ガヒュン



 原初の闇を切り裂いて進む一条の光。





 迎え撃つは八角形をした絶対不可侵の壁。



 グィン



 拮抗する力と力。





 崩壊する秩序。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



 正八面体をした使徒が炎をあげて燃えている。





 闇を切り裂く一条の光によって貫かれた使徒が燃えている。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



 炎をあげながらゆっくりと崩れ落ちる使徒。










 シンジの長い、長い夏の1日がようやく終わろうとしていた。


私家版・新世紀エヴァンゲリオン
Japanese Gentleman Stand Up Please!

ACT.06=B Rei U
or
Abnormal operation of “Big breasta”


writen by:MIYASOH



 レイがシンジの病室から去った直後。

 (寝てたらって言われても・・・・・・・・・そんな事出来るわけないじゃないか・・・・・・・・・・)

 ベッドの上でうずくまり大きく溜息を吐くシンジ。

 (結局ボクも行かなきゃしょうがないじゃないか・・・・・・・)















 ボクハナンノタメニタタカウノダロウ















「「今夜午後11時30分より明日未明にかけて全国で大規模な停電があります。皆様の御協力をよろしくお願い致します。繰り返します・・・・・・・・」」

 街中のテレビ・ラジオ・街頭スピーカーからは朝からずっとこのアナウンスが流れていた。

 「まったく、何度も言わなくても分かってるよ」

 ケンスケが苛立たしげにデジカメのチューナーを切る。

 ここは第2中学の屋上、ケンスケはトウジと共にコッソリとEVAを見学しに来ていたのだ。

 「ケンスケ、おいケンスケ!ホンマにこの時間なんやろな。いい加減、避難せなあかん時間になってもーたで」

 そう言うトウジも帰ろうとする素振りを見せない。

 「間違いないって、パパのデータこっそり見たんだから」



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



 学校の近くの山の斜面がゆっくりと割れる。



 ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン



 オレンジ色の機体を茜色に染めながらせり上がってくる零号機。

 手にはSSTO(スペースシャトル)の底面を改造して作った巨大な盾を持っている。

 初号機の姿はない。

 「スゴイ!!本物のエヴァンゲリオンだ!!」

 感激して少し涙目になってるケンスケ。

 「なんや、一体だけか。アレにセンセが乗っとるんか?」

 「チッチッチ、分かってないなトウジ。アレは零号機だから乗ってるのは綾波さ」

 ケンスケの説明を聞いたトウジの表情が変わる。

 「ん?じゃあセンセはどこにいるんや?」

 「いくらなんでもそこまでは分からないよ。たぶん・・・・・別行動なのかな・・・・・・う〜ん」

 なにやら思考の世界に没頭し始めるケンスケ。

 (センセ、どうしたんや・・・・・・・・まさか、まさか・・・・・・・)

 顔を青ざめさせるトウジ。

 しかし、一瞬後に頭を振ってその考えを拭い去る。

 (あかん!なにを考えとんのやワッシは!センセは、センセはそんな男やない。親友のワッシが信じんでどうすんのや!!)

 「綾波ーーーー!!!!センセが上手く他んとこで戦えるよう頑張れよーーー!!!!」

 屋上からトウジの声援が響いた。















 「目標のシールド、第17装甲板を突破!!」

 青葉の声に緊張の色が混じる。

 「本部到達まであと3時間55分!」

 日向も顔を強張らせている。」

 「四国および九州エリアの通電完了!」

 本部モニターから西日本エリアの技術局員が報告する。

 「各冷却システムは試運転に入ってください!!」

 マヤが各エリアの責任者に告げる。

 直上決戦まであと、3時間55分。

 同時にそれは通算4度目の審判の時までの猶予でもある。















 午前0時02分、ネルフ本部第一発令所。



 キュドン



 モニターに使徒の加粒子砲が初号機のバルーンダミーを貫く映像が映し出されている。

 一瞬後に爆発四散するバルーンダミー。

 しかし、すぐ次のバルーンダミーが反対方向に現われる。

 それと同時に―――、



 キュン



 使徒の死角から戦略自衛隊の自走臼砲が火を吹く。



 ギィン



 しかし強力なATフィールドが展開され陽電子ビームを弾き、反射したビームがバルーンダミーを襲う。

 そして一瞬後、自走臼砲は前回と同じ運命を辿る。

 「レイ、そろそろ準備いい?」

 本部でモニターを睨んでいたミサトがマイク越しにレイに尋ねる。

 「・・・・・・・・問題ありません」

 レイの声はいつもと同じく冷静だ。

 「シンジ君は?」

 「ボクも・・・・・・・・大丈夫です」

 スピーカーからシンジの緊張した声が流れる。














 「いい?これから今回の作戦―――ヤシマ作戦の概要を説明するわ」

 午後23時20分、ネルフ本部横仮設基地。

 ミサトがシンジに作戦の説明をしている。

 「使徒のシールドは午前0時06分にジオフロントの天蓋を突破してここの丁度真上に出現するわ。零号機が囮になって使徒のシールド表面のATフィールドを抑えるからシンジ君はそこを狙って狙撃して。MAGIの計算上、コアは正八面体状の中心にあるはずだから伸ばしたドリルと直線で結ばれてるわ」

 「・・・・・・・・・・・はい。・・・・・・・・あの、零号機に危険は・・・・・・・」

 「大丈夫よ。零号機に持たせてある盾―――コレは急造仕様だけど元々SSTOの底部で超電磁コーティングされているから使徒の砲撃にも17秒は耐えるわ。そして―――」

 振り返って待機中の初号機を指差す。

 「今初号機の右腕に装備されているのがEVA専用陽電子ライフル、使徒の加粒子砲が届かないような超長距離からの狙撃には出力が足りなくて無理だけどほぼゼロ距離であるここからならATフィールドを突き破る可能性は充分あるわ。一先ずシンジ君の役目はコレだけよ。他の事は考えないで良いから集中してね」

 「陽電子は地球の自転・磁場・重力の影響を受けて直進しません。でも微調整はMAGIがやってくれるからテキスト通り最後に照準マークがそろったら撃てば平気だから」

 リツコも技術面の説明をする。

 「・・・・・・・分かりました」

 表情の硬いシンジ。

 「さあ!そろそろ時間だから準備してね!」

 「はい!」

 (17秒か・・・・・・・ほんの何秒か遅れたらそれだけ綾波が危ない目に会うのか・・・・・・・狩野さんとの約束、守らなきゃな)

 シンジは強張った顔のまま待機中の初号機へと向かう。










 同時刻、二子山仮設基地。

 「いいかレイ、先ず初号機のバルーンダミーを設置させる。その後、自走臼砲に複数同時攻撃をさせて一瞬でいいから膠着状態を作り出す。ここまでは俺らの仕事だからお前は動かなくていい。そして膠着状態になったら今零号機に装備させている盾に身を隠しながら専用ポジトロンライフルで狙撃、ほぼ同時に地下の初号機も狙撃を開始する。上手く行けば初号機の射撃で使徒のコアを貫けるはずだ」

 狩野がレイに作戦内容の説明をしている。

 「・・・・・・・上手く行かなかったら?」

 「その時は、ココから200m東南に用意されているポジトロン・スナイパーライフルで狙撃だ。コレは今装備しているライフルの試作型で一億八千万キロワットの大出力にも耐えられる仕様になっている。この距離からの狙撃でも充分ATフィールドを突破できる。まだ零号機はフィードバックの微調整が終わってないから接近戦や精密作業は無理だが、計算上MAGIで調整可能な範囲だから問題はないはずだ」

 「・・・・・・・・もし、盾が持たなかったら?」

 「・・・・・・・・・・大丈夫だ。お前を1人にはさせないさ」

 「ありがとう」

 「ま、事後処理があるだろうからチョット遅刻するかも知れんがな」
















 キキュュンン



 使徒の南北に配置された自走臼砲が同時攻撃をする。



 ギィン



 またもATフィールドに弾かれる陽電子ビーム。






 次の瞬間―――、



 タキュン



 二子山山頂の零号機から放たれる一条の光。



 ギィン



 無情にも陽電子の浸入を許さない絶対不可侵の壁。

 しかし零号機は怯まず照射を続ける。










 ほぼ同時刻、ネルフ本部横仮設基地。

 「見えた!」

 使徒のシールドがジオフロントの天蓋を突き破って登場した。

 「シンジ君!まだよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今よ、撃って!!」

 ミサトの指示が飛ぶ。



 タキュン



 初号機の右腕に装備されたポジトロンライフルが光を放つ。





 ギッギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ



 反射させる為の角度がない為、火花を散らしながら拮抗する力と力。

 「届け!届け!!届けぇ!!!



 ギィン



 やはり届かない人類の光。














 コンコン



 ノックされる病室のドア。

 「シンジー、入るぞー」

 狩野の声だ。



 ガチャリ



 「よ。コレ今回のお見舞いな。・・・・・・・・って、どうした深刻な顔して」

 シンジはまだベッドの上でうつむいたままだ。

 「はあ・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの」

 「ん?」

 ドッカと椅子に腰を下ろしながら聞き返す狩野。

 「狩野さんは平気なんですか。綾波が危険な目にあっても・・・・・」

 「面白い事を聞くな、お前。・・・・・・・平気なはずねーよ。血こそ繋がっていないけどアイツはオレの娘だ。出来る事なら戦わせたくないよ」

 「綾波は、みんなを守りたいからEVAに乗るって言いました」

 「・・・・・・・・・知ってるよ。アイツは優しい子だからな」

 窓から差し込む西日で2人の顔は見えない。

 「・・・・・・・・・それで、それを聞いて、ボクは、ボクはなんの為に戦うのかって考えたんですけど・・・・・・・・・・・・・・・・分からなくて、分からなくて・・・・・・」

 「・・・・・・・・そうか」



 ギシリ



 狩野の座っている椅子が軋む。

 「そうだな・・・・・・・・・。あの、お前がさっき狙撃された時な。咄嗟に兵装ビルを上げさせて一瞬だけど使徒の光線を遮らせたんだよ。すーぐ蒸発しちまったから効果があったのはコンマ数秒なんだけどな」

 「・・・・・・・・・・・」

 「でな、恩に着せるわけじゃないって言うか、恩義感じなきゃいけないのは俺たちなんだけど。あー、つまり今回はそのコンマ数秒分で良いから借りを返してくれないか」

 「・・・・・・・・・使徒を倒せって事ですか?」

 「レイの負担を軽くしてくれって事さ」
















 初号機の陽電子と使徒のATフィールドが拮抗している瞬間。

 「レイ!今だ!移動を始めろ!!」

 仮設基地から狩野の指示が飛ぶ。



 ズザザザザザザザザザザザ



 盾とポジトロンライフルを捨てて二子山の斜面を滑り降りる零号機。










 ほぼ同時刻、ネルフ本部横仮設基地。

 「届け!届け!!届けぇ!!!

 シンジの声がジオフロントに響いていた。










 ジャキッ



 ポジトロン・スナイパーライフルを構える零号機。

 そして―――、










 ガヒュン



 原初の闇を切り裂いて進む一条の光。





 迎え撃つは八角形をした絶対不可侵の壁。



 グィン



 拮抗する力と力。





 崩壊する秩序。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



 正八面体をした使徒が炎をあげて燃えている。





 闇を切り裂く一条の光によって貫かれた使徒が燃えている。



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



 炎をあげながらゆっくりと崩れ落ちる使徒。










 シンジの長い、長い夏の1日がようやく終わろうとしていた。





 まいど、作者のミヤソーです。

 今回は全編シリアスでしたねー。ビックリ。

 私家版・ヤシマ作戦如何でしたでしょうか?
 なるべく他の人の作品と被らないように気をつけたつもりです。

 えーと、次回はいよいよJAウィズ時田博士が登場しますね。
 マッドっぷりではリツコと同等にさせようと思っとります。

 それではまた次回お会いしましょう。

 今回のメッセージは洞木ヒカリ嬢再登場です。

 「出番ないじゃないのよー!!!」

 ・・・・・・・・・!



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