保護観察期間にある仮出所者と月数回面接し、生活指導をする保護司が県内には約950人(定員1010人)いる。だが、限られた期間と回数では指導が行き届かない。仮出所者を受け入れるため、法務省が福島市狐塚に建設した「自立更正促進センター」は、地域住民の反発を買っているが、開所されれば指導を充実させることができるとの声もある。
福島市の男性保護司(61)は「刑期満了で出所すれば、いきなり社会に放り出される。指導管理下にある仮出所は、社会復帰へのいい助走期間。身元引受人がおらず、従来は仮出所できない者を受け入れるセンターは必要だ」と訴える。
06年の統計で、刑期を終えた者は全国で約1万5000人。このうち相当数が、家族ら身元引受人や受け入れ施設がないため仮出所が許可されなかった。満期出所者の半数が5年以内に再犯で刑務所に戻ると言われ、仮出所した者の3割に比べて高い。
出所後、多くは職もなく生活を始める。男性保護司は「立ち直る意欲があっても、ただでさえ世間の風当たりは強く、就労は難しい。助走がなければなおさらだ。困った末にまた罪を犯すのではないか」と指摘する。
受刑者が仮出所できても、刑期が終わるまでの保護観察期間は平均6カ月しかない。須賀川市の60代の女性保護司は、薬物犯罪で服役した男性を担当したが、保護観察が終わった直後にまた逮捕された例を見ている。「仮出所の期間が短くて会える回数が少ないため、なかなか信頼関係を築けない。あなたの味方だよ、という気持ちが伝わらない」と嘆く。
センターなら仮出所者は毎日、常駐している保護観察官と顔を合わせるため、「更生意欲もよりわくのではないか」と期待する。
保護司はそれぞれ、さまざまな職業と経歴をもつ。法務省の福島保護観察所は、県内の地区ごとに年6回の研修会を開いているが、経験年数や知識も異なるため、指導力にも差がある。
須賀川地区保護司会は08年4月、須賀川市に「更生保護活動サポートセンター」を開所した。個別に活動することが多い保護司同士が経験を話し合ったり、知識を交換し合ったりして活動を充実させようとしている。就職前の健康診断の料金を払えない仮出所者を担当した保護司が、別の保護司から市が相談を受け付けることを教わったりしたという。仮出所者との面接もする。
同会の相良嘉数(よしかず)会長(75)は「犯罪者が出入りしていると誤解している人もいるが、皆さんに活動内容をよく知ってもらいたい。保護司が連携して児童生徒の非行防止にも役に立つ活動をしたい」と話す。東北地方では、同様の場所は2カ所しかない。
法務省は、福島市に建てたセンターに「福島更生保護会館」を置き、保護司の研修や活動拠点の場とするだけでなく、市民の非行相談も受け付けることにしている。センター開所を待つ保護司も多い。=つづく
==============
■ことば
刑務所で受刑者の生活態度がよく再犯の恐れもないと考えられ、刑務所外での更生が望ましいと判断される場合に許される。有識者や法務省職員による地方更生保護委員会が受刑者との面接などで決める。刑期が満了するまでの仮出所期間中は保護観察が付き、保護司との面接などが義務付けられる。仮釈放中に罰金以上の刑を受けたり、行方が分からなくなったりすると取り消される。
仮出所者や執行猶予判決を受けた者と定期的に面接し、生活指導などをする。また、仮出所者の身元引受人が暴力団関係者ら規定に反する人物でないかを調べたり、仮出所者の身元引受人がいない場合は受け入れ施設を探したりする。保護司法によると、社会的信望のあることなどが条件。地裁所長や地検検事正らの選考会の答申などをへて法相が委嘱する。非常勤の国家公務員で無給。交通費など一部経費が支給されるだけの実質ボランティア。任期2年。
毎日新聞 2010年3月3日 地方版