「沖ッ縄、沖縄〜♪」

 言わずと知れた第3新東京市立第2中学校2-A。

 今日も今日とて個性的と言うには少しばかり突飛過ぎる生徒たちが楽しく談笑をしている最中、アスカが鼻唄を歌っている。

 「・・・・・・・・・沖縄・・・・・・・・・仔シーサーを抱っこするの

 その対面でレイがパンフレットを抱きしめながらうっとりと呟いている。

 「先ずはミミガー食べてー、ゴーヤでシンジ殴ってー、ダイビングしてー、ゴーヤでシンジ殴ってー、スイカ割りしてー、ゴーヤでシンジ殴ってー、そのスイカを守る為に加持さんがいきなり現われてー、ゴーヤでシンジ殴ってー、間違えて加持さんの頭割っちゃってー砂浜が真っ赤に染まってー、でもってやっぱりゴーヤでシンジ殴ってー、」

 「・・・・・・・・・・・仔キムジナーのマジムンも抱っこするの。で迷子になってアマンチューに助けてもらうの。あとアカマタ・クロマタにニライカナイを案内してもらうの

 一体何故彼女らがこのように沖縄について語っているかと言うと、


修学旅行なのだ。

 それも沖縄に。

 なんと生意気な。

 ワタクシの世代なんて修学旅行といえば奈良京都。

 しかも自由行動なんてもってのほかで一日中つまらない寺社仏閣巡りをさせられたのだ。

 就寝時間も早いから教師の見回りが終わった後に懐中電灯を点けて一晩中花札やポーカーに興じるしか楽しみがなかったのだ。

 そう言えばそのお陰で小遣いを全部巻き上げられたのだ。

 今思い出しても腹立たしい。

 結局お土産も買えずに1人新幹線の中で酢コンブをしゃぶっていたのだ。

 おまけに高校の時は行き先が鳥取だったし。

 砂丘以外に何を見れば良いのか見当もつかない。

 そもそも砂丘以外なにもないし。

 あまつさえ旅館の部屋数が足りなかったのか布団部屋みたいな2人部屋に押し込まされ、しょうがなくそいつとチンチロリンでもしようかと思ったら携帯ゲームやってるし。

 こうなったらワタクシも沖縄を思いっきり楽しんでやる。

 今こそ暗黒の青春時代に別れを告げ、新たな思い出を胸に抱いてこの戦乱の時代を乗り越えてやるのだッ!!


私家版・新世紀エヴァンゲリオン
Japanese Gentleman Stand Up Please!

ACT.10=A
マグマダイバー
あるいは
手を伸ばさなきゃと、強く願った


writen by:MIYASOH



 「修学旅行? 行けないわよ

 神は死んだッ!!

 な、何故だッ!? 何故運命はかくもワタクシを幸せな修学旅行から遠ざけようとするのだっ!!

 行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい

 アスカとレイが居間(ちなみにココは葛城家である)のテーブルに拳を打ち鳴らして駄々をこねている。

 「五月蝿い黙れシャーラップビークワイエット静かにしろぉーーーっ!!

 必死に叫ぶ2人に勝るような勢いで怒鳴り返すミサト。

 アスカとレイのの前髪がその怒声に煽られたなびき、窓が割れんばかりに振動する。

 さすが最終人間兵鬼と呼ばれた葛城ミサト。

 横隔膜だけでも常人の3倍はある。

 水枕を呼気で破裂させたと言う噂はやはり嘘ではないのだろう。

 「ちょ、ちょっとシンジ! アンタもなにか言いなさいよ!」

 「・・・・・・・・・2人よりも3人で駄々をこねればなんとかなるって確か北原白秋も言ってたの

 「毛利元就だよ」

 しかも三本の矢の話だ。

 「・・・・・・・・・じゃあ間を取って中原中也で

 「いや間とってないし。・・・・・・・・・まあ、ボクは修学旅行に行けるとはあんまり思ってなかったし」

 諦観の面持ちでお茶をすするシンジ。

 「ちょっとそれどー言う事よッ!! アンタはねぇ3泊4日沖縄修学旅行の間に合計して164発ゴーヤで殴られる事になっているのよアタシの予定ではッ!!!」

 「なんだよそれ! それはアスカが勝手に予定してた事だろ! ボクは丁度良いから本腰入れて戦闘訓練でもしようと思っていたんだぞ!!」

 「キィーーーーッ!! バカシンジのくせに生意気よ!! アンタなんかパンツにゴーヤ突っ込まれてれば良いのよ!!

 そう言うや否や冷蔵庫からゴーヤを取り出してシンジのパンツの中に突っ込もうとするアスカ。

 「うわ、ちょっとアスカなにするんだよ! ・・・・・・・・・イヤ・・・・・・・・・・やめて・・・・・・・・・ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! こ、この冷蔵庫に入れてあったゴーヤ特有のひんやりとしてゴツゴツとした感触がボクを未知の快感へとッ快感へとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!

 「いい加減にしねぇかこのクソガキどもっ!!!!」



 パリーンパリーンパリーンッ!!



 遂にミサトの絶叫に耐え切れなかった窓ガラスが吹っ飛び、第一次チルドレン達を修学旅行から諦めさせようね作戦は失敗に終ったのだ。















 「結果から言うとだな。ダメなものはダメ

 狩野テンシュウ、お前もかっ!!

 翌日、第二次チルドレン達を修学旅行から諦めさせようね作戦は説得要員として新たに招聘された狩野テンシュウ作戦副部長の一声から始まった。

 行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい

 そしてまたもやアスカとレイの合唱駄々が始まった。

 しかし敵もさる者、フフンと鼻を鳴らしバサリとプリントの束と3枚のフロッピーを取り出す狩野とミサト。

 そしてそれを見た瞬間ピタリと動きを止めるアスカとレイ。

 これこそ彼らの用意した最終兵器、中間テストの結果である。

 「クックック・・・ご丁寧に3人揃ってテストの後夕方まで帰らないようにして、さも“テストなんてなかったわよ”と見せかけようとしたらしいけど・・・・・・」

 「・・・・・・・・・このように結果は先生から直接送付されているのだよ」

 今まさに魂を受け取らんばかりの悪魔のように微笑む2人。



 ゴクリ



 3人が唾を飲み込む。

 うっすらとかいている冷や汗を拭おうともせずに小刻みに震えている3人。

 「先ずは綾波レイ! 家庭科! 問題『日本人の食事に多く含まれている栄養素を答えよ』! でもって答えが『「友情」「努力」「勝利」』ってのはなんだっ!!!

 狩野が机の右端に座っているレイの前に答案とディスクをバンと置く。

 「続いて碇シンジ! 科学! 問題『二酸化マンガンと過酸化水素水を混ぜるとどうなるか』! でもって答えが『愛が芽生える』ってのはなによっ!!

 ミサトが机の左端に座っているシンジの前に答案とディスクをバンと置く。

 「「最後に惣流=アスカ=ラングレー! 名前が全部『葱流=アスカ=ラングレー』になってる!!!」」



 パシーン!



 そう怒鳴ってアスカの顔面に答案とディスクを叩きつける2人。

 「そう言うワケで3人とも期間中はこのドリルをやる事!」

 そう言いながらドサッと家庭科・科学・漢字ドリルを取り出す狩野。

 

 一斉に不満の声を上げる3人。

 「まったくもー、3人ともこんな成績じゃ内申書ガタガタで高校進学に響くわよ」

 ミサトがそうボヤキつつプシッと缶ビールの蓋を開ける。

 「まあ、それに一応『Bクラス以上の職員は公務以外で第3新東京市を離れる事を禁ず』って規則もあるしな。ID見てみな。3人ともB+以上の職員って事になってっから」

 狩野がそう言うと3人ともゴソゴソとポケットを探り、IDカードを取り出す。

 「ホントだ。B+になってる」

 「へっへーん、アタシAー♪」

 「・・・・・・・・・ワタシA+

 「あーっ! レイだけずるーい! なんでなのよー」

 アスカが頬を膨らまして拗ねる。

 「あー、そういや1人ずつ違うんだっけな」

 狩野がポンと手を叩いて呟く。

 「あれ? そうだっけ」

 ミサトが一本目のビールを飲み干し二本目に取り掛かろうとしつつ尋ねる。

 「えーとな、詳しい理屈はよく分からないんだけど・・・最初の予定ではレイは対使徒戦のパイロットって言うよりも『エヴァとのシンクロとは如何なるモノか?』ってのを解析する為のテストパイロットとして選ばれたんだよ。だからレイを調べればエヴァの秘密の半分は手に入るみたいな事らしいんだ」

 お茶を啜りつつ説明する狩野。

 「はぁ、それでA+なんですね」

 「おう。でもってアスカは完全に対使徒戦用パイロットとして起動実験とかよりも戦闘訓練をメインに育てられたワケだ。つってもある程度は起動実験とかあったけどな。っつーワケでパイロットとして2人の望むものが違っていたから、チルドレン歴に大した違いがないのにシンクロ率や模擬戦の結果に違いが出てくるんだよ」

 「ふーん。レイの訓練での結果見て『随分とトロいのねー』とか思ってたんだけどそう言う理由があったのね」

 「・・・・・・・・・ワタシとろくないもーん」

 

 押し黙ってレイと目を合わせない様にする4人。

 「・・・・・・・・・なんで黙るの」

 「えー・・・・・・あー、なんだ。一先ずそれは置いといて。シンジがB+なのはまだチルドレンとして認定されてから日が浅いからって事となんだわ」

 「つまり純粋にエヴァの操縦が出来るって事だけでB+の価値があるワケね」

 ミサトが狩野の解説を聞きながらしみじみと3本目のビールを飲み干す。

 「っつーかミサト」

 狩野が4本目のビールを取り出そうとしているミサトを横目で睨みながら訝しげに尋ねる。

 「なんでお前がこの事知らないんだよ。人事部から書類回って来てただろ?」

 「えーと・・・・・・何時の話?」

 眉間に皺を寄せながら尋ね返すミサト。

 「え? え〜〜〜〜〜っと、あれは・・・・・・・・・確かシンジに書いてもらった書類が受理されて間もなくの頃だから・・・・・・6月の終わり頃だったかな?」

 「6月の終わり? う〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・」

 そう唸ったまま考え込むミサト。

 ちなみに既にビールは6本目である。

 「 思い出したッ!!」



 グシャッ!



 思わず手に力が入り空になったばかりの缶が握り潰される。

 そして潰れた缶とは対照的にホッとした表情で胸を撫で下ろす狩野。

 「6月に書類を読んだ記憶がない事を思い出したわっ!!」

 「いい加減にしやがれこの脳天乳女っ!!!」



 スカポーン



 狩野に殴られたミサトの頭が軽快な音を発する。

 たぶん中身に比例しているのだろう。

 「何すんのよこの灰色ゲンドウ!!

 ちなみに狩野はゲンドウと(比較的)仲が良いため、影でこう呼ばれているのだ!



 ドッギャァァァァァァァァァン!!!



 ミサトが狩野に鮮やかな卍を極める。

 心なしかアゴがシャクれて見えるのは気のせいだろう。

 「皆さーーーン、元気ですかーーー! 元気があれば何でも出来る。元気が1番。いくぞぉーーー!!」

   

 

 チルドレン達3人と卍を極めたままのミサトが一斉に拳を天に突き上げて叫ぶ。

 そして場内に響くボンバイエコール。

 こうして“チキチキ第2回チルドレン達を修学旅行から諦めさせようね大作戦”はなんかうやむやの内に成功を治めたのである。















 「でぇぇぇぇぇぇぇぇりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」



 ダボーーーーーンッ!!!



 気合一閃、まるで飛び蹴りのようなポーズを決めてプールに飛び込むアスカ。

 スラリと伸びた足刀が水中に突き刺さり盛大な水飛沫が噴き上がる。

 波紋が拡がり、打ち消しあいながら一瞬の幾何学美を形成する。



 ザバッ!



 数瞬後、未だ波紋によって形作られた真円の中心から緋い髪が―――、続いて真白き肌が現われる。

 その姿はまるで東の海から朝陽が昇ってくる様である。

 「くぁーーーーーっ! 気持ち良いぃーーーーっ!!」

 アスカが立ち泳ぎしながら両の拳を突き上げて歓喜の念を表す。

 「こうなりゃ東京で思いっきり楽しんでやるわよ、レイっ! 夕飯の予定は?」

 そう大声を上げて近くでビニール製のシャチに乗っている筈の相棒に声をかける。

 「・・・・・・・・・既に夕飯はみんなで手巻き寿司と言う作戦を申請してあります、惣流司令」

 レイがシャチの上でアスカに向かって敬礼する。

 「ふむ。手巻き寿司か・・・。ゴージャスかつブリリアント、それでいてしつこくなくまったりとしていて舌の上でシャッキリポンと踊るような物を頼むよ。綾波副司令」

 立ち泳ぎしながら口の前で手を組み、含み笑いをするアスカ。

 「・・・・・・・・・お任せ下さい。既に技術部の優秀な部員によって手配させています」

 そう言って含み笑いを返すレイ。

 「ところで碇二等兵、酢飯の方は頼むぞ」

 器用に立ち泳ぎのまま方向転換してシンジに指令を出すアスカ。

 「へ?」

 プールサイドで狩野とミサトから渡されたドリルを――しかもご丁寧に学校の制服まで着こんで――やっているシンジが不意を突かれて間の抜けた返事をする。

 「あーーーーーーっもうっ! せっかくコッチがネタを振ってるんだからその『へ?』なんてマヌケな返事じゃなくて『完璧であります司令!』くらいの返しをしなさいよ!」

 アスカがプリプリと怒りながらザバザバと水を掻き分けてプールから上がりシンジに指を突きつけてダメ出しをする。

 眼にも鮮やかな赤いセパレートの水着が陽光を反射してキラキラと輝く。

 ・・・・・・なんかプリプリとかザバザバとかキラキラとか小学生の作文のような説明ではあるが、事実なのでどうかご勘弁願いたい。

 「だいたいねー、『ボクは宿題とかは早めに済まさないとイヤだからプールには綾波と2人で行ってくれば?』って言ったのに無理矢理拉致したのは誰だよ!」

 そう言い返して持っていたシャーペンで突きつけられたアスカの指を突き返すシンジ。

 「まー失礼!」

 口を大きく開けて信じられないとばかりに頬に両手を当て、抗議の念を顕わにするアスカ。

 「こぉーーーーーーっんな美少女2人の水着姿を眼前で楽しんでおきながら不満があるなんて!!」

 と、言いながら右手で胸を押さえて強調し、左手で前髪を掻き上げて『精一杯のセクシーポーズ』をとるアスカ。

 ・・・・・・いくら発育が良いとは言え、所詮中学生なので自分で思っているよりは効果が薄いだろう。



 ゲシッ!



 痛つつ・・・、アスカが上半身では『精一杯のセクシーポーズ』のままワタクシに蹴りを放ったのだ。

 全く器用と言おうかハンムラビ法典を体現していると言おうか・・・。

 「・・・・・・えーと、ともかくボクは宿題を終らせるまで遊ぶ気はないんだからね!」

 声も高らかにそう宣言し、バンとテーブルを叩くシンジ。

 「だいたいねー、アンタ一体どこら辺やってるのよ?」

 そう言ってシンジの手元にあるドリルを覗き込むアスカ。

 アスカの顔が近寄って頬が紅潮したシンジが慌てて目をそらすと、当然の如く視界に飛び込んでくるのはアスカの胸の谷間。

 「熱膨張? 随分と初歩的なとこやってるのね。良い? この数式の場合Xは代数である・・・・・・・・・・・・で、コッチの奴にはここの方程式を当てはめれば・・・・・・・」

 と、アスカが親切丁寧に問題の解説を始める。

 で、本来ならばシンジはアスカの説明を良く聞いて復習をしなければならないのだが・・・。

 うわぁ、どうしよう。メチャメチャ絶景じゃないか。でも何時までも下向いてると不自然だろうな。ん? アスカも下向いてるから別にボクの視線が何処を向いているかなんて分かるハズないよな。よっしゃ。アスカが喋っている間はずっと見ていても怒られないな。幸いにもアスカは解説に夢中になっているし。やっぱりマジメに宿題を終らせようとしているから神さまがご褒美をくれたんだろうな。良い行いってのは日頃からするべきだね・・・・・・って違う違う違う! アスカが下を向いているから下を向いているボクの視線が分かるんじゃないか! ヤバイヤバイヤバイ。バレるって! 他の所見なきゃ! ・・・・・・アスカって結構キレイなおへそしているな・・・・・・じゃなくて! 結局視線が向いている方同じじゃないか。違う所違う所・・・・・・・・・う〜〜〜〜ん、もうちょっとハイレグでも罰は当たらないと思うんだけどなぁ・・・・・・・・・だーかーらっ! 別の所見なくちゃいけないんだろ!? まったく・・・だいたいアスカってばこの前の2人っきりの夜の時だって期待させるだけさせておいて結局生殺しだったし、やっぱからかわれてるだけなのかなぁ・・・・・・でもなぁ、どっかアスカって天然っぽいしなぁ。・・・・・・・・・って結局視線まだ下半身に釘付けじゃん! ダメダメダメ、視線をプールの方に向けなきゃ・・・・・・・・うわ。綾波めっちゃコッチ見てる。っつーかひょっとしてバレてる? どーしよ。絶対後でシバかれるよ。やだなぁ、アスカほぼ確実に急所狙って殴ってくるしなぁ・・・。でもって殴るだけならまだしも他にも何か奢らされるし。今月のお小遣い残り少ないんだよなぁ。・・・・・・・・・ん? 待てよ。修学旅行行かなかったから向こうで使う予定だった分が丸々残ってるじゃん。良かったー。旅行用のお金か・・・・・・確か1万円くらい残ってるだろ? で、たぶんアスカの事だから奢らされるって言ってもケーキとかアイス程度だろうし・・・良し良し。かなり残るな。どうしようかなぁ。何買おうかなぁ。そう言えばこの前読んだ雑誌にカッコ良いヘッドフォン載ってたよな。あれにしようかな。それとも・・・・・・・・・ってヤバイって! 旅行用のお小遣いが残ってるのはアスカも一緒だよ! うわー、絶対高い物買わされるよ。うん、たぶん服だな。それも5000円くらいの。で、他にもCDかなんかも一緒に。それでさらにケーキとかも奢らされるんだよ。どーしよ。ほとんど残らないじゃん。やばいなー、欲しいアルバムあったんだけどなー。諦めなきゃダメだろーな・・・・・・・・・

 と、こんな事を考えながら顔を白黒――時に紅潮させ、また蒼白となる事もあったが――させていたのだ。

 あ、ちなみに別に読心術を使ったとかそう言うわけではなく、シンジの顔色からワタクシが独断と偏見で予想したモノであるのであしからず。

 まあ十中八九は当たっているだろうが。

 「・・・・・・・・・って言うワケ。分かった?」

 一通り解説をし終わったのか、アスカがシンジの顔を覗き込んで微笑みながら尋ねる。

 「え!? ・・・・・・・・・あ、うん、良く分かった・・・・・・と思う。うん。あ、あの、ありがとう」

 相変わらず顔を白黒させながらトリップしていたシンジがアスカの問いかけによって現実に戻り、しどろもどろになりながらも返事をする。

 「ま、結局熱膨張ってのは物は温めれば大きくなって冷やせば小さくなるって事なのよ」

 そう言って曲げていた腰を大きく反らして伸びをするアスカ。

 「アタシの場合、胸だけ暖めれば少しはオッパイ大きくなるのかな?」

 自分の胸を両の掌で包みつつ冗談めかしてシンジに問うアスカ。

 「えっ?」

 虚を突かれ、口をパクパクさせて返答に詰まるシンジ。

 (またかっ! またもボクを困らせようと企んでいるのかアスカっ!! どうすれば良いんだ? やはりボクも冗談めかして「ボクの股間は既にアスカの水着姿で熱くたぎっているから、その熱を利用しなよ」とか言えば良いのか!? ・・・・・・殺されるって。そんな風に答えたら間違いなく殺されるよ。この前の“コーラ瓶を使った78の虐待方法フルコース〜姉さン事件です”だけじゃ済まないよ。もっとえげつなくて残虐な方法で折檻されるんだ・・・。思えば短い人生だったな。・・・・・・・・・でも、でもココに来てから色んな人に出会えたし、い、色んな楽しい――一部楽しくない――想い出も出来たし、ボクはそれを胸に旅立つよ。父さん、サヨナラを言えなくてゴメン。来世ではもっと仲の良い親子になろうね―――)

 完全に死を覚悟したシンジがハラハラと涙を流しつつ合掌し、小声でナンマンダブナンマンダブと経を唱え出す。

 「・・・・・・き、気持ち悪い男

 だろうなぁ。

 「・・・・・・・・・時に碇くん」

 泣きながらお経を唱えてるシンジの肩を何時の間にかプールから上がったレイがグワシっと掴む。

 「・・・・・・・・・アスカに手伝ってもらって宿題が終ったのならそろそろプールに入っても良いと思うの」

 ナンマンダブナンマンダブナンマンダブナンマンダブ・・・・・・・・・・って綾波か。綾波はもっと暖めた方が良いと思うよ。―――しまった











┘└
┐┌



注:綾波嬢の怒りを表す記号的表現












 



 ダボォーーーンッ!!!



 そして第3新東京市立第二中学校2年生の面々が沖縄のマリンブルーの海に飛び込んでいるのと同時刻、大失言をかましたシンジが制服のままプールに叩き込まれたのである。

 合掌。





 えー、皆様大変長らくお待たせ致しました。

 JGSUP ACT.10=Aの公開です。

 本当言うとAパートはTV版と同じく弐号機の出撃直前まで書こうと思っていたのですが、それだともう1ヶ月かかりそうな予感がしたのでココまでです。

 だからこの後の出来事はBパートの前半にぶち込もうと思っております。

 そう言うワケで次回もまだまだギャグパートです。たぶん。

 あー、あと書くことないや。

 それでは次回の後書きでお会いしましょう。










 早く隔月間で書くクセ治さなきゃな。



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