以上の後期高齢者の医療を別建てにした制度で、昨年4月に導入された。公費で5割、現役世代の保険料で4割、都道府県ごとに設定される後期高齢者の保険料で1割をまかなう。高齢者と現役世代の負担割合を明確にすることで、医療費の抑制を図る狙いがある。対象となる高齢者の不満を受け、低所得者などに負担軽減措置が取られている。保険料の年金からの天引きに反発が強く、今年4月から原則として口座振替か天引きか選べることになった。