ギュルンギュルンギュルンギュルンギュルン


 正八面体をした使徒が下の頂点からドリルを伸ばしてジオフロントを侵攻し始めた。

 EVA初号機を強力な加粒子砲で沈黙させ、悠悠自適にドリルを廻している。

 心なしか少し楽しげに見える。

 ドリルがネルフ本部に突き刺さるまであと12時間。

 同時にそれは人類に残された最後の時間とも言える。















 「ふーむ、なるほどねー」ミサトがモニターを眺めながら腕組をしている。

 モニターには使徒の加粒子砲により爆発四散する初号機の1分の1バルーンダミー、攻撃を試みるも強力なATフィールドにより跳ね返される陽電子ビーム、使徒の反撃により溶解する自走臼砲の姿が映っていた。

 「どーするよ」狩野が同じく腕組みをしたままミサトに尋ねる。

 「これまで採取したデータによりますと目標は一定距離内の外敵を自動排除するものと推測されます」日向が代わって説明する。

 「エリア浸入と同時に加粒子砲で100%狙い撃ち、ATフィールド中和可能なEVAによる近接戦闘は無理ね・・・・・。敵のATフィールドは?」ミサトがうめく様に尋ねる。

 「健在です。相転移空間を肉眼で確認できるほど強力なものが展開されています」冷静に説明を続ける日向。

 「攻守ともにほぼパーペキ。まさに空中要塞ね。で?問題のシールドは?」日向に尋ねる。

 「直径17.5mの巨大シールドがジオフロント内ネルフ本部に向かい穿孔中です。現在第2装甲板まで到達しています」バインダーを見ながら説明する日向。



 パタン



 バインダーを閉じる。

 「あと、10時間ほどでネルフ本部に到達する模様です。白旗でも揚げますか?」

 「そうだなー。確かポジなんとかライフルってスゲェ銃があっただろ?あれで遠くから狙撃ってわけにはいかないのか?」

 「無理ね。現在のポジトロンライフルじゃあ使徒のATフィールドを突破できるほどの出力は期待できないわ」ミサトが狩野の提案を一蹴する。

 「それに遠距離からの狙撃の場合、地理的に可能な場所は二子山山頂しかないわ。一応マギの予想した射程距離外ではあるけど、それもどこまで信用できるか分からないわ」リツコが補足する。

 「じゃあ、本当にどーにもならないじゃないか。・・・・・・・・よし!みんなでジャマイカに高飛びして逃げるぞ!!

 諦めるな。

 「ま、それも良いけど、チョーッチ良いアイデァがあるのよねー」ミサトが二ヒヒと笑った。

 最高の悪戯を思いついた悪ガキの様な笑みだ。

 リツコと狩野はチョット嫌な予感がした。


私家版・新世紀エヴァンゲリオン
Japanese Gentleman Stand Up Please!

ACT.06=A
決戦、第3新東京市
あるいは
葛城ミサトの異常な作戦


writen by:MIYASOH



 「・・・・・・・・・・・・なるほど」

 ここはネルフ総司令執務室、別名『魔窟』である。

 この場所に無断で忍び込んだ者は司令直々にキョーフの折檻が与えられる所だ。

 今までに数十名のスパイや暗殺者が忍び込んだが、ある者は帰らぬ存在となり、またある者は発狂し、そしてある者は新たな生きがいを見つけて第2の人生を満喫していると言う。

 ゲンドウがどんな裁きを下しているのかは不明である。

 昔、ナレーター13号が真実を突き止めようと取材を敢行した事があったが、現在は行方不明である。

 とある催し物の会場で珍妙な衣装を着て写真撮影をされていたと言う目撃情報もあるが。

 ともあれ、真相は闇の中である。

 閑話休題。

 ミサトはゲンドウに作戦の認可を受けに来ているのだ。

 「目標は加粒子砲と穿孔用のシールドを同時に展開できない模様です。そこの隙を突けば充分に勝算はあります」

 「勝算は16.8%か・・・・・・・・・」ゲンドウが淡々と言う。

 「最も高い数字です」ミサトが自信にあふれた口調で言う。

 「・・・・・・・・・・・分かった。許可しよう」















 「うちのポジトロンライフルじゃ使徒のATフィールドを撃ち破るだけの出力ないし、無理矢理高エネルギー集めても耐え切れないわよ。わかってるでしょ?」リツコがミサトに釘を刺す。

 ネルフ本部内第7ケイジだ。片側の壁には巨大なEVA専用陽電子砲が埋め込まれてる。

 反対側を見やると初号機の換装作業が行なわれている。

 第3装甲板までが溶解し、痛々しい姿となっている。

 シンジも同様だ。現在、緊急処置室で治療を受けている。

 「ふふん。決まってるわ。借りるのよ」ミサトが胸を反らして言う。

 ただでさえ巨大な胸がプルンと揺れる。

 「借りるって、まさか―――」呆れ顔のリツコ。

 「戦自研のプロトタイプに決まってるじゃない」そう言ってニンマリと笑うミサト。
















 戦略自衛隊つくば技術研究本部。

 そう、あの明○電気で有名なつくばである。

 かと言って借りるのが『パチモク』とか『サバオ』ではないので安心して頂きたい。

 個人的には是非借りて欲しいのだが、対使徒戦に役立つわけではないので今回は見送られたのだ。

 無念。

 狩野が徴発礼状を所長に突きつけている。

 「――――以上の理由により、この自走式陽電子砲は本日15時より特務機関ネルフが徴発します。異論があるなら文書で来週までにネルフ本部まで届けて下さい・・・・・・・まあ、今持っていくんだけどな」ニヤリと笑って言う狩野。

 「じゃあ、レイ。やっちまっていいぞ」襟元のマイクに向かって告げる狩野。



 ガゴン



 バキバキバキバキバキ



 屋根を破って零号機登場。

 呆然とする職員たちに軽く会釈をするとポジトロンライフルを鷲掴みにする。

 (・・・・・・・・・今、ワタシ目立ってるわ。・・・・・・・・・・ファンサービスをしなくてわ)

 ゆっくりと手を振る零号機。

 同じく手を振り返す所長。



 パタリ



 泡を吹いて倒れた。















 「しかしATフィールドをも貫くエネルギー産出量は最高1億8千万キロワット。それだけのエネルギーをどこから集めてくるんですか?」日向がミサトに尋ねる。

 もっともな疑問である。

 「どこからだと思う?」

 「・・・・・・・・・えーと、零号機が巨大な自転車を漕いでそれで発電する、とか・・・・・」

 「・・・・・・・・・日向くん、そんな中途半端なボケでお客さんが満足すると思ってるの!?

 「お客さん?」

 「更に言えば芸人が恥ずかしがるな!!どんなボケでも自信を持って言うのよ!!」

 ダメ出しされてるし。

 結局、まだ作戦部はヒマなのだ。















 (・・・・・・・・・父さん・・・・・・・・・分からないよ・・・・・・・・なんで、なんで・・・・・・・ボクを・・・・・・・・)

 ネルフ本部内の緊急処置室での治療を終えたシンジは一般病室で眠っていた。

 きつく閉じられた目蓋から一筋の涙がこぼれる。

 (父さん・・・・・・)

 シンジがゆっくりと目を覚ます。

 最初に目に飛び込んできたのは、先日とほぼ同じ天井。

 辺りを見回すと食事のカーゴを運んできていたレイの姿が目に入った。

 「綾波・・・・・?」

 「・・・・・・・・・・食事、眼が覚めたら食べるようにって」

 シンジはベッドから半身だけ起こし、頭を振る。

 「何も食べたくないよ・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・せめて肉だけでも」

 「いや・・・・・・いいよ」

 「・・・・・・・・・・・残すと勿体ないわ。それにワタシ肉嫌いだから」

 「・・・・・・・・・・・つまり、残りは綾波が食べるって事?」

 こくりとうなずくレイ。

 「じゃあ、先に食べて良いよ」

 「・・・・・・・・・・・ありがたいわ」

 言うが早いが早速食べ始めるレイ。

 食った。

 食った。

 食った。

 「・・・・・・・・・ほうほう、わふれてひたわ」口中に頬張りながらいきなり喋りだすレイ。

 「飲み込み終わってからでいいよ、話すのは」



 ゴックン



 「・・・・・・・・・・・60分後・・・・・いえ、もう45分後ね。45分後には出発するわ」

 シンジにとって死刑宣告にも等しい一言。

 「―――――え?」

 「明日午前零時から発動される作戦のスケジュール・・・・・・・・・読む?」

 そう言ってスカートのポケットからメモ帳を取り出すレイ。

 「碇・綾波の両パイロットは本日17時30分ケイジに集合。18時00分エヴァンゲリオン初号機および零号機起動、18時05分出動。エヴァンゲリオン零号機、同30分二子山仮説基地に到着。エヴァンゲリオン初号機、同30分にジオフロント内ネルフ本部横仮設基地に到着。以降は別命あるまで待機。明朝日付変更と同時に作戦行動開始」

 淡々とメモを読むレイ。

 「―――また、またアレに乗らなきゃいけないのか・・・・・・」

 溜息をつき体を畏縮させるシンジ。

 「こんな目にあったばかりなのに・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・嫌なの?」

 「嫌に決まってるだろ!」

 「・・・・・・・・・・・じゃ、寝てたら?」

 当然の様に言うレイ。

 「パーソナルデータの書き換えなんてすぐ済むもの。初号機にはワタシが乗るわ」

 「え?・・・・・・・・・いや、でも・・・・・」

 「・・・・・・・・・・じゃあ、40分後に集合だから。・・・・・・・・ごちそうさま」

 そう言って病室を出て行くレイ。



 パタン



 ドアを閉める乾いた音がやけに響いた。





 ちょっと間を空けてしまいましたね。作者のミヤソーです。

 今回から行間を大きく取るようにしました。少し読みやすくなったでしょうか?

 しかし、あれですね。毎回悩むのが戦闘シーン。原則としてテレビ版と変える事を心がけているのですが、どうも「ひょっとしてこの方法、他の作品であったんじゃなかろーか?」と思ってしまいます。

 完全オリジナルなんて無理とは思うんですがそれでもやっぱり気になります。

 神経質なのかなぁ。



 さて、次回はいよいよその戦闘シーンです。

 たぶん短くなると思いますが待ってて下さいね。

 今回のメッセージは日向マコト氏からです。

 少しだけど出番があったーーー!!!」

 良かったね。



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