ズオォォォォォォン
耳をつんざく轟音と共にオーヴァー・ザ・レインボウが大きく揺れ動く。
「S・H・I・T、シット! 奴らだ!! 奴らに発見された!!」
オーヴァー・ザ・レインボウの艦長が忌々しげに舌打ちをする。
無言で艦長に双眼鏡を渡す副長。
「弐番艦、四番艦機雷投下!」
艦長が副長に向かって怒鳴る。
「弐番艦、四番艦機雷投下!」
副長は艦長の命令をマイクに向かって復唱し命令を伝える。
一瞬の間があってやや離れた艦の周りに水柱が立つ。
「・・・・・・・・・・・・」
艦長は無言で双眼鏡を睨み続ける。
先ほどミサト達と話していた時の意地の悪そうな顔とは違い、荒々しくも誇り高い冷徹な海の軍人の顔になっている。
その時、
「ちわー、ネルフですが見えない敵の情報と的確な対処はいかがっっスかー?」
ミサトと狩野がブリッジに顔を出した。
あと、デジカメを構えたケンスケ。
「これは私見ですがどう見ても使徒の攻撃ですねー」
先ほどのお返しとばかりに思いっきり意地悪そうに言うミサト。
口元も邪悪そうに歪んでいる。
たぶん、魂の譲渡についての契約書を手渡す時の悪魔と言うのはこんな顔をしているのだろう。
「ふん、素人が勝手な口を挟まないで欲しいな」
副長が侮蔑の表情でミサトに告げる。
「だいたいアレが使徒だなんて誰が決めたのだ。
今攻撃をしているのは断じて使徒ではない。
アレは我が国連海軍が最も苦しめられてる憎い敵、
・・・・・・・・・・・・・サバだ。恐るべきサバの軍団だ」
私家版・新世紀エヴァンゲリオン
Japanese Gentleman Stand Up Please!
ACT.08=B ASUKA STRIKES!
or
The gear is begining turn round.
writen by:MIYASOH
結局かれこれ1時間近くサバの怖さについて語られたミサトと狩野(ついでにケンスケ)。
もう既に一端のサバ博士である。
サバについてある程度以上の知識は身に付いてしまったのだ。
例えば、ミスタージャイアンツが「サバと言う漢字は・・・・・・・・・魚へんにブルーでしったけねえ?」と新聞記者に尋ねたと言うエピソードとか。
ちなみに、
当然の事ながら恐怖のサバ軍団は既にEVA弐号機によって駆逐されていた。
「でさー、聞いてよ加持さん。サードのヤツったらアタシ達の着替え覗こうとしていたのよ! 信じられる!?」
「の、覗いてなんかないよ!」
「・・・・・・・・覗いていたわ」
結局、ものの数分で勝手にサバ軍団を殲滅してしまった3人は加持と一緒に食堂でお茶していた。
「嘘ねー! アタシと目が合ったじゃない!!」
「だからアレはなんか大きい物音がしたから・・・」
シンジのその一言を聞いたレイがポンと手を叩く。
「・・・・・・・・そう言えばあの時パンツが足に引っ掛かって転んだ気がするわ」
「ホラ! だから別にボクは覗きをしていたわけじゃないんだよ! んー、なんて言うの? ボクって人一倍心配性って言うか親切心が溢れているタイプだし」
焦っているのか本心なのか心持ち早口で熱弁するシンジ。
「ところでシンジ君、アスカのブラジャー何色だった?」
加持がさらっと尋ねる。
「えーと、確か惣流さんはピンクで綾波が白・・・・・・・」
そこまで言ってようやく己の失言に気付くシンジ。
ギギギと音が聞こえるほどゆっくりと振り向いてアスカを見やる。
すると、
そこには、
赤鬼の姿が。
シンジの悲鳴が船内に木霊する。
以来、オーヴァー・ザ・レインボウは死霊が哭く空母と呼ばれる事になったのだが、それはまた別のお話。
「もう2度と覗こうなんて思わないから、許してよー」
結局アスカに真紅の復活祭を行なわれたシンジは痛々しい姿のまま謝りっぱなしである。
シンジの謝りっぷりは凄まじかった。
なにせほぼ五体倒地で謝っているのだ。
それでもアスカは許そうとしなかった。
先ほどからツンと横を向いたまま一言も口を利こうとしないのだ。
「本っ当ゴメンナサイ。何でも言う事聞くからさー」
既に五体倒地を通り過ぎて段々と尻を宙に突き上げながら謝るシンジ。
セカンドインパクト以前より伝わる上級土下座、俗に言う小兵二土下座である。
14歳で小兵二土下座をマスターしているとは末恐ろしい。
さすが碇シンジ。
“謝って14年”のキャッチコピーは伊達じゃない。
「本当に何でも言う事聞く?」
アスカが小声で呟く。
「え? あ、うん。モチロン」
本当はこのままズボンをずり下げてのび太土下座に移行しようと思っていた為チョットしどろもどろになるシンジ。
「じゃあね・・・・・アタシの下僕になりなさい!!」
「下僕!?」
驚きのあまり思わず小兵二土下座→ガウォーク体勢→スタンドアップモードと気持ちの悪い立ち上がり方をするシンジ。
しかも結構スムーズな動きだ。
「嫌なの?」
そう言って目に涙を浮かべるアスカ。
「13歳のうら若き乙女の柔肌を見ておいて・・・・・・・」
ポロリとその大きな瞳から涙がこぼれる。
「おまけに何でもするって言ったのに・・・・・・」
ポロポロと大粒の涙が溢れ始める。
「嘘ついたのね・・・・・」
顔が歪み、少しづつしゃくり始める。
そしてその口から嗚咽の声が漏れ始める直前―――、
「なります! 下僕になります!! だから泣き止んで下さい惣流さん、いや! 惣流さま!!」
その一言を聞いた途端ピタリと泣き止むアスカ。
この瞬間こそが碇シンジの一生を決める瞬間であったのだ。
最も大きな歯車が今回り始めた。
「ひゃっほーーーー!!!」
シンジに肩車されたアスカが甲板の上ではしゃいでる。
「とほほ」
アスカを肩車したままシンジが嘆息する。
勢いとはいえ、下僕宣言をしてしまったのだ。
余程ムチャなお願い以外は全力で利かなければならない。
でも、そう悪い気分ではなさそうだ。
「ねー、まだるっこしいから“惣流さま”だなんて呼ばなくて良いわよ。“アスカ”で良いわ」
「そ、そう? ありがと惣・・・・・アスカ」
「どう致しましてっ! バカシンジ!!」
そう言って大きな声で笑うアスカ。
その笑い声がシンジの胸の中で木霊する。
アスカの笑顔がシンジの心に響き渡る直前―――、
ズオォォォォォォン
轟音が再度オーヴァー・ザ・レインボウを襲う。
「うわっ!」
その振動によってアスカを肩車したままよろけるシンジ。
「!」
シンジのバランスが崩れた瞬間、肩の上から離脱するアスカ。
軽くバック転をして華麗に着地する。
「うわっとととと」
バランスは崩れたがなんとか転倒は堪えるシンジ。
「!! アスカ、あれ!!」
自分の目に映ったモノを見て思わず言葉を上げるシンジ。
シンジの目に映ったモノ―――、オレンジ色に光る八角形壁。
つまり、
ATフィールドである。
「アスカ! 今度こそ本当に使徒だよ!!」
「本当!? ・・・・・・・・ふっふっふ。ぃよっしっ!!! 行くわよバカシンジ!!」
そう言ってシンジの手を取って走り出すアスカ。
同時刻、ブリッジ―――、
ズオォォォォォォン
ブリッジが大きく揺れる。
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!! サバはもう嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!! ミスタージャイアンツはもっと嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
スッゴイ失礼な事を叫びながら狩野の頭をガクンガクンとシェイクさせるミサト。
どうやらナニかココロに傷を負ったらしい。
・・・・・・・・そんなにアニサキス怖いのか。
ピタリとミサトの動きが止まる。
ブリッジの窓から何かを見つけたようだ。
それは、オレンジ色に光る八角形壁。
つまり、
ATフィールドである。
「使徒・・・・・・・・・・?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ミサトの背後からオーラが立ち昇って見える。
「サバに比べれば・・・・・・・・・・サバに比べれば使徒恐るるに足らず!!」
そう叫ぶと副長からマイクをひったくるミサト。
「アスカ!? 使徒よ!! 今すぐ弐号機で出撃して!!!」
有無を言わさず指揮権を強奪する。
ちなみに狩野はミサトに頭を振られすぎて泡を吹いていた。
どーも作者のミヤソーです。
本当ならばBパートで終える筈だったのですがチョット長くなったので3つに分けました。
あー! タイトルどうしよう。
本気で迷ってます。
それでは。
今回のメッセージは鈴原トウジ君からです。
「結局ワッシなにしとるんじゃ?」
医務室で気絶中だね。