九州新幹線長崎(西九州)ルート(博多-長崎)に、フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の導入を計画している国土交通省は開発断念の事態を想定し、在来線特急を運行させる検討に入った。FGTの開発が難航し、今夏までの技術確立が困難視されているためだ。国交省は、在来線特急では最高となる時速200キロで列車を走らせ、時間短縮効果を確保したい考えだが、事業効果を疑問視する声も上がりそうだ。
長崎ルートは、博多-新鳥栖間で九州新幹線鹿児島ルートを、新鳥栖-武雄温泉間では在来線を利用。建設中の武雄温泉-諫早間と、未着工の諫早-長崎間は新幹線規格で整備する想定になっている。線路幅の異なる在来線と新幹線の軌道を直通で走ることになるため、車輪幅を変えられるFGTの開発が不可欠になっている。
FGTは昨年12月の走行試験で目標時速の270キロを達成したが、急カーブでの安定走行に課題が残っている。車体の軽量化が必要だが、国交省は「現時点では技術的に困難」とみている。
開発を断念した場合、国交省は長崎ルート全線を在来線の線路幅とする方針。新幹線を利用予定の博多-新鳥栖については(1)JR鹿児島線を利用(2)新鳥栖で鹿児島ルートから乗り換え--を検討するという。新幹線規格での整備を前提に08年に着工した武雄温泉-諫早間は、整備は現状のまま続け、線路幅のみ在来線と同じにする「新幹線規格新線」(スーパー特急)とし、諫早-長崎間は在来のJR長崎線を利用するとの案も浮上している。
こうした案が採用されれば、FGTを導入しても26分しかない時間短縮効果が、さらに悪化するのは必至だ。
FGTは、スペインで実用化された例がある。日本での研究開発は94年から始まり、これまで240億円以上が投じられた。
FGTを巡っては、前原誠司国交相が昨年10月、長崎県の金子原二郎前知事に開発への懸念を表明。三日月大造・国交政務官は事業仕分けの際に「2010年度に見極めたい」と述べていた。【門田陽介、川名壮志】
2010年3月3日