財団法人「中部盲導犬協会」(名古屋市港区)が、トラックにはねられて死んだ盲導犬の育成費など約600万円の損害賠償をトラックの運転手と運送会社に求めた訴訟の判決が5日、名古屋地裁であった。松田敦子裁判官は「盲導犬は社会的価値を有し、育成費を基礎に考えるのが相当」として294万円の支払いを命じた。原告側弁護士によると、盲導犬の価値が争われた訴訟の判決は初めて。
一方、一緒に事故に遭った視覚障害者の熊沢尚さん(74)=静岡県吉田町=が運転手らに求めた慰謝料支払いについては請求を棄却した。
判決は、盲導犬の客観的価値について「視覚障害者の単なる歩行補助具ではなく、つえなどとは明らかに異なる」として「盲導犬は商品」との被告側の主張を退けた。
原告側によると、盲導犬は平均して10年間、協会から視覚障害者に貸与される。事故に遭った盲導犬は貸与から約5年後だった。判決は、事故がなければ活動できた残りの期間を5年間と見て損害額を算出した。【式守克史】
毎日新聞 2010年3月6日 東京朝刊