「でさー、もう大変だったのよねー。30分もドアに挟まれっぱなしだったし、先生に怒られるし、しかも校長が昔のワタシの担任だったのよ! ってリツコ聞いてる!?」

 ミサトが前を歩いてるリツコに問う。

 ちなみにココはネルフ本部内、初号機の起動実験が一先ず終わったのでミサトとリツコとシンジはケージからデスクに帰る途中の通路である。

 シンジとレイの進路相談が終わった後、直ぐに起動実験があったのだ。

 余談だが、進路相談でシンジは「まだ分からないです」と答え、レイは「・・・・・・大きな草原の真中に小さな家を建てて白くて大きな犬を飼いたいです。そして白い犬の毛皮は哀れな侵入者の血でいつも真っ赤なの(ポッ)」と頬を赤らめさせながら語ったと言う。

 そのお陰で零号機の起動実験の開始が30分遅れた。

 「聞いてるわよ。アレでしょ? 確か授業の途中で先生が居眠りしちゃったからコッソリ先生のカツラ外してイタズラ書きしたって言うヤツでしょ?」

 リツコは初号機の実験結果から目も離さず応える。

 「そんな事やってたんですか!?」

 シンジが呆気に取られた顔をする。

 「へっへーん。お陰で1ヶ月ずぅ〜〜〜〜っとトイレ掃除よ! しかも全校中の!」

 ミサトが胸を張って言う。

 「で、なんて書いたの? 結局」

 リツコがバインダーに色々チェックをつけながら聞く。

 完全に社交辞令だ。コレが大人の付き合いである。

 「えーとね、確か肉欲番長

 (・・・・・・・・・ああ、こんなんでも大学行けるんだ)

 シンジはチョッピシ人生に希望が見えた。


私家版・新世紀エヴァンゲリオン
Japanese Gentleman Stand Up Please!

ACT.07=B A HUMAN WORK
or
Dr.AKAGI's vividly day.


writen by:MIYASOH



 そわそわ ソワソワ



 翌日の朝、シンジはソワソワしていた。

 なぜなら、今朝はいつものミサトのイビキが聞こえて来ないのだ。

 少なくともシンジが彼女と同居を始めてから、ミサトがイビキをかかなかった事は一日もない。

 (ひ、ひょっとしたら世界が滅びる日って今日なんじゃないかな)

 チョット戦慄した。

 ガタガタと膝が笑い始める。

 自然と目に涙が浮かんでくる。

 (まだ女の子とデェトもした事ないのに)



 カラッ



 廊下の奥のミサトの部屋の扉が開く音が聞こえる。



 ヒタヒタヒタ



 足音が聞こえて来た。

 シンジの震えはいよいよ大きくなってきた。

 額に玉のような汗が吹き出る。

 だんだんと瞳孔も開いて来た。



 ガラッ



 ダイニングのドアが勢いよく開け放たれる!

 「シンちゃん、今日は仕事で旧東京に行ってくるわ。たぶん帰りは遅いから何かデバって―――ってあら?」

 バッチリとネルフの濃紺の制服を着こなしたミサトの姿があった。

 シンジは―――、

 「父さん、なんでボクをおいていっちゃったの? ボクいいこでいるよ? オモチャもちゃんとかたづけるよ?」

 幼児退行していた。















 第28放置区域(旧東京都心)



 ババババババババババババババババ



 ミサト、リツコ、狩野の3人はネルフ専用VTOLに乗っている。

 眼下にはセカンド・インパクトによって水没した東京都の姿がある。

 「新宿か・・・・・・・、懐かしいな」

 狩野が独り呟く。

 彼は東京都出身だ。今は無き故郷を見て思う事もあるのだろう。

 「なにもこんなとこでやらなくてもいいのにね」

 ミサトの目にも少し翳りがある。

 「―――で、その計画、戦自は絡んできてるの?」

 水没した東京を見据えながらリツコに尋ねる。

 「戦略自衛隊? いいえ、介入は認められずよ」

 リツコが手元の資料を見ながら答える。

 「ハァ・・・、介入してくれた方がマシな物造れただろうに」

 ミサトが溜息をつく。















 祝 JA完成披露記念会

 紅白の横断幕に大きくそう書かれている。

 JA―ジェット・アローンとは民間企業団体、日本重化学工業共同体が開発した使徒迎撃ロボットである。

 3人はそれの完成披露記念会に使徒迎撃の先達として出席しているのだ。

 本来ならこの程度の式典など作戦部の代表として日向、技術部の代表としてマヤが出席すれば事足りるのだが、ハッキリ言って日向とマヤが通常勤務から外れると異常なほど仕事が滞るのでやむなくミサトとリツコが来ているのだ。

 ちなみに狩野は2人のブレーキ役である。

 ただしこの場合のブレーキは壊れるのが前提となっているので、他の出席者に避難の時間を与える事が唯一の仕事である。

 同情は無用。元々狩野はその為に作戦部に所属しているのだ。












 コポコポコポ



 小さく音を立ててコップにビールが注がれる。

 ミサトはビールの泡を見ながら小さく溜息をついた。



 ポリポリポリ



 狩野がつまみとして用意されたピーナッツを齧りながら溜息をついた。

 視線は隣の政府高官が座っているテーブルに向いている。

 そのテーブルには伊勢海老が乗っていた。

 ローストビーフもある。

 それなのにこちらのテーブルにはピーナッツとポテトチップ。

 飲み物だって向こうはXOから越の寒梅まであると言うのにこっちはビールとオレンジジュース。

 しかも正確に言うとビールではなく発泡酒だしオレンジジュースもメッコールだ。

 ある意味VIP待遇ではある。

 とは言え、テーブルを見ながら溜息をついているのは狩野だけである。

 ミサトの視線が向いている先は別である。

 自分と狩野の間に立っている金髪の天才科学者、つまりリツコである。

 先程からずっとJAの開発責任者である時田シロウと口論をしているのである。

 ムツカシイ専門用語が頭上を飛び交っているのだ。

 溜息の一つもつきたくなるだろう。





 「ほう、そんなに言うのならば勝負してみますか?」

 壇上で時田が冷笑する。

 「望むところよ」



 シュッ



 そう言うと同時にリツコが手にしていたワイヤレスマイクを時田に投げつける。

 スッと頭半分だけ動かしマイクを回避する時田。

 「それでは私も攻撃させてもらいますよ」

 時田がそう言うと、



 バリッ



 時田の背中から4本のマシンアームが飛び出す!

 上の2本はミサイルポッド、下の2本はヒートナイフが装備されている。



 パシュパシュパシュ



 数発のミサイルがリツコに向かって撃ち出される!

 「なななななななななななななななななななに!?」

 狩野のパニくる声。

 椅子を蹴って横っ飛びに逃げるミサトの影。

 そして、





 片頬を歪ませて微笑むリツコ。





 音。





 爆風。





 熱。





 ざわ・・・・・・ざわ・・・・・・



 会場がざわついている。

 丁度会場の中央にあったネルフご一行宛てのテーブルは煙に覆われていて様子が見えない。

 咄嗟に左右に分かれて逃げた狩野とミサトが尻餅をついている。

 リツコの姿は見えない。

 「な、なんてこった・・・・・」

 呆然と狩野が呟く。

 ミサトも一瞬呆気に取られていたが直ぐ気を取り直して懐から銃を抜き、時田に照準を合わせる。

 「ちょっとアンタ! ネルフの高官にミサイル発射して只で済むと思わないでよ!!」

 ミサトが激昂する。

 「ミサト、銃を収めなさい」

 煙の中から声がする。

 「嫌よ! 親友を殺されたのよ!」

 「その親友からの頼みなんだけど」

 リツコの声だ。



 カツカツカツ



 ハイヒールの靴音も聞こえる。幽霊ではない。

 「さすが“スパイダー・アーム”の時田シロウね」

 煙の中から現われたリツコは―――、





 左右の手に特大の異形の甲虫、背中にもやはり異形の羽虫を取り付けた姿で登場した。

 「ふん、それが形而上生物学の権威、赤木リツコの造りし最凶の生物兵器“神の左手悪魔の右手”か。申し分ない、行くぞ!!」

 そう言うと時田は大きく演壇を蹴って飛び上がる!



 シュコーーーッ



 時田の背中からオレンジ色の炎が噴出し彼を重力の束縛から解放させる。



 フオオオオォォォォォォォォォォォ



 リツコの背中に取り付いている羽虫もその透き通った羽で彼女を空に浮き上がらせる。

 リツコの左手に装備されてる甲虫の鋭い角が時田を襲い、時田のヒートナイフがリツコの右手の甲虫の甲殻に受け止められる。

 しかしヒートナイフの一撃はフェイント、本命はミサイルの一斉射撃だ。



 フィオッ



 一際甲高い音を立ててリツコの姿が消える。



 バシュバシュバシュ



 目標のいなくなったミサイルが会場の天井を襲う。

 「使用者を抱えていながらそのスピード。見事な物ですな」

 そう笑いながら振り返る時田。

 背後に崩れ落ちる天井の一部が見える。

 「そっちこそ、制御が難しいと言われる個人用ロケットブースターをココまで上手に扱えるとは思ってもいなかったわ」

 時田の視線の先には空中をホバリングしているリツコ。

 「惜しかったわね、ワタシがいなければ“最強の天才”の名は貴方のものだったのに」

 そう悲しげに微笑むリツコ。

 ゆっくりと右手を時田に向け、甲虫の大顎から酸を吐き出させる。



 ジュゥッ



 間一髪マシンアームで酸を受け止める時田。

 酸を浴びたマシンアームはグズグズと溶解した。

 「これで戦力の4分の1は失った事になるわ。降伏しなさい」

 リツコが諭すように語り掛ける。

 「ふん。戦力の4分の1は失った? まさか赤木リツコともあろう者がスパイダー・アームが4本きりと思うとは!」



 ギュルッギュルッ



 時田の背中から更に4本のマシンアームが飛び出す!

 「ハッハッーーー!!」

 鬨の声を上げて特攻する“スパイダー・アーム”時田。

 迎え撃つは赤木“神の左手悪魔の右手”リツコ。










 「なんなんだ・・・・・・・・・」

 頭上で繰り広げられる激しい空中戦を呆然と見つめながら呟く狩野。

 「もーワタシは知らん! 飲むわよ!!」

 そう言ってビール瓶を手にするミサト。

 ラッパ飲みである。

 実に雄々しい。

 「・・・・・・・オレも飲もうかな」

 狩野も折れた。

 羨ましい。











 十数合の剣戟の末―――、

 「くぅっ、個人戦では同等か・・・・・」

 時田が消耗した様子で言う。

 「ふふん、甘いわね時田シロウ!」

 そう言うリツコも既にボロボロである。

 いや、リツコの口は動いていない。

 しかし声は間違いなくリツコの物である。

 その発信源は―――、

 「そこだっ!!」



 ポシュポシュポシュッ



 振り返って時田がミサイルを発射し、最初にリツコ達が座っていたテーブルを襲う!





 もうもうと爆煙が吹き上がり、その中からプロポの様な物を持ったリツコが現われる。

 つまり、リツコが2人いるのだ。

 「ホーホッホッホ。まさかこのワタシがアナタの様な2流科学者相手にするとお思い? 今までアナタが戦ってきたのはワタシの影、スーパーセクシーアンドロイド・ダミーリツコ1号よ!

 「い、いつの間に・・・」

 狩野が呟く。

 「ふふん、こんな事もあろうかと思って昨日の夜からこのテーブルの下に隠れていたのよ!!

 昨日からかい。

 「ほほう、まさかそっちも同じ考えとは・・・」

 演壇の下から時田の声が響き、同じように本物が現われる。

 「ちっ、昨日の夜なんか舞台の上でガサゴソやってる音が聞こえると思ったら! こうなったら・・・」

 「団体戦だ!! 出ませい、ダミーシロウ軍団!!」

 時田が腕時計型のコントローラーに向かってそう叫ぶと同時に舞台裏手からワラワラと現われるシロウ軍団(総勢11体)。

 「こっちこそ! ダミーリツコ達、出番よ!!」

 リツコがプロポに向かって叫ぶと各テーブルの下から這い出てくるリツコ軍団(総勢9体)。

 ダミーの数は時田12に対してリツコ10、数字の上ではリツコが不利だ。

 ほら、やはりダミーシロウ2体がリツコに向かって来る。



 タンッ



 右側から来るダミーシロウの額に銃弾が食い込み、もんどりうって倒れる。

 「貸しにしとくからね!」

 ミサトが銃を構えていた。

 「フフッ、ありがとミサト。・・・・・・・・・・狩野くん! もう一体は頼んだわよ!」

 そう言ってスーツの内ポケットから愛用の吹き矢を取り出すリツコ。

 「え?」

 状況がつかめてない狩野。



 ぷすり



 狩野の眉間に刺さる吹き矢。





 みしり



 狩野の体から異様な音が聞こえる。



 プチプチプチプチプチプチ



 ネルフ高官専用の黒い詰襟が引き裂かれる音。



 ブチッ



 狩野のネクタイが弾け飛ぶ。



 カシャン



 サングラスが床に落ちる。





 そこにいたのは―――、

 「グロオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」

 身長2m程の人狼であった。

 「こんな事もあろうかと思って研究中の人狼錠(ワーウルフピル)持ってきて正解だったわ!」

 人狼錠―――、脳の一番奥にあるもっとも原始的な本能を司る脳幹(通称ワニの脳)を活性化させ、さらに自分は狼だという強烈な暗示をかけるドラッグである。

 これを投薬する事によって戦闘力はおよそ3倍になると言う。

 ただしまだ研究中なのでどのような副作用があるか不明な為お子様の手に届かない所に保管して下さい。

 そんな薬を投与された狩野は3倍になった戦闘力で会場内を所狭しと疾走し、それによって出来た隙をミサトが的確に射撃して戦局を進めて行った。















 小一時間後、ミサトは残弾を使い果たし額から血を流しながらも生きていた。

 狩野は人狼錠の効果が切れ、服もビリビリに破れた姿で気絶していた。

 ダミーシロウとダミーリツコも殆どが互いに尽き果て、大破したり行動不能に陥っていた。

 唯一の例外は―――、

 「創造主(マスター)! 争いは不毛です!! なぜ愛を持って互いに接する事が出来ないのですか!?」

 「そうです! ワタシはこの方と出会って愛の大切さを学びました。マスター達も理解してください!!」

 ダミーリツコ4号とダミーシロウ7号が愛に目覚めたのだ。

 当の本人達は呆気に取られている。

 つまり無反応だ。

 しばらくじっとオリジナル達を見つめていた2体だが―――、

 「ああ! もうこんな生き方耐えられない! 一緒に逃げましょう!」

 目を潤ませてダミーシロウ7号を見つめるダミーリツコ4号。

 「・・・・・・・・・辛い人生になるよ」

 そっと肩を抱くダミーシロウ7号。

 「あなたと一緒なら地獄へでも・・・・・」

 「―――ありがとう」

 ひっしと抱き合う4号と7号。



 シュゴーーーー



 抱き合ったままジェットエンジンを点火させ宙へと浮かぶ2体。

 「マスター! お体に気をつけて!」

 「落ち着ける場所に到着したら手紙を書きます! 絶対、絶対幸せになりますから!!」

 そう言い残して戦闘の余波で開いた天井の大穴へと姿を消す2体。

 呆然とそれを見送るリツコと時田。

 「・・・・・・・ふふふ」

 「ほほほ・・・・・」

 何故か笑いがこみ上げて来る2人。

 「ふふふふふぁっーーーはっはっはっはーーーー!!!」

 「ほぉーーーーっほっほっほっほっほっほっほーーーーー!!!!!」

 一頻り哄笑し続ける2人。





 沈黙。





 「「納得出来るかぁっ!!!」」

 「やはり我々にはこんなチマチマした地味な勝負など似合わん!!」

 「アナタのJAとワタシのEVA―――」

 「「どちらが優れているか、今一度勝負!!」」

 なら最初からそうしてくれ。















 「いい? シンジ君。遠慮はいらないからあのガラクタ人形をけちょんけちょんの木端微塵にしてやりなさい!」

 専用の指揮車の中でリツコがシンジに説明をしている。

 ちなみにミサトと狩野は養護室のベッドで眠っている。

 「あ、あの・・・・・・・。本当に良いんですか? どうせなら協力して使徒と戦った方が安全だと思うんですけど・・・・・・・・・」

 シンジがおずおずと尋ねる。

 「いーのっ!! あんな3流科学者の作った超Z級ロボットなんて絶〜〜〜〜〜ッ対ッ役に立たないんだからココで潰しておかないと! それにもし共闘なんて事になったらネルフの予算が削られて大変な事になるのよ!!」

 悪鬼の様な形相でシンジに詰め寄るリツコ。

 「は、はあ・・・・・」

 気乗りしない返事をするシンジ。

 「わかったわね!!!」

 シンジの頭を持って揺さぶりながら怒鳴るリツコ。



 ガグンガグン



 前後に目一杯揺さぶられるシンジの頭。

 「わ、分かりました! 不肖碇シンジ、JAなる敵ロボットを全力でけちょんけちょんに殲滅するでありますです!!」

 混乱のあまり口調がケンスケになってるシンジ。

 そんなこんなでEVA初号機発進である。










 「くっくっく、くぁーっはっはっはっはっはーーーー!!!」

 怪鳥のような笑い声を上げているのはご存知時田シロウである。

 ちなみにココはJAの格納庫である。

 「やっと! やっとあの赤木リツコを跪かせるチャンスが来たぁーーー!!!」

 そう言ってJAの足を撫でる。

 「この『絶対無敵格闘王プログラム』さえあればお前は地球最大最強の存在へと昇華する!」

 懐から出したMOディスクを舐めながらウットリとする時田。

 仕事じゃなければこんなヤツに近付きたくない。

 「さあ行け! JA!! あのポンコツ人形をへなへなのプーにしてやるのだ!!!」

 そしてまたケージに響く時田の哄笑。

 ・・・・・・・・・早く帰りたいなぁ。















 場所は変わって記念会場のすぐ隣にある国立第3試験場。

 早い話がだだっ広い荒野である。

 此方には紫色の悪魔ことEVA初号機。

 彼方にはのっぺりとした体を赤と白のツートンカラーに染めたJA。

 「よしJA! 先ずは近付いてジャブで牽制だ!」

 時田が指示を出す。



 シュッシュッ



 その巨体からは信じられないスピードで近付くJA。





 ヒュンッ



 JAのジャブが初号機を襲う。





 慌ててバックステップでかわす初号機。





 ズオォッ!



 今度は回し蹴りを放つJA。





 のけぞってなんとかやり過ごす初号機。

 「リツコさん! 強いです! このロボットメチャクチャ強いですよ!!」

 指揮車内にシンジの声が響く。

 「落ち着いてシンジ君! よく見れば平気よ!」

 と、言った所で戦闘の指揮なんてやった事のないリツコ。

 若干焦りの色が見える。

 (まさかこんなに鋭い攻撃が出来るなんて・・・・・)

 無意識に爪を噛むリツコ。










 グオォッ!



 JAの肘が初号機に向かって来る。





 避けられない。





 グッシャァー!!



 何かが潰れる音。





 (ボ、ボクは負けたのか・・・・・・・・・? 痛みがない? アレ?)





 JAの肘鉄を真っ向から顔面に受けたはずの初号機に損傷はなかった。





 そう、JAの腕が大破していたのだ。















 それから後はもう惨憺たる物であった。

 JAがどんなに鋭い攻撃を放とうが結局EVAの1万2千枚の装甲を突き破れないのだ。

 右肘に続いて前蹴りを放った左足、その次はボディブローを叩き込もうとした左手、そして最後の足掻きとして足払いをしようとした右足。

 その全てがEVAの装甲に対して無力であった。

 無力どころか逆に攻撃すればする程自らにダメージを与える事になるのだ。

 詰まる所JAは両手両足を大破して戦闘不能。

 初号機のある意味不戦勝である。










 「今に見てろ! 今回はEVAの装甲に負けたのであって私の『絶対無敵格闘王プログラム』が負けたのではないっ!! いつの日かJAを強化して再戦を挑むからな!!」

 時田シロウはそう言い残して去って行った。

 「虚しい・・・・・・・・・。勝利とはいつも虚しいわ・・・・・・」

 時田を見送るリツコがそっと呟いた。

 風が、東京の名残であるビル風がそっと2人の間を通り過ぎていった。















 余談だが、狩野は人狼錠の副作用で翌々日スゲェ筋肉痛に襲われた。

 さらにちょっぴし腕毛が濃くなった。





 そんなわけでミヤソーです。

 えーと、こんなんになっちゃいました。だってサイバーパンク好きなんですよ。

 ひょっとしたら時田再登場するかも知れませんね。

 書いててスゲェ楽しかったです今回。



 さあ! いよいよ次回はアスカが登場します!

 どーなるのでしょうねぇ〜(ニタリ)。

 楽しみです。

 それでは!



 今回のメッセージは碇シンジ君からです。

 「結局今回ボクなんの為に来たんですか?」

 不思議だねぇ。



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