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広がる犬の献血、ドナー登録も…寿命延び手術増える

献血する大型犬(大阪市東成区のネオ・ベッツVRセンターで)=前田尚紀撮影

 犬の献血の需要が高まっている。ペットを家族の一員として扱い、高額の治療費や検査費用を惜しまず、MRIやCTを受けさせる飼い主もいる。初期の段階でがんなどが見つかる例も。手術する際に輸血が必要だが、犬の血液は不足しているという。ドナー登録制度を設けて対応する病院も現れており、獣医師らは「献血で救える命があります」と協力を呼びかける。動物病院での治療が高度化し、犬の寿命が延びれば延びるほど、献血の要請は増す一方だ。

 大阪市東成区で高度動物医療を行う「ネオ・ベッツVRセンター」の診療室。セントバーナードのジョシュア(オス、6歳、約78キロ)に、病院スタッフが「いい子ね。すぐ終わるからね」と声をかけた。獣医師が両前脚の毛を10円玉大に刈り、消毒して注射針を静脈に刺す。

 おとなしくベッドに寝たまま15分が過ぎ、約400ミリ・リットルの採血が済んだ。外で待っていた飼い主の吉田栄子さん(58)(大阪府泉大津市)は、「母犬がここで心臓手術をしてもらい、献血制度を知りました。ジョシュアも元気なうちは、病気の犬の役に立ってほしい」と愛犬の頭をなでた。

 ネオ・ベッツVRセンターでは2006年秋に血液のドナー登録制度を始めた。条件は▽2〜6歳で体重15キロ以上▽フィラリア予防やワクチン接種を毎年受けている――などで42匹が登録されている。しかし年間で、輸血を伴う手術が約50件あり、血液不足は深刻という。

 吉内龍策獣医師は「近年は小型犬を飼う人が多く、登録数も伸び悩んでいる」と、打ち明けた。

 奈良県王寺町の王寺動物病院にも01年2月から献血制度があるが、血液型の不適合などで輸血できないケースも毎年7、8例ある。酒井智章院長は「救える医療技術があっても、血液がなければ助けられない。多くの飼い主さんに、献血に協力してほしい」と話す。

 犬の血液 犬の血液型は少なくとも13種類あるとされる。人のABO血液型と違い、他の型に対する抗体を自然には形成しないため、初めての輸血で発熱やショックなどの拒絶反応を示すことはない。ただ、過去に輸血歴や咬傷(こうしょう)経験がある場合、抗体がつくられている可能性があり、血液の適合性を確認する検査が必要。輸血に犬種は関係なく、大型犬から小型犬に血液を提供することもできる。

2010年3月6日  読売新聞)
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