西日本新聞

首長多選の弊害 絶対的な権力持つがゆえ

2010年3月5日 10:40 カテゴリー:コラム > 社説

 「首長はいわば地域の大統領だ。その地域では、国の大臣よりも強い力で自分の政策を実行できる」。かつて「大臣のいす」を目前にしながら、国会議員を辞して転身した元知事の言葉である。

 なぜ大臣より知事なのか。それは自治体の首長が、予算や人事、各種の許認可など、絶大な権力を握るからだ。監視役となる議会も、絶対的なブレーキ役ではない。市長の言動が物議をかもす鹿児島県阿久根市を見れば一目瞭然(りょうぜん)だろう。

 当選を重ねれば権力基盤も強化、議会のチェック機能も、なおさら働きにくくなる。水がよどめば腐るように、やはり権力者が長く居座れば、不正や腐敗の温床となるのは自明の理かもしれない。

 このことを想起させたのが、福岡県後期高齢者医療広域連合の設立に絡む汚職事件だ。収賄罪で起訴された中島孝之被告は副知事に10年在任した。贈賄罪で起訴の山本文男被告は10期39年間、同県添田町長を務め、1992年から県町村会長、99年から全国町村会長になった。

 その山本町長をめぐり、添田町議会(定数13)が臨時議会を開き、町長不信任案を否決する一方、辞職勧告決議案は可決された。不信任案可決には出席議員(13人)の4分の3以上の賛成が必要で、議長を含む採決で賛成は7人にとどまった。辞職勧告決議案は6対6の可否同数となり、議長裁決で可決された。

 ただ、決議に法的拘束力はない。山本町長は県町村会長職の辞任の意向を伝え、町村会も了承したが、町長は辞職しない考えだ。このままなら、町政のトップが刑事被告人という異常事態となる。

 それにしても、首をかしげたくなるのが山本町長の言動だ。保釈後の記者会見などで、起訴について「(悪いという認識は)ある」としながらも「事件の被害者は私」「町には迷惑を掛けていない」など、開き直りともとれる態度に終始した。市民感覚とかけ離れた対応と言わざるを得ない。県民への重大な裏切り行為であることを認識すべきだろう。

 中島前副知事を長年重用した麻生渡知事の発言にも、違和感を感じる。知事は県議会一般質問で、今回の事件の背景に前副知事の在任が3期目(1期4年)と異例の長期に及んだことがあるとして、今後、副知事の任期を「2期以内を原則」とする考えを表明したという。

 ならば、副知事よりもさらに強大な権力を持ち、現在4期目を迎える麻生知事自らの在任期間をどう考えるのだろうか。前回知事選では対立候補が「知事の任期は最長3期12年」と主張し、多選の是非が争点にもなった。副知事の任期が「長すぎた」という知事の指摘は、そのまま自身にはね返ってくるであろう。

 もちろん、多選の弊害が看過できないからといって、法的に多選を禁止するのには異論もある。最終的には有権者が判断するのが地方自治の原則だ。それゆえ有権者の意識が問われるのは言うまでもない。このことも肝に銘じておきたい。

=2010/03/05付 西日本新聞朝刊=

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