中日スポーツ、東京中日スポーツのニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 中日スポーツ > サッカー > 蹴球探訪 > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【蹴球探訪】

実現しちゃうかも W杯予選アジア東西分割?!?

2009年3月5日

先月11日の豪州戦は寒かった

写真

 オフ明け直後の1月から、いきなり「公式戦」が組み込まれるアジアのサッカーカレンダーに対する日本代表の“悩み”は大きい。2010年ワールドカップ(W杯)アジア最終予選で最大のヤマ場といわれた2月11日のオーストラリア戦まで、代表チームは始動間もない選手たちのコンディション調整で苦戦した。代表が例年、苦戦を強いられるオフ明け。究極の解決策は「アジア分割」ともいわれるが、その実現性はいかに−。 (上條憲也記者)

◆日本代表の苦悩

 親善試合1試合を含む4戦を消化した今季。日本代表が最も動けなかった試合が1月28日のアジアカップ予選第2戦のバーレーン戦だろう。年明けから湾岸諸国ナンバーワンを決めるガルフカップを戦ったバーレーンはフィジカル万全。2010年W杯出場権も同時に争う日本の難敵だ。

 その1週前の同杯予選初戦イエメン戦こそ、実力差に加え、「若手組」の意欲で日本は勝ちきった。だが、バーレーン戦は最低2週間と義務付けられたオフが明けた「主力組」の合流初戦。メンタル面を含め“寝起き”の体に、シーズン中の研ぎ澄まされた感覚はなかった。

 国際サッカー連盟(FIFA)が定める09年最初の「Aマッチデー」に行われたW杯予選の豪州戦(2月11日)には「海外組」が参戦。1月10日の始動から1カ月がたち、さすがにバーレーン戦より内容は向上したが、0−0で引き分け。これまで指摘されてきた「詰めの甘さ」とともに、あらためてコンディション調整の難しさが浮き彫りになった。協会関係者が日本代表の苦悩を代弁する。

 「代表チームは1カ月間選手を集めたが、コンディション、熟成度の差がある3グループが存在する難しさも抱えていた。日本にとってシーズン立ち上げの時期は毎年の課題」

写真

◆アジア分割?

 06年の豪州のアジアサッカー連盟(AFC)加盟以降、最大時差8時間の東西南北に広がるアジアが一つにくくられることになった。欧州のシーズンに近い西アジアと、日本のような春秋制の国とは時期によってコンディション差があるのも当然。1月はその典型だ。

 一方でW杯予選以外の公式戦はパンク寸前のFIFAカレンダーの隙間に組み込まれる。AFC理事を務める日本協会の小倉純二副会長は「アジアのつらいところは7、8月がまったく使えない点。西がものすごく暑いから。7月にマッチデーを入れてと言われても、今それは国際的に通用しない。その分が1月になっている」と説明する。

 来年も1月にアジア杯予選が2試合組まれ、その本大会となる11年アジアカップのカタール大会も1月開催。12年ロンドン五輪アジア予選は10年1月からといわれる。ある関係者は「暦をどうするか、シーズン制をどう考えるか。問題を早期に解決するならアジアを分けるしかない」と指摘する。

◆アイデア

 「アジア分割」は既にAFC内の委員会が検討事項としており、小倉理事は「オーストラリアがアジアに入った頃から分割話は出ている」と明かす。背景にあるのは例えば勢力図の変化だ。西アジアでは代表チームの実力、協会の政治力で、サウジアラビアの一強時代が長く続いていた。サウジが突出し過ぎていたため、東西のアジア分割に現実味はなかった。しかし、今は湾岸諸国が台頭し、「西」のバランスが取れてきた。また地域で気候の差異を持つアジアゆえ、寒暖差がもたらすトラブルの解消も視野にある。

 AFC内にあるという分割案の一例を挙げてもらった。加盟国・地域「46」のうち日本が属する東アジアと東南アジアを合わせた「21」を東。中央、南、西を合わせた「25」を西とする。オセアニア連盟との統合もシミュレーションした場合はオセアニア地域は東、対する西に湾岸に近い北アフリカを統合するアイデアもあるという。アフリカが再編に加わる現実的にはゼロに近いが、宗教的側面からも問題ないといわれる。だが「案は出ているが、なかなか現実味を帯びないのが実情」と続ける。

◆アジアの現実

 「FIFAではまだ深刻な話題にとらえていない部分がある。もっと“対立”をみせないといけないのかも」。小倉理事によると、2月11日のW杯予選で、北朝鮮のホームで0−1で敗れたサウジは苦戦の要因に「極東の寒さ」を挙げ、AFCに抗議した。アジア新興国同士のAFCチャレンジ杯のプレーオフでは、3月にモンゴル−マカオ戦が組み込まれているが、ホームのモンゴル側が「寒すぎて観客が来られない」ことを理由に、猛反対しているという。だが、こんな騒動もFIFAからは問題にされないレベルだそうだ。

 仮にアジア再編となっても意外な問題がある。フィジー、ニューカレドニア、タヒチ、クック諸島、ツバル、ソロモン諸島、バヌアツ、サモア、トンガ、米国領サモア。10年W杯のオセアニア予選にエントリーしたオセアニアが東アジアと仮に統合されれば、W杯予選やアジア杯予選で日本が戦う相手となる。だが「乗り換え時間を考えればオセアニアへのフライトはものすごく大変。現状ではオセアニア同士で予選を戦うのも大変なほど。ニュージーランドに行くのは問題なくても、それ以外のアウェー戦はサウジアラビアに行く方が楽だろう」と小倉理事は苦笑い。アジアの苦悩は続く…。

 この企画、記事に対するご意見、ご感想をメールでお寄せください。shukyu@tokyo-np.co.jp

 

この記事を印刷する

中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ