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共に生きる・トブロサルダ:大阪コリアンの目/32 /大阪

 ◆「拉致問題への姿勢で公的支援見直し」 橋下知事発言に思う

 ◇朝鮮学校訪問するなら、生徒や教員らと語り合う時間を

 ◇「子どもが笑う大阪」のためにも

 「高校無償化」法案の対象から朝鮮学校を外すことが検討されている問題に、在日コリアン社会は落胆している。この議論自体が与えるダメージもある。共生社会を考える上でも重大な事柄だ。もう1回、この話にお付き合いいただきたい。

 私は韓国籍者で公立小中高校を卒業した。私の子らは韓国系の民族学校に通っている。だが、私は自らを「在日韓国人」だと語ることはほとんどなく「在日朝鮮人」と称するほうが多い。

 なぜ私は「在日朝鮮人」と語るのか。わが家族が日本に渡ってきた植民地のころは「韓国人」という言葉はなく、みな「朝鮮人」が普通であった。そして「朝鮮」という言葉で蔑(さげす)まれ、差別されてきたがゆえに、自分探しは「朝鮮」につながる自分を取り戻すことから始まった。私にとって「朝鮮」が尊厳回復の原点である。

 日本社会で「朝鮮」「朝鮮とおぼしきもの」はいまだ蔑まれ、疎まれる。多くの同胞たちが自らを「在日韓国人」と称する背景もそこにある。加えて、近年よく使われている「在日コリアン」の呼称も、そんな日本社会との関係の中で編み出された「工夫の産物」と言っていい。

 朝鮮学校の「朝鮮」が「北朝鮮」を想起させるのであろうが、朝鮮学校は「北朝鮮学校」ではない。教科書は日本国内で編さんされ、教育課程は学習指導要領に合わせてある。学ぶ子らは在日3世、4世で、卒業生はいまや、あらゆる分野で活躍し、国内の経済・文化発展に寄与している。

 北朝鮮の指導者の絵があることや、援助を北朝鮮から受けていたことなどを問題視する向きもあるが、日本での厳しい生活の中で祖国とのつながりを支えとしてきた点において、在日社会は共通し、南も北も差異はない。

 橋下徹知事は「拉致問題への朝鮮学校の姿勢が明らかにされないと公的支援を見直す」と発言した。知事は国政にも影響を与える権力者。その立場の人が学校に迫る発言としては度を越している。

 知事は朝鮮高級学校の訪問を表明した。いいことだ。だが、政治的立場の追及を受けながら迎え入れる学校側の気持ちは、察するに余りある。知事がもし行くのであれば、査察官のような鋭い眼光ではなく、懸命に日常を送る生徒や教員らと同じ目線で、語り合う時間を持つことを提案したい。

 あるいは、全国大会3位に輝いたラグビー部員らを、自らもラガーマンであった知事が励ますのもいい。知事の掲げる「子どもが笑う」大阪。朝鮮の子らも大阪の子なのだ。<文と写真 金光敏>

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 ■人物略歴

 1971年、大阪市生野区生まれ。在日コリアン3世。大阪市立中学校の民族学級講師などを経て、現在、特定非営利活動法人・コリアNGOセンター事務局長。教育コーディネーターとして外国人児童生徒の支援などに携わる。

毎日新聞 2010年3月6日 地方版

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