【第115回】 2010年03月05日
国民に重税を強いる悪夢
「温暖化対策法案」を急ぐ政府への不信
これに対して、なんらかの形で「25%以上の削減目標」を掲げることに賛成した人はわずか9%に過ぎない。具体的には、「30%以上削減すべき」という人が6%、「25%を堅持すべき」という人が3%だった。
一方、鳩山首相は1月29日に今通常国会の施政方針演説を行い、今回の基本法の策定方針を述べている。
念のため、演説を振り返ると、まず、「ピンチをチャンスと捉える」「変革こそが、必ずや日本の経済の体質を変え、新しい需要を生み出すチャンスとなる」などと前置きして、そのうえで「地球温暖化対策基本法を策定し、環境・エネルギー関連規制の改革と新制度の導入を加速する」「低炭素型社会の実現に向けたあらゆる政策を総動員します」と表明したのだ。
だが、政府・与党は、この基本法の設置が民意に反していることを「意見募集」で知っていたはずだ。つまり、政府・連立与党は民意を無視したのである。
さて、そこで、話を、本論の基本法の内容に進めよう。
削減賛成派でさえ
政府方針に批判の声
政府も後ろめたかったのではないだろうか。一計を案じ、できるだけ民意とかけ離れない法にしようとしたものと思われるフシがあるからだ。
どういうことかというと、やはり1月14日の政策会議に「次期通常国会に提出を予定している法案について」という10ページの資料を出し、そのページを割いて、政府は「地球温暖化対策基本法案(仮称)の概要」を説明しているのだが、中期目標としては、25%削減を明記する一方で、これと併せて「公平かつ実効性ある国際的枠組みの構築や意欲的な目標の合意を前提」とすることを法案に書き込むと記している。他の主要国の温暖化ガス削減策が不十分な場合は、日本も突出しないので安心してほしいというわけだ。
しかし、ちょっと考えてみてほしい。あらゆる政策を動員するはずの国家プロジェクトの基本法に掲げる目標が、他国の動向に左右されるものであり、日本が主体的に決めて取り組むものでないというのである。これでは、策士が策に溺れたようなものだろう。
Special Topics
バックナンバー
- 第115回
- 国民に重税を強いる悪夢 「温暖化対策法案」を急ぐ政府への不信 (2010年03月05日)
- 第114回
- 有料モデルの逆襲はなるのか? 電子版開始に見える日経新聞のジレンマ (2010年02月26日)
- 第113回
- 政治の玩具から抜け出せない郵政改革 参院選睨み、国営回帰目指す国民新党 (2010年02月19日)
- 第112回
- JAL稲盛会長がアメリカン選択を決断した深刻なる理由 (2010年02月12日)
- 第111回
- それでもボルカールールは必要 「大き過ぎて潰せない」まま放置より良策だ (2010年02月05日)
- 第110回
- 再生機構のウィルコム支援の実態は、 ソフトバンクのM&A支援か? (2010年01月29日)
新着トピックス
- 保田隆明 株ニュースの新解釈
- ジャスダックの新しい上場維持基準は、 市場の健全化につながるか?
- 格差社会の中心で友愛を叫ぶ
- 「謎の学費」に悲鳴を上げる親が続出! 高校生ワーキングプア大増殖の真相
- 公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略
- 不況と電子化が業績に直撃! キヤノン&リコーの来し方行く末
- 日本を元気にする企業の条件
- トヨタリコール問題がリスククマネジメントに残した“偉大なる”教訓
- 岸博幸のクリエイティブ国富論
- 金融危機からの復活を目指すアイスランドが描く「ジャーナリズム天国」構想の凄み
- チャンスを逃さない! 今どき「住活」事情 By SUUMO(スーモ)
- 売るにも貸すにも購入時の吟味が必要! 実は計算式でわかる「資産価値が高い街」
- 働き盛りのビジネスマンを襲う 本当に怖い病気
- 通勤途中やプレゼン中に腹痛や下痢に! なぜ緊張するとお腹が痛くなるのか
- inside
- 簡素化で登録組合増を狙う「みらいネット」の再出発
- 献魂逸滴 極上の日本酒を求めて
- 磯自慢――洞爺湖サミットでも振る舞われた、飲み手を魅了し続ける佳酒
ダイヤモンドオンラインplus 知っておきたい価値ある情報
最新の連載一覧
経済・時事
経営・戦略
スキル・キャリア
Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます
- 金融市場異論百出
- 「名称」と「大雪」でサプライズ 米国の公定歩合引き上げ騒動
- 『社会貢献』を買う人たち
- NPOの人材不足は電通が救う? 社会貢献に触手を伸ばす、広告マンたちのホンネ
- 原英次郎の「強い中堅企業はここが違う!」 トップに聞く逆境の経営道
- 段ボール業界随一の原価計算の鬼! アースダンボールに学ぶネット販売の真髄 ~奥田敏光社長に聞く(上)
- Close Up
- リーダー不在で停滞する“後進国”日本のワクチン政策
- 山崎元のマネー経済の歩き方
- 金融マンの肉食系・草食系
- “自律自走する組織”を目指せ
- CIO/IT部門に課せられた最大のミッションを再検証して、ITを戦略ツールに…
- DOL編集部のツイッターを開始
- 最新記事の話題から編集部の日常まで、24時間つぶやきます。フォローよろしくお願いします。
Business information
- 【介護】働きながらの介護を成功させるには――後悔しない親介護
- 【健康】食習慣は大丈夫? 飽食時代の「セルフメディケーション」
- 【募集】「一流の人材」の条件とは? 一流の人材を募る企業、育てる大学院
- 【教育】子どもの理解度に合わせた個別指導で有名校合格実績を上げる学習塾
- 【解決】Windows7、LED照明、クラウド・・・会社を元気にするフェア盛況のわけ
著者プロフィール
- 町田徹
(ジャーナリスト)
1960年大阪府生まれ。神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒。日本経済新聞社に入社後、記者としてリクルート事件など数々のスクープを連発。日経時代に米ペンシルバニア大学ウォートンスクールに社費留学。同社を退社後、雑誌「選択」編集者を経て独立。日興コーディアルグループの粉飾決算をスクープして、06年度の「雑誌ジャーナリズム賞 大賞」を受賞。「日本郵政-解き放たれた「巨人」「巨大独占NTTの宿罪」など著書多数。
この連載について
硬骨の経済ジャーナリスト・町田徹が、経済界の暗部や事件を鋭く斬る週刊コラム。独自の取材網を駆使したスクープ記事に期待!
アクセスランキング
- 2位
- 「引きこもり」するオトナたち
- まじめな話はできるのに世間話ができない ――社会から離脱してしまう人々の実態
- 3位
- 週刊・上杉隆
- 呆れた言論封殺に、姑息な見出し変更 日本の新聞に未来などない!
- 4位
- エコカー大戦争!
- トヨタ車の品質は本当に下がったのか? バッシングの嵐が覆い隠す問題の核心
- 5位
- 湯谷昇羊 不屈の経営者【列伝】
- 42歳で大赤字の結婚式場会社社長に就任 荒療治連発し株主交代、飛躍のステージへ ――ディアーズ・ブレイン社長 小岸弘和
Recommend 話題の記事
- China Report 中国は今
- 環境大国を世界にアピールする 上海の新エネルギー車政策の急ピッチ
- 山崎元のマルチスコープ
- 単行本の無料ダウンロードの試みと出版の今後
- NEWS MAKER
- 日米同盟を破壊する2つの最悪シナリオ 元大統領補佐官が普天間基地問題で警告!
- 田中秀征 政権ウォッチ
- 民主党「議員立法」復活へ “政策決定の政府一元化”は正しかったのか
- ミドルマネジャーのための「不機嫌な職場」改革講座
- やり方が悪いと部下を萎縮させるだけ! 「厳しい指導」にまつわる誤解と正解
- ツイッター+αのつぶやき企業戦略
- つぶやきが企業文化も変える! サービス劣等生のコムキャストを救った ツイッターチームの大活躍
- ドラッカー塾マネジメント基本コース●限定募集
- ドラッカー・マネジメントを学び生産性を上げ、意思決定のできるナレッジワーカーに
雑誌定期購読のご案内
特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。
1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。
年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。
偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。
お知らせ・ご案内
- 会員専用ページ開始のお知らせ
- 7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。