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“計量失敗”が映す、各国ボクシング事情。

前田衷 = 文
text by Makoto Maeda

 ウェイト・オーバーで失格とはひでぇな。ボクサーとして恥ずかしいよ」(原田政彦・日本プロボクシング協会会長)

 往年の名王者ファイティング原田をこう嘆かせたのは、10月9日WBC世界L・フライ級暫定戦の前日計量でリミット48.97kgを1.2kgもオーバーして失格となり、王座を剥奪されたワンディ・シンワンチャーだ。これで挑戦者嘉陽宗嗣が勝てば新王者となるはずが、沖縄のホープの奮闘及ばず、3―0判定負け。7回には左のダブルを受けて倒され、アゴを痛めるなど惨々だったのだ。前日の計量時には発熱して半病人状態だったワンディが、一晩で元気回復とは恐れ入る。これも原田さんの時代のように計量が試合当日朝ではなく、事故防止のため前日に改められていたおかげか。タイ選手は体重調節が一概に大雑把で、著名王者でも最初の計量でオーバーすることが珍しくない。1度失敗しても2時間以内に落とせばOKだから、その間に発汗して落とすのだ。それでもたまにはワンディのような失敗もある。日本で行われた世界戦でリングに上がる前に王座を失った第一号は、同じくタイのチャチャイ・チオノイだった(1974年の対花形進戦)。

 日本選手のほとんどは、時に無理を厭わず減量して契約体重以下にする、落とす努力をするものだが、近年世界戦で体重調節に失敗する選手(ほとんどが王者)が後を絶たない。ワンディ―嘉陽戦の2日前にラスベガスで行われたWBC世界ライト級戦でも同様の事態が起きていた。王者ディエゴ・コラレスが計量に失敗して王座を剥奪され、試合では挑戦者ホエル・カサマヨールが判定勝ちで新王者になったのだ。コラレスはその前代の王者カスティーリョの2度にわたる計量失敗の被害者だったのに、このざまである。

 コラレスの罰則はベルト剥奪に留まらず、ネバダ州コミッションの規定により試合報酬の20%に当たる24万ドルを罰金として徴収されるという。こんなシステムは日本にはなく、従ってワンディは報酬を丸々受け取ることができた。主催側も試合をしないと言い出されては困るから、強硬な手段もとれない。欧米のプロモーターのように興行保険に入る手もあるが、大方はそんな余裕などなく、結局泣き寝入りするしかないのが現状である。

(更新日:2006年10月26日)

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