ネルフが憎むべき第七使徒に敗北を喫した運命の日の翌日―――、
クドい様だが惜敗ではなくあくまで完敗である。
使徒の圧勝とも言える。
税金ドロボーもいい所だ。
この様な組織に所属している人間は恥かしくないのであろうか。
ハァ・・・・・・。(溜息)
それはともかく、翌日のコンフォート17マンションである。
「なぁイインチョ、ワッシらはセンセん家にプリント届けに行くだけやのに何でついて来るんや?」
人呼んで燃える男の黒ジャージことトウジがすぐ後ろを歩いているヒカリに向かって尋ねる。
「それはコッチの台詞よ。ワタシだってアスカの家にプリント届けに行くだけなんだから。そっちが前を歩いているだけでしょ?」
人呼んで2-Aの良心(ただし2-A基準)ことヒカリがトウジの問いに答える。
「まあ2人ともエヴァのパイロットなんだから一緒のマンションに住んでても不思議じゃないだろ?」
人呼んで気分はもう戦争(メガネで)ことケンスケが2人に向かって諭す。
「でも綾波さんはニコニコ団地のままよ。1人だけ他のマンションだなんておかしいじゃない」
ヒカリが疑念を顕わにする。
「惣流だけ先に引越したんとちゃうか」
トウジが面倒臭げに答える。
と、そんな会話をしている間に葛城宅に到着する3人。
インターホンにトウジとヒカリの指が同時に触れる。
「「ん?」」
同時に顔を見合わせる2人。
「ココはセンセん家やろ?」
「アスカの家でしょ?」
「ワッシらは何回もココに来た事あるんやで。だからイインチョが間違うたんや」
「嘘ー。だって先生から渡されたメモにはココの住所が書いてあったわよ」
「先生ももう年だからなぁ」
ケンスケがだいぶ失礼な答えを導き出す。
「「筋が通ってるな(わね)」」
納得する2人。
所詮ヒカリの良心は2-A基準の良心である。
「じゃあ碇くんにアスカの部屋訊かなきゃね」
「まあ、たぶんココのすぐ近くの部屋だと思うけどね」
そう言ってケンスケが肩をすくめる。
ピンポーン
「はーい」
ミサトのモノらしいくぐもった声が聞こえる。
ガチャリ
勢い良くドアが開けられペアのレオタード姿のシンジとアスカが顔を出す。
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
我が目を疑い押し黙る3人。
揃って1歩後ずさり円陣を組む。
「推測その1、偶然ご近所に瓜二つの双子が住んでいる」
「推測その2、ネルフの技術で作られたダミーロボット」
「推測その3、実は2人とも休んでいる間に洗脳されていた」
「「話を聞けぇーーっっ!!」」
やれやれだ。
私家版・新世紀エヴァンゲリオン
Japanese Gentleman Stand Up Please!
ACT.09=C
I Wanna Keep On Dance,THIS IS MY LIFE!
writen by:MIYASOH
「なるほど、つまりアナタはこう言いたいんですね。『医者はどこだ完璧なユニゾンが出来なければ人類に明日はない!』と」
ケンスケがお茶をすすりながら現状の説明を受けていた。
ちなみに現場にいるのは、ミサト(乳家主)・シンジ(居候その1。肩身が狭い)・アスカ(居候その2。態度が大きい)・ペンペン(居候その3。出番が少ない)・加持(信用がない)・レイ(お小遣いを減らされている)・狩野(ボーズ頭)の7人プラス2-Aの3人の計10人である。
流石にこの人数だと座りきれない為、ダイニングテーブルとイスをどかしてスペースを作っている。
「そー言う事。ただねぇ〜」
そう言ってミサトが溜息を吐きながらお茶をすする。
「なぁ〜」
「本当に」
狩野と加持も同じ様に溜息を吐く。
彼らの視線の先には・・・・・
「あー、もうっ! なんで未だに振り付け憶えてないのよ!!」
「それを言ったらアスカだってさっきのBメロのところで間違えて右足上げただろ!」
「違うもーん、アタシはワザと振り付けを変えただけだもーん!」
「1人で勝手に振り付け変えるなんて間違えたのと一緒じゃないか!」
やいのやいのと口ゲンカが続く。
ハァ・・・。
誰かが溜息を吐く。(たぶん全員)
「アスカ」
狩野が2人のケンカに割って入る。
「シンジは運動音痴なんだからお前が合わさにゃしょーがないだろーが」
サラっと失礼な事を言う狩野。
「う、運痴て」
そしてさり気無くチョット傷つくシンジ。
「そんなこと言ってユニゾンが完璧になっても、戦力的にマイナスになってたら意味ないじゃない」
「あー、確かにそう言やあそうだけどな」
14才の娘に言いくるめられそうになる狩野。
「ちょっとテンシュウさんは黙ってて。あのねアスカ、確かにシンちゃんの運動神経に疑問があるって言うのは分かるけど、ユニゾンは使徒を倒す絶対条件だし、ココでユニゾンを出来るようになっておけばこれからの戦局でも有利に進めるでしょ?」
やっぱりサラっと酷い事を言うミサト。
「ミサトさんまで言う事ないじゃないか・・・・・・」
人知れず涙するシンジ。
負けるな少年! キミの瞳から流れるモノは涙じゃない、心の汗だ!!
「そうだな・・・・・1回アスカを休ませてシンジ君のダンスを一通り見せておいた方が良いんじゃないかな?」
加持がミサトに向かって言う。
「そうね・・・・・レイ、大丈夫?」
ミサトがレイに尋ねる。
「・・・・・・・・・・・たぶん」
リビングに軽快な音楽が流れる。
一方ではレイとシンジが踊り、もう一方では残りの8人がそれを食い入るように見つめている。
(なんつーか・・・テンポは合うとるように見えるな)
トウジが小声で隣のケンスケに喋りかける。
(そうだね・・・・・2人とも普段からボーっとしてるから波長が合うんじゃない?)
(天然は天然を呼ぶっちゅーわけやな)
やっぱり失礼な事を言う2人。
(・・・・・・・・・2人とも酷いよ)
聞こえていた。
(ただなぁ・・・・・・・振り付けがなぁ)
(確か綾波が踊っとるヤツ去年の体育祭の応援合戦のヤツやろ)
ちなみに昨年の体育祭での総合優勝は2-Cである。
「うーん、振り付けはともかくテンポは合ってるのよねぇ」
ミサトが音楽を止めて呟く。
すると・・・
「ふん! なによなによ! そんなにアタシと合わないんならレイと組めば良いじゃない! シンジのバカッ! アホ! マヌケ! トンマ! ジャガイモ頭のソフペニ野郎!!」
そう叫びながら半泣きでアスカは玄関の方へと駆け出して行った。
「ジャガイモ頭て」
そしてまたショックを受けるシンジ。
「・・・・・・・・・・だから零号機は修理中だから無理だって言うのに」
ミサトが半ば呆れたように呟く。
「しょうがないな、オレと先輩と・・・・・・そうだな、シンジ君も連れてちょっと探しに―――」
探しに行ってくるわ、と加持が言おうとした瞬間、彼の脳天に突き刺さる狩野の鉄拳。
「お前かーっ! 人の義娘にソフペニなんて言葉教えたのはっ!!」
再度加持を殴る狩野。
再度狩野に殴られる加持。
殴った。
殴った。
殴った。
全員で殴った。
「碇君!! コッチはワタシ達に早くアスカを追いなさい!」
ヒカリが加持を殴る手を一旦止めてシンジに向かって怒鳴る。
「え? ・・・・・・でも・・・・・・」
シンジも殴る手を一旦止めてヒカリに問い返す。
「いいからっ! 早く追いかけなさい!!」
噛み付かんばかりの形相で怒鳴りつけるヒカリ。
シンジは犬が尻尾を巻くような勢いでアスカを追って外に出て行った。
「まったく、みんなして散々ボクの事好き勝手に言っといてさー」
アスカを探しに1人で外に出たシンジがブチブチと愚痴を言っている。
「だいたいアスカもアスカだよ。ボクがさっき振り付け間違えてた時はあんなにバカにしてさー」
口の中で愚痴を言いながらうつむいて歩いている。
「それなのにたまたま綾波と組んで成功したからって怒るなんてさー。ワケが分かんないよ」
まあ、コイツの意識の中ではまだこんなものだろう。
全く、異性の心が分からないと言う事は本来なら万死に値するのだが、14才と言う年齢を鑑みて叙情酌量の余地有りと言ったところか。
そんなこんなでシンジが近所のコンビニの前を通り過ぎると―――、
「あ! アスカ!」
コンビニの中にいるアスカを発見したのだ。
2人してちびちびと缶ジュースを飲んでいる。
場所は先程のコンビニから歩いて数分ほどの公園である。
夕暮れ時であるためか、公園に人影はない。
「・・・・・・・・・・・あのさ」
シンジが恐る恐ると言った感じで話し掛ける。
ギヌロ
しかしアスカに睨み返され畏縮して黙ってしまう。
ちなみにこの展開、今の所27回ほど繰り返されている。
最初の数回はシンジも工夫して問いかける言葉を「あのさ」の他に「ところで」とか「そう言えば」とか「あっ! あれはっ!」とか色々なバリエーションを持たせていたのだが、どれも功を成さなかった。
基本的な部分で勘違いをしているような気がするのだが。
「・・・・・・・・・・・・・だいたいね」
約30分間に渡るシンジの苦悩が実を結んだのか(たぶん違う)、今までずっと押し黙っていたアスカがやっと口を開いた。
「アンタはアタシの、この超絶天才絶対無敵完全完璧天下無双覚悟完了奇妙奇天烈摩訶不思議出前迅速落書無用美少女である惣流=アスカ=ラングレーの第一の下僕なのよっ!!」
流石にアスカも勉強したのか、以前のように絶対無敵を繰り返さなくなっている。
「その第一の下僕であるアンタがっ、主人であるアタシに合わさないでどーすんのよっ!!」
照れているのか激昂しているのか、少々頬が紅潮しているアスカ。
「そんな事言ったって今までダンスなんてした事ないんだから、いきなりアスカと同じペースで踊れって言われてもムリだよ」
アスカの迫力に気圧されながらも反対意見を述べるシンジ。
「・・・・・・・・・・・・・・・よぉしっ! 分かったっ!!」
そう叫ぶとシンジの頭をグワシっと掴み顔をよせるアスカ。
アスカの息が鼻腔をくすぐり、顔を赤らめるシンジ。
(あぁ・・・・・アスカってイイ匂いだなぁ)
思わずふしだらな想像を逞しくさせてしまうシンジ。
「特訓よっ!」
「はぁ?」
「アンタみたいな超愚鈍的凡才的貧弱的無勝的瓦全的両雄並び立たず双方共倒れ的ノーモア根性そのくせスケベ根性だけは旺盛的例えて言えばルパンの主題歌における『ルパン音頭』的少年をこの超絶天才絶対無敵完全完璧天下無双覚悟完了奇妙奇天烈摩訶不思議出前迅速落書無用美少女であるアタシと同等のダンスが出来るまで調教特訓する事、これぞまさに帝王学っ!!!」
「はへ?」
「そうと決まったらこんな所で油を売っている場合じゃないわ! ウチまでダッシュで帰るわよ!!」
そう言うとシンジの手を引き、猛然とコンフォート17までの道を駆け出すアスカ。
(狩野さん・・・・・・・アナタの教育は間違っていると思います)
「おふぁえりー」
先程とは打って変わり俄然やる気を出したアスカに(ムリヤリ)手を引かれ猛ダッシュで帰宅したシンジを迎えたのは、お茶請けの煎餅をかじっているレイ唯一人であった。
「あれ? 綾波? 他のみんなはどうしたの?」
汗だくになったシンジが肩で息をしながらレイに問う。
ちなみにアスカは少々上気している程度でスタミナを消費した様子はない。
基礎体力と言うよりは慣れの問題であろう。
「・・・・・・・・・ワタシはお留守番。みんなは・・・・・・・・・・・なんか、『殴り飽きた』って言って帰ったわ。お父さんと葛城一尉はそのチョット前に素に戻ってアスカを探しに出て行ったけど・・・・・・・会わなかったの?」
「全然。って言うか『殴り飽きた』って?」
「・・・・・・・アレ」
そう言って部屋の隅に転がっている生ゴミ状の人物を指差すレイ。
「ナニあれ?」
そう言って顔を赤黒く腫らした謎の人物――ひょっとしたら人間ではないのかもしれないが――から一歩離れるアスカ。
「えーと・・・・・・・たぶん加持さん」
シンジが自信なさ気に答える。
「・・・・・・・・・・・・そう言えば、ドイツ支部でも週に1度はアレを見た記憶があるわ」
「昔っからなんだ・・・・・加持さんって」
シンジが溜息を吐く。
「・・・・・・・・・さっき諜報部に電話したからもう少ししたら迎えが来ると思うの」
「大変よね、諜報部の人達って」
「・・・・・・・・・それを言ったら作戦部だって部長がアレだからねぇ」
「・・・・・・・・・ちなみに技術部には赤木博士がいるわ」
揃って溜息を吐く3人。
まあ、ネルフ自体のトップにもっとどてらい人がいるのだからしょうがないだろう。
そんなこんなでいささか先行き不安ながらもシンジとアスカのユニゾン特訓が開始された。
それから1週間、
2人は事ある毎に衝突し、
許しあい、
時には血みどろの決戦をし、
時には目玉焼きにかけるのはソースか醤油かで激論を交わし、
ベタを塗り、
トーンを貼り、
担当さんと次回の展開について打ち合わせをし、
はたまた音楽性の違いから解散を考えたり、
夜の校舎窓ガラス叩き割って回ったり、
今だけは悲しい歌聞かなかったり、
一体何を卒業するのかと問い掛けたり、
見えない自由が欲しくて見えない銃を撃ちまくったり、
クソッタレの世界のために終らない歌を歌ったり、
天が落ちてこやしないかと心配したり、
土曜の夜だから一晩踊り明かしたりしながら過ごしたのであった。
そして遂に使徒との決戦前夜。
「ねーシンジー、ミサトはー?」
お風呂上りのアスカが髪を拭きつつシンジに尋ねる。
流石にアスカもバスタオル一丁なんて恥知らずな恰好ではなくTシャツにショートパンツと言う(欧米の感覚から言えば)常識的な恰好である。
「んー、なんかねぇ、今夜中に仕上げなきゃいけない書類があるから作戦部総出で徹夜だって」
シンジが自分の部屋で雑誌を流し読みしながら答える。
「ふーん、じゃあ今夜は2人っきりってワケね」
そう言ってシンジにVサインを極めるアスカ。
「はへ?」
マヌケな声を上げて返事をするシンジ。
鳩が豆鉄砲食らった様な顔をしている。
「明日は決戦なんだからアンタも早くお風呂入りなさいよね」
そう言いながらTVのスイッチを入れるアスカ。
TVからはお笑い芸人の笑い声が聞こえる。
そしてそれを見て笑っているアスカの笑い声。
(ど、どう言う事だ!? Vサイン? 今夜は2人っきり? 早く風呂に入れ? ひょ、ひょっとして誘っているのか!? いや待て、チョット待て碇シンジ! ぼ、ボク等はまだ中学生だぞ、それにまだつ、付き合ってるとかそう言うわけじゃないし・・・・・でももし誘っているのだとしたら・・・・・・・・・据え膳喰わぬは男の恥って言うし・・・・・・・・・・いやいやいや、逆に自制が利く男かどうか試してるって場合もあるし・・・・・・・・・っつーかまるっきりそう言う事関係ナシで天然で発言した可能性もあるしなぁ・・・・・・・・・あー、もうっ! ボクはどうしたら良いんだぁっ!!)
こうして、シンジが葛藤している間にも夜は深けて行くのであった。
「良い!? ココは決して崩れる事のないジェリコの壁、別名アジアの壁。一歩でも踏み越えたら死刑、あるいは“コーラ瓶を使った78の虐待方法フルコース〜姉さん事件です”を食らわすからね!! 覚悟しなさい!!」
そう言ってピシャリと襖を閉めるアスカ。
リビングに1人取り残されたシンジ。
(ちくしょうっ! やっぱり天然かよ! コレじゃあ蛇の生殺しだよ!!)
枕を抱えたまま泣き濡れるシンジ。
無邪気な発言と言うモノは時として残酷である。
合掌。
そしてそれから数時間後。
シンジは未だに悶々として眠りに就けなかった。
カラリ
アスカの寝室の襖が静かに開いた。
そしてそこから出て来たのはまだ半分眠ったままのアスカ。
ムニャムニャとなにか呟きながらヨロヨロと歩いてくる。
そしてそのままシンジを跨いで彼の前で倒れるかのように横になる。
その間シンジは硬直したままである。
(やっぱりかっ!? 誘ってるのか!? 誘ってるのか!? それとも試しているのか!? 天然か!? 寝ぼけただけか!?)
シンジがまたもや思考の渦に巻き込まれていく。
誘っているのか。
試しているのか。
寝ぼけただけなのか。
出口のない螺旋を描くシンジの意識。
野性的に迫るべきなのか。
紳士的に自重すべきなのか。
気にせず眠りに就くべきなのか。
正解を知る少女は瞳を閉じたまま何も語ろうとしない。
(どーすれば良いんだ、ボクはどーすれば良いんだよ父さん!!)
思わず天を仰いで父に答えを求めるシンジ。
すると――、
シンジ・・・・・・フォースを信じるんだ。
ゲンドウの念波が語りかけてきた。
「と、父さん!?」
突然の出来事に狼狽し、思わず立ち上がってネルフの方角の壁に向かって問い返すシンジ。
やっぱりそこには朧げなゲンドウの姿が。
「父さん、幻覚? それともホログラム? どっちなんだよぉ!」
そしてまた頭を抱えて悩むシンジ。
シンジ・・・・・・実はな、父さん達は出来ちゃった結婚だったんだ。
「あーっもうっ! 分かんないよ! 全然ワケが分かんないよ!!」
ますます混乱するシンジ。
そして・・・・・・生まれたのがお前だっ!!
「分かんないよ! 全然ワケが分かんないよ!!」
と、これだけ騒いでいるのであるから当然の様に――、
「ふにゃ? うるひゃい!」
アスカが起きだしたのだ。
そして当然の様に眼に映るのはゲンドウのフォースと口論をするシンジの姿。
「し、司令のフォース?」
寝ぼけ眼が途端にシャッキリする。
「なんなの!? 一体なんだって言うのよぉぉぉぉっ!!!」
パニックに陥って半狂乱になるアスカ。
こうして決戦前夜は明けていくのである。
ちなみに同時刻のネルフ本部では、
加持が包帯を巻いたままの顔でミサトの唇を奪って復縁を匂わせたり、
狩野がリツコに貰った眠気覚ましを飲んで覚醒し「神は死んだッ!!」と叫びだしたり、
日向が謎の爆発に巻き込まれたり、
残業を手伝いに来た青葉とマヤがちょっと良い雰囲気かなと思ったら謎の爆発に巻き込まれたり、
顔を赤らめたり青らめたり、
謎の爆発に巻き込まれたり、
味噌なめたり、
謎の爆発に巻き込まれたり、
味噌なめたかな? と思ったら謎の爆発に巻き込まれたり、
冬月が不適切な発言をして一旦CMに入ったり、
やっぱり謎の爆発に巻き込まれたりと、
てんやわんやの夜であったのだが、
それはまた別のお話。
巨大な正面モニターに映る第七使徒の姿。
自己修復を完了させ、悠然と歩みを進める。
「目標は強羅絶対防衛線を突破」
昨夜の爆発のお陰で髪の毛がチリチリになっている日向がミサトに伝える。
ちなみに、日向以外にも多くの作戦部員、保安部員なども髪の毛がチリチリになっている。
「来たわね。今度は抜かりないわよ。音楽スタートと同時にATフィールドを展開。作戦通りに所定の位置まで誘導、使徒のATフィールドを中和した後、即離脱。コアに向けての陽電子ビームによる狙撃はコッチでやるから心配しなくても良いわ」
ミサトがエヴァに搭乗済みの2人に対して作戦の確認をとる。
「「はい」」
2人が声を揃えて返事をする。
細工は隆々、ユニゾンは完璧、まさに鉄壁の布陣である。
・・・・・・・・・なんかこの“鉄壁の布陣”という言葉使うとイヤな予感がするのだが。
「良いわね、最初からフル稼働、最大戦速でいくわよ」
エントリープラグ内のアスカが内部通信でシンジに話し掛ける。
「分かってるよ。62秒でケリをつける」
挑戦するかの様に不敵に笑むアスカとは対照的に顔を引き締めている。
「発進!!」
ミサトが号令を飛ばす。
そして、決戦の火蓋を切って落とす為の音楽が流れ始めた。
同時に飛び出す初号機と弐号機。
空中からソニックグレイブを投げつける。
ソニックグレイブが突き刺さった衝撃でまたも2体に分裂する使徒。
左右に別れてパレットガンを撃つエヴァ。
劣化ウラン弾をATフィールドで防ぎ、その虚ろな眼窩から熱線を照射する使徒。
熱線から身を守る為に兵装ビルの陰に隠れる2体。
接近戦を挑むべく兵装ビルに近付く使徒。
使徒の鉤爪がビルを引き裂く。
まるでミュージカルかの様に動きをピタリと併せ使徒と格闘する2人。
そして―――
「「覇ァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ」」
初号機と弐号機の蹴りが使徒を捕らえる。
オレンジ色の壁が衝突し、そして消滅する。
ガヒュン
ATフィールドが中和されると同時に使徒に向かって突き進む陽電子ビーム。
光の槍がコアに突き刺さる直前に後方に跳躍し戦線から離脱するエヴァ。
そして―――、
大爆発
そして華麗に着地を極める2体。
同時に音楽も終わる。
ジャスト62秒、最短記録である。
損害も兵装ビル1基のみ。
まさに完璧。
今回こそ正真正銘の大勝利である。
「「「ぃよしっ!!!」」」
全員の歓声が重なる。
それぞれ足を踏み鳴らし、抱擁を交わし、手を打ち鳴らして歓喜の表現をしている。
「おい、日向、今のビデオに録ったか?」
狩野が日向に訊く。
「ハイハイ、ちゃんと録画してありますよ」
「あれだよ、もし2人が結婚とかしたら披露宴でコレを披露宴で上映すんだよ。盛り上がるぜー」
狩野が嬉しそうに話している。
「アンタねー、今からそんな事考えてんの?」
ミサトが半ば呆れてツッコむ。
「っつーか葛城、オレが渡したディスクにはコアに向けての狙撃なんて書いてなかったと思うんだが」
加持がミサトに尋ねる。
「あのねー、あんな穴だらけの作戦にゴーサイン出せるワケないでしょ」
「そうかー?」
「だいたいねー、コアに対して2点同時の荷重攻撃を格闘戦で出来るワケないでしょ。だからリツコのアイデアで第五使徒戦で使った陽電子砲を改造しておいてもらったのよん」
そう言ってニヒヒと笑うミサト。
「あー、なんだよそれ。オレさっきまでスーゲー楽しみにしてたんだぜ」
加持が不満げに言う。
「へっへーん、アンタみたいな素人に完璧な作戦立てられるようになったら商売上がったりなのよ」
などと楽しく歓談していると・・・
「ン゛ッン゛ン」
冬月が咳払いをする。
途端に静かになる職員達。
「諸君、今回の戦闘では被害も少なく私としても非常に嬉しい。特に人的被害がなかったのは何よりだ。作戦部の諸君、およびパイロット達ありがとう。次の戦闘においても今回の経験を活かし、迅速かつ可及的速やかに作戦行動をとってくれる物と信じている。だが、しかし忘れてはならないのが前回の戦闘においての敗退についてである。特に国連海軍空母オーバー・ザ・レインボウ、およびサバ将軍の犠牲を忘れてはならない」
冬月が淡々と語る。
皆2人の海の勇者の死を思い出し、厳粛な空気が発令所を満たす。
「奇跡的に今までは対使徒戦においての人的被害は少ない。だが、次の戦闘ではどうなるかは分からないのだ。これは私とて例外ではない。良いか諸君、この事は偉大なる2人の海の勇者が我々に教えてくれたのだ」
ゆっくりと、諭すように語る冬月。
職員の中には目に涙を浮かべている者さえいる。
「彼ら、偉大なる英霊たちに敬礼!」
ザッ
職員全員が海に向かって敬礼をする。
勿論、2体のエヴァも例外ではない。
使徒の爆発によって出来たクレーターを背後に敬礼をする初号機と弐号機。
(アンタとの再戦の約束・・・・・・守れなくなっちゃったわね)
アスカが遠い眼をしながら海を見つめる。
(ボクが強くなれば・・・・・・それだけ危険な目に遭う人が減るんだ。・・・・・・・・・強くなろう)
決意に燃えるシンジの眼。
今回の戦いが彼に戦士としての魂を与えたのであろうか。
それとも海で散っていった偉大な戦士の魂が彼の心を奮わせたのであろうか。
どちらにせよ、確かな事はシンジが戦う決意をしたと言う事だ。
Prrrrrrrrrr
厳粛な空気に満ちている発令所に電話の音が響く。
そしてそれをきっかけにするかのように発令所にいつものざわめきが戻った。
みなそれぞれ仕事に戻って行ったのである。
特に回収班などは戦闘後にこそ活躍の場があるのである。
「ハイ、ネルフ本部第1発令所です」
マヤが電話をとり、溌剌とした声で応える。
「ハイ? 山口県のふぐ料理店・・・・・・いえ、山口県には支部はないのですが・・・・・・・・・ええ、え!? 巨大な半魚人と焦げた国連海軍の船長服を着た外人がネルフの勘定で飲み食いした!? い、いつの話ですか、それ?・・・・・・昨日!?」
青い顔をして思わず呆然として受話器を落としかけるマヤ。
辺りを見回すと艦長とサバ将軍の死を無駄にしまいと涙を堪えつつも仕事に精を出す職員達の姿。
「ど、どーしよ」
どーも、作者です。
えー、結局2月に間に合いませんでした。本当に申し訳ないです。
最低でも1ヶ月に1回は更新するつもりだったんですけどねぇ・・・・・・。
次回こそは早めに御眼にかかれると思・・・・・・・えたらいいなぁ。
今回の展開ですが実は結構以前から考えていたのです。(確かHPを開設する前)
まあ、考えていたって言っても中盤のシンジがゲンドウのフォースと対話するシーンだけですけどね。
構想ではあの場面でキョウコのフォース(幽霊?)も現われて〜ってのを考えていたのですけどねぇ。
流石に弐号機からフォースを飛ばすのはムリかなって言うか余計にアスカに悲しい想いを抱かせてしまうような気もしたので割愛しました。
たぶんこの判断はあってたと・・・・思いたいっす。
次回はマグマダイバーの回ですねぇ。
今回のユニゾン編とほぼ同等のLAS名場面がある回です。
うーむ、今の所決まっているギャグは2つしかないですねぇ。
しかも本編とは関係のないギャグ。
うあー、倒す方法考えなきゃー。